【異能バトルは日常系のなかで感想】TRIGGERの凄さがよくわかる作品

異能バトルは日常系のなかで
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『異能バトルは日常系のなかで』について解説していく。

『異能バトルは日常系のなかで』は、望公太のライトノベル(GA文庫)が原作だ。これが2014年秋クールにTVアニメで放送される。アニメ制作はTRIGGERが担当した。

目次

『異能バトルは日常系のなかで』の評価

※ネタバレ注意!

作画87点
世界観・設定83点
ストーリー85点
演出87点
キャラ80点
音楽80点
※個人的な評価です

作画

アニメ制作会社がTRIGGERということで、作画のレベルはかなり高い。視聴当初は「このいかにもなラノベ作品をどう映像化するのだろう?」と思っていたけれど、ちゃんとTRIGGERらしい作画になっていた。しかも本作にはTRIGGERを代表するアニメーター・今石洋介が参加していないから、なおさらすごい。TRIGGER所属のアニメーターの技術力の高さが伺える。

世界観・設定

『異能バトルは日常系のなかで』のおもしろさは、TRIGGERのみによって、もたらされているわけではない。ちゃんと、原作の世界観もおもしろかった。そしてなんだかんだで『異能バトルは日常系のなかで』のややメタ的で熱い世界観が、TRIGGERの作風にマッチしている。『異能バトルは日常系の中で』をTRIGGERでアニメ化させた企画担当者が素晴らしい。

ストーリー

ググってみると、どうやら原作1巻から7巻の内容から摘んでいく形でストーリーが構築されていたらしい。たしかに「ちょっと飛んでるなぁ」と思う部分もあったのだけれど、シナリオの順番を巧みに入れ替えることで、ギリギリのラインでストーリーを成立させることに成功している。特に、鳩子がブチ切れたあたりのシナリオは秀逸だった。これはTRIGGER作品特有の「矛盾したストーリー」によって生まれた技術なのかもしれない。

演出

第1話を見たときは「TRIGGERにしては普通だな」と思ったものだが、エピソードが進むにつれてTRIGGERらしさが爆発。特に第11話『存在<キューピッドエラー>』は超絶TRIGGER。また、止め絵がほとんどないのも好印象で、どのカットでも何かしらの演出で魅せてくれるので、作画オタクにとっては最高の視聴体験だったと思う。

キャラ

一見すると「典型的なラノベキャラ」だが、声優の個性をフルに活用し、それにTRIGGERの映像表現がミックスされているので、躍動感あるキャラになっている。個人的には灯代が好み。

音楽

OP『OVERlAPPER』は作中のヒロインによるグループ・Qverktett:||が歌を担当。Aメロのピアノサウンドが印象的。それにTRIGGERの映像がジワジワくる。特にサビ途中の灯代の連続カットが、その一枚絵があまりにもTRIGGERっぽくて印象的だった。

ED『You Gotta Love Me!』も非常に爽やかな曲でありながら、映像も飽きない。こちらもやっぱり灯代と安藤寿来の一枚絵っとが印象に残っている。

『異能バトルは日常系のなかで』の感想

※ネタバレ注意!

TRIGGERっぽくないけど、ちゃんとTRIGGERしてるアニメ

『異能バトルは日常系のなかで』というタイトルを読んでも、そしてティザービジュアルを見ても、どう見ても普通のラノベ原作アニメにしか見えない。しかし、この作品はTRIGGERがアニメ制作を担当しているのである。初めてこの作品を知った時は「え、これTRIGGERなの?」と思ったぐらいで、パッと見だと「最もTRIGGERっぽくない作品」と言っても過言ではないかもしれない。

第1話を見ていても、たしかに作画のクオリティが高そうなことはわかったが、だからと言ってTRIGGERらしい漫画的な表現が目白押しというわけではなかった。「あぁ、これはTRIGGERの技術力を用いた普通の高品質アニメなんだな」と思ったのだが、エピソードが進むにつれて、段々とTRIGGERっぽい画面構成及び動きになってくる。どんどん、キャラクターがデフォルメ化されていく。

また『異能バトルは日常系のなかで』のメタ的な世界観やストーリーも、TRIGGERっぽかったと思う。本作における精霊戦争や”読者”を名乗る相模静夢の存在がメタ的な世界観を作り出していたし、”異能の存在意義”についての解釈が「カッコいいから!」というのも実にTRIGGERらしいと思う。

こうして振り返ってみると『異能バトルは日常系のなかで』がTRIGGERによって制作されたのは、半ば必然だったのかもしれない。

ストーリー構成の完成度の高さがバグってる

『異能バトルは日常系のなかで』は、”知名度の低さ”と”アニメーション作品としてのクオリティの高さ”から、紛れもなく隠れた名作だと思う。んで『異能バトルは日常系の中で』のすごいところは色々あるんだけれど、個人的に、一番ヤバいと思ったのがストーリー構成の完成度の高さだ。

まず大前提として『異能バトルは日常系のなかで』のシナリオは、TRIGGERの映像表現があるからできる芸当である。正直言って、単体としてのシナリオは微妙なのだけれど、TRIGGERが作り出す映像の勢いがあるから、緻密さではなく勢いで持っていけるシナリオが成立する。原作1巻から7巻を摘んでいく形でストーリーが成立したのも、TRIGGERの”勢いある映像”があったからこそだ。

そしてそれがもっとも冴え渡っていたのが、鳩子ブチ切れ展開である。

『異能バトルは日常系のなかで』は、一応「日常系」とは言っているものの、エピソードが進むにつれて、ラブコメ展開が加熱していった。そんな中、あの穏やかな鳩子のフラストレーションが日に日に加速し、ついに第7話『覚醒<ジャガーノートオン>』で大爆発。鳩子がブチ切れるシーンは、中々に圧巻で、雰囲気的にもかなり最悪だった。

まあそれで鳩子が安藤家から飛び出して行って第7話が終わるんだけど、その次の第8話『戦争<ホルムガングバトル>』で急に異能バトル系のストーリー(精霊戦争のお話)が始まるのである。第8話は終始、桐生のターンだった。
そして第8話が終盤に差し掛かったところで、いつまで経っても鳩子が見つからないことに焦った文芸部メンバーは、彩弓の異能を使うことで、鳩子を桐生から奪還することに成功する。

……という超絶怒涛の展開が繰り広げられたのだが、あまりにも怒涛すぎて、鳩子の超ブチギレシーンはどこかにいってしまい、安藤と鳩子はひとまず仲直りすることに成功した。もう「絶交!!!」ぐらいにブチギレていた鳩子が、上手い感じに元通りになったのである。

一見するとこれは実にご都合主義だが、鳩子と安藤が喧嘩してから仲直りするまでに、桐生側の精霊戦争のシーンが長尺で挿入され、かつTRIGGERのダイナミックな映像表現があったから、視聴者は特に「ご都合主義」に気にすることなく、作品を視聴し続けることができたのである。僕としても「え、あのシリアスな喧嘩はもう終わり?」と思ったけれど、同時に「ま、いっか」と思ってしまった。

『異能バトルは日常系のなかで』の総監督・シリーズ構成を務める大塚雅彦は、TRIGGERの創業者・代表取締役社長であり、ジブリ作品や庵野秀明作品で監督助手・演出を担当していた経歴のある文句なしの一流クリエイターだ。だから、原作を上手に調理するシナリオライティング技術も有しているんだろうけれど、それにしても『異能バトルは日常系のなかで』の仕事はプロすぎた。

さいごに

『異能バトルは日常系のなかで』は名作だと思うけれど、残念ながらヒットにはならず、おそらく製作委員会としては赤字だと思う。でもTRIGGERは製作委員会に参加していないようだったから、損害はほぼゼロだと思う。というかブランディングという意味では「成功」と言っていいだろう。

なんだかんだで『異能バトルは日常系のなかで』は、TRIGGERの凄さを再認識できる作品かもしれない。

この記事をシェア
目次