【GJ部感想】ツンデレの描き方が超一流の日常系アニメ

GJ部
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『GJ部』について語っていく。

『GJ部』は新木伸によるライトノベル(ガガガ文庫)が原作で、2013年冬クールにTVアニメが放送された。

アニメ制作は動画工房が担当している。

目次

『GJ部』の評価

※ネタバレ注意!

作画70点
世界観・設定・企画70点
ストーリー70点
演出70点
キャラ75点
音楽75点
※個人的な評価です

作画

動画工房にしては、作画のクオリティーは普通だった。とはいえ、他のアニメ作品に比べれば、クオリティーは高い。キャラクターデザインが崩れることもなかったし、ときたま、アニメーション表現で魅せるシーンもあった。

世界観・設定・企画

とても不思議な世界観だった。『GJ部』という部活動の実態がよくわからないし、キャラクターの背景も、他の作品ではあまり見られないものだった。ラブコメ展開があるわけでもなく、ただただ普通の日常系だ。とても不思議なアニメができたという点で、非常に興味深い作品だった。

ストーリー

ショートストーリーが延々と続いていく。また時間経過も描かれているので、キャラクターがちゃんと卒業する。でも、感動要素に力を入れているわけではなく、終始、日常系のストーリーが続いた。全体的に、シュールな雰囲気が強く、シナリオも独特だった。謎の中毒性がある。

演出

シュールなギャグが多いことから、ちゃんと「間」を活用していた。この辺は、動画工房の魅力の1つでもある。そう考えると『GJ部』は、アニメ化の難易度がかなり高かったかもしれず、そういう意味では、動画工房はいい仕事をしたことになる。

動画工房ということで、やはり可愛らしく描く演出が強かった。そのうえ『GJ部』に関しては、作画カロリーがそこまで高くなかったので、全体的にコスパが良かった。

キャラ

髪色含めてキャラの個性はかなり強い。というか、もはやファンタジー。特に、綺羅々のねこみみは謎に近い。

一方で、動画工房の力もあってか、登場するヒロイン全員がかわいい。またエピソードもちょっとエロいシーンもあるので、それがキャラの魅力を引き立てている。

個人的には部長のツンデレの描き方が最高に良かった。

音楽

OPは乙女新党の『もうそう⭐︎こうかんにっき』で、ザ・アイドルソングという感じだ。EDはキャラソンが全部で4曲。個人的には『I wish 〜ときめきの魔法〜』と『走りだそう!』が好みだ。

ちなみに『GJ部』は、日テレ傘下のレコード会社・Vapが出資しているため、その影響でキャラソンが充実しているようだ。

『GJ部』の感想

※ネタバレ注意!

ツンデレの描き方が超一流

一見すると、『GJ部』は4コマ漫画が原作のように思えるが、なんとこれはライトノベル原作なのである。そもそも『GJ部』のように、超ショートストーリーだけで構成されたライトノベルが存在するのを知らなかったが、それをアニメ化してしまうのも驚きだ。

そして、結果的に『GJ部』はアニメでも独特の雰囲気を醸し出すことに成功している。4コマ漫画のようにみえて、漫画らしくない演出を盛り込んできている。特に印象的だったのがツンデレの描き方だ。

一般的にラブコメ漫画でツンデレを描く際は、ツンツンしているところとデレデレしているところをちゃんと描くことがほとんどだ。つまるところ、とてもわかりやすくツンデレが描かれる。

一方で『GJ部』の天使真央の場合、もちろんツンツンしてるところやデレデレしてるところを描くんだけど、たまに、デレデレしているところを全く描かないことがある。そしてそのあとに天使恵の「実はお姉ちゃん、恥ずかしがってるんですよ」というセリフを通じて、そこで初めて、真央がデレデレしていることがわかる。この演出、なんだかんだで他のラブコメ漫画では見られない。

では、なぜ『GJ部』がこのような演出を採用できたかと言えば、それは『GJ部』が超ショートストーリーのみで構成されたライトノベルだからである。ラブコメが主な作品ではないから、一般的なラブコメラノベのように、恋愛描写を加えるわけにはいかない。そこで『GJ部』は、かなり間接的な方法でデレデレを描くことにしたのである。

僕も、学生時代を思い返すと、女友達を通じて「あの子、実は〇〇が好きなんだよ」と言われたことがあった。『GJ部』はこの辺の描き方が絶妙で、だから、妙な魅力があるのだ。

これぞ、日本的カオスアニメ

たしかに『GJ部』は、おもしろい作品だった。「日常系」というジャンルとして優れた作品だと思うし、キャラは可愛いし、ギャグもシュールでおもしろかった。とても癒された。

一方で「なぜ『GJ部』のアニメ化が決まったのか?」という疑問が残る。それも、2013年当時はまだブランドが確立されていなかったものの、業界内では高く評価されていた動画工房による制作だ。『GJ部』がおもしろいのは間違いないが、特別人気のあるラノベというわけではない。赤字リスクは十分に大きかったはずだ。動画工房としても、ほかの作品の方が期待値が高そうなものである。

では、なぜ『GJ部』がアニメ化されたのか。それはVapによる乙女新党のプロモーションである。2012年から活動を開始した乙女新党は、日テレのバラエティ番組の企画で誕生したアイドルグループだ。同番組より、2013年1月に放送される『GJ部』のタイアップ、キャスティング、CDデビューが決定されていた。EDのクレジットを見るに『GJ部』は日テレとVapが出資しているっぽい。アイドルソングのCDデビューで、アニメのタイアップは、かなり魅力的なプロモーション手段だ。

日テレが主導権を握れて、それでいて乙女新党との相性が良さそうだったのが『GJ部』だった。ガガガ文庫としても、メディアミックスしづらい『GJ部』をゼロ資本でアニメ化できるので、条件としては魅力的だ。動画工房としても、おそらく『GJ部』のポテンシャルの高さには気づいていたはずで、資本リスクゼロで、アニメ制作の経験値を高められるという意味で、やはり条件として美味しい。

それぞれの思惑が乗っかる形で動画工房制作による『GJ部』の制作が決定した、というのが僕の推測だ。もちろんこれは推測に過ぎないけど、多分、大体は合ってると思う。そして、このようにして複数の思惑が乗っかったことで『GJ部』という資本を回収できるか微妙なIPのアニメ化が決定した点は見逃せない。日本では、このようにしてアニメ化が決定することがよくある。そのおかげで糞アニメができる一方で、日本だからこそできるカオスでおもしろいアニメが誕生するのだ。

さいごに

『GJ部』はOVA版の『GJ部@』があるようなのだけれど、配信で見つからないので、視聴は一旦保留。引き続き、動画工房作品をガンガン視聴していきたいと思う。

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