『しかのこ』感想:プロモーションが突き抜ければおもしろくなる

しかのこのこのここしたんたん
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『しかのこのこのここしたんたん(以下、しかのこ)』について語っていく。

『しかのこ』は、おしおしおによる漫画(マガジンポケット)が原作。これが2024年夏クールでアニメ化された。

アニメ制作はWIT STUDIOが担当している。

目次

『しかのこ』の評価

※ネタバレ注意!

作画55点
世界観・設定・企画75点
ストーリー70点
演出75点
キャラ70点
音楽83点
※個人的な評価です

作画

制作費の大半をプロモーションとOPに使ったからなのか、あのWIT STUDIOなのに、作画のクオリティは低い。が、それも承知の上で、なんとか作品として成立するために、様々な演出を施した感じに見受けられる。

実際、作画がダメすぎて途中切りした人は相当多いのではないだろうか。

世界観・設定・企画

OPを含めたプロモーションで話題を掴み取り、それでなんとか最後までやり切った感じだ。全体として、ネット民の反応は良かったと思う。もちろん、途中切りした人も相当数いるけど、相当の印象を刻み込むことに成功したと思う。

僕は、電通による過度なプロモーションで作品のクオリティが低くなるのは好きじゃないのだけど、ここまで貫き通されると、一周回って好感が持ててくる。

ストーリー

ストーリー自体は、普通におもしろかった。というか、このめちゃくちゃなストーリーだからこそ、あの作画でも通用したのだと思う。

演出

本作品の監督は、『ゆるゆり』などの数多くの名作を担当した太田雅彦。たしかに演出は、太田雅彦らしいぶっ飛んだものが多かった。もはや茶番みたいな演出だけど、これはこれで良い。

キャラ

なんというか、キャラは全体的に現代的ではなく、ニコニコ動画的な雰囲気を感じさせられる。キャラクターデザインそのものは無難だが、作品の世界観も相まって、個性の振り切り方がすごい。

音楽

OPの『シカ色デイズ』は、結局再生回数が2,500万回を超えていて、多分3,000万回は超える。実際、電波ソングとしては良い曲で、今後も語り継がれそうな感じはある。

『しかのこ』の感想

※ネタバレ注意!

プロモーションで突き抜けてしまった作品

一般的に、1クールのアニメ制作費は3億円ほどで、広告費に関しては作品にもよるところだが、制作費の10%〜が相場だと思う。もちろん『リゼロ』のような有名な作品にもなれば、渋谷や新宿で街頭広告を出すなど、プロモーションにも力が入る。

だが、プロモーションに力を入れれば入れるほど、制作費にお金が回らなくなり、作品のクオリティが落ちることが珍しくない。個人的な経験で言えば、電通や博報堂が製作委員会幹事にいる作品は、大々的にプロモーションをやっている割に、作品のクオリティが低くなる傾向がある。例えば『ONE PIECE FILM RED』は電通が幹事を務めた作品だ。たしかに、それなりにクオリティは高かったが、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』の方がクオリティが高かったのは否めない。

だから僕は、電通が製作委員会に参加している作品に関しては、期待しないようにしている。

しかし『しかのこのこのここしたんたん』ほど突き抜けてしまうと、話は変わってくる。この作品は、とにかく酷い。

アニメスタジオはWIT STUDIOで、監督や『ゆるゆり』や『うまるちゃん』や『みなみけ』を手がけた太田雅彦だ。そして、あの無限ループのプロモーション。さぞ素晴らしいアニメが誕生するに違いない。そう思っていたら、第1話から作画がダメだった。

でもメタ的に言えば、これは極めてシュールな取り組みというか、壮大なボケだったのだと思う。そして、このカオスな作品は、二次元カルチャーのダメな感じを象徴するアートとして、100年後まで残っているかもしれない。笑

さいごに

製作に関与したツインエンジンからすれば、これはまたおもしろい制作実績になる。

『しかのこ』は「プロモーション特化で作画はダメ」というある意味挑戦的な作品で、どちらにしても、今季の話題を掻っ攫ったことは間違いない。

こういうやり方もあるのだなと、勉強になった。

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