今回は『シン・エヴァンゲリオン劇場版(以下、シンエヴァ)』について語っていく。前回の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』は2012年上映。それから9年ぶりの最終章が2021年3月に上映開始された。「一体いつ上映するのだろうか」と日本中のファンが思っていたわけだが、満を持して上映されたのだ。
『シンエヴァ』については様々な考察記事があるが、僕はなるべくわかりやすく説明している。エヴァ初心者の方はご安心を。
あらすじ
エヴァがついに完結する。
2007年から『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズとして再起動し、『:序』『:破』『:Q』の3作を公開してきた。その最新作、第4部『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の劇場公開が決定。
人の本質とは何か? 人は何のために生きるのか? エヴァのテーマは、いつの時代にも通じる普遍的な核を持っている。
シンジ、レイ、アスカ、マリ、個性にあふれたキャラクターたちが、人造人間エヴァンゲリオンに搭乗し、それぞれの生き方を模索する。
人と世界の再生を視野に入れた壮大な世界観と細部まで作り込まれた緻密な設定、デジタル技術を駆使した最新映像が次々と登場し、美しいデザインと色彩、情感あふれる表現が心に刺さる。
スピーディーで濃密、一度観たら病みつきになるその語り口は、興行収入80億円超えの大作『シン・ゴジラ』も記憶に新しい庵野秀明総監督による独特の境地。
その庵野総監督がアニメーションのフィールドで創作の原点に立ち返り、新たな構想と心境によって2012年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』以後、封印されてきた物語の続きを語る。1995年にTVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』でアニメファンのみならず、アーティストや学者までを巻き込んで社会現象を起こした初出から、実に25年――その間、常にエポックメイキングであり続けたエヴァの、新たな姿を見届けよう。
『エヴァンゲリオン』公式サイトより引用
『シンエヴァ』の感想
ここからは『シンエヴァ』の感想について語っていく。ネタバレもガンガンしていくので、未視聴の人は気をつけてほしい。
ちなみに僕は4DXで視聴したので、映像だけではなく一つのアトラクションとして楽しんでいる。こちらは客層の参考までに。
感想①:今までのエヴァで一番理解しやすい内容
『シンエヴァ』は今までの『エヴァ』シリーズの中で、一番優しい内容だった。ストーリーの進行やショットの作り方など、ややこしい演出は相変わらずだが、全体的にストーリーはわかりやすかった。なぜなら最終章ということで、前回までの伏線をしっかり回収していたからだ。
申し訳ないが僕はTVアニメシリーズの『エヴァ』をまだ見ていないので、詳しい比較はできない。話を聞いたところTVアニメのラストは不可解なものだったそうだ。しかし、『シンエヴァ』に関しては本筋のストーリーは分かりやすかった。
ここからはネタバレになるが、簡単に言うと全ての元凶は碇ゲンドウのエゴ。碇ゲンドウのワガママに世界中が巻き込まれていた。そして紆余曲折しながらも、最終的には碇シンジが碇ゲンドウのワガママを食い止めた。
その途中の段階で世界線をループできている渚カヲル説や、アスカがクローン説など様々な要素が複雑に絡み合っているが、その辺はあまり気にしなくていい。
全ては碇ゲンドウの歪んでしまった愛が原因だ。最終的には息子である碇シンジとの対話で碇ゲンドウの心が救われている演出も見受けられた。
一言で『シンエヴァ』を説明するなら、「世界中を巻き込んだ壮大な家族問題」といった感じだ。
この展開は十分予測可能だった
僕は大方の流れを予測できていた。今回の『シンエヴァ』は間違いなくハッピーエンドになると予想していたのだ。『シンエヴァ』のタイトルでもある『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の「||」の部分はプログラミング言語では、「または(or)」の意味がある。ここから読み取れることは、TVアニメや旧劇場版の「アナザールート」である可能性が高いということだ。
そしてもしアナザールートを制作するのであれば、前回のようなエンドではなく正真正銘のハッピーエンドを制作するだろうと僕は予想していた。
そしてハッピーエンドを制作するのであれば、碇ゲンドウと碇シンジの親子ゲンカの結末は欠かせない要素だ。『エヴァ』シリーズというのは、碇ゲンドウのエゴによって世界中が巻き込まれたものと言っても過言ではない。これを止められるのは間違いなく碇シンジしかいないし、この展開がラストに繋がっていくことも間違いない。
これぐらいの予想は誰にでもできる。この考察は全然深堀りされていない表面的なものだからだ。だが、このような考察が誰でも出来るぐらい、上映前の段階で『シンエヴァ』はわかりやすいストーリーだったのだ。そう考えると『エヴァQ』がなぜ序破急の急ではなく『Q』だったのか、これがより鮮明に見えてくるのではないだろうか。
感想②:教養とサブカルの融合の一つの終着点
『シンエヴァ』のあらすじにはこのような言葉がある。
人の本質とは何か? 人は何のために生きるのか? エヴァのテーマは、いつの時代にも通じる普遍的な核を持っている。
『エヴァンゲリオン』公式サイトより引用
「いつの時代にも通じる普遍的な核」というのはまさに教養であり、「人の本質とは何か?人は何のために生きるのか?」というのは哲学に似たものだ。そして『シンエヴァ』はアニメという形でこれらを示した。
僕は以前から、アニメの可能性の一つとして教養とサブカルの融合を挙げている。教養は堅苦しい印象や勤勉なイメージがあり、サブカルは娯楽や楽しいイメージがある。これは多くの人はこの2つを結びつけようともしなかった。庶民のほとんどはサブカルが大好きで、教養は大嫌いだからだ。だがアニメはこの2つを自由に融合させることができる。それもあくまでも「サブカル重視で楽しみながらアニメを視聴しつつ、さりげなく深層的に教養を学ぶことができる」といったぐらいにだ。
『シンエヴァ』の場合、「感動した」「作画がカッコいい」「鳥肌が立った」といった感想がある一方、「よく分からなかった」という感想もある。そして多くの人が『シンエヴァ』の意味を考えるはずだ。その過程で『シンエヴァ』は哲学を教えてくれる。
実は『エヴァ』以外にも、じっくり考えたりサラッと見るだけである程度の教養を手に入れることができるアニメは多く存在する。アニメをインスピレーションのためのツールとして利用している多くのビジネスマンには、『シンエヴァ』をきっかけに多くのアニメに触れてほしいものだ。
感想③:日本のアニメーションの集大成
『シンエヴァ』のアニメ制作は株式会社カラーが担当している。だが、これだけのクオリティだったのでプロジェクトとしてもかなり大きいものになったはずだ。実際にEDのクレジットを見てみると、多くの下請け会社が連なっていた。
- ufotable(鬼滅の刃、Fateシリーズなど)
- A-1 Pictures(SAO、かぐや様など)
- Clover Works(約ネバ、青ブタなど)
- WHITE FOX(リゼロ、ごちうさなど)
- MAPPA(進撃、呪術など)
- BONES(ヒロアカ、ハガレンなど)
- SILVER LINK.(のんのんびより、バカテスなど)
僕が覚えている範囲でこれだけのアニメ制作会社が携わっていたことが分かった。『シンエヴァ』は日本のアニメーション技術の集大成と言っても過言ではない。
2020年の日本アカデミー賞の優秀アニメーション賞で、『鬼滅の刃』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『えんとつ街のプペル』といった素晴らしい作品が並んだが、これに『シンエヴァ』が入っていたらと思うと恐ろしかった。現段階のアニメ映画のスケジュールを見ても、2021年はダントツで『シンエヴァ』だろう。
『シンエヴァ』の評価
ここでは、『シンエヴァ』のアニメとしてのクオリティについて、個人的な目線で評価していく。
作画 | 100点 |
世界観・設定 | 100点 |
ストーリー | 90点 |
演出 | 100点 |
キャラ | 85点 |
音楽 | 90点 |
作画
この圧倒的作画を100点満点にしなかったら、殆どの作品は80点にも満たなくなってしまう。日本のアニメーションの力を全投下したような出来だった。
世界観・設定
なんとも不可思議な世界観・設定の秘密が紐解かれたことで、『エヴァ』シリーズ全体の壮大な世界観・設定の意味が明らかになった。メッセージ性も強く、素晴らしいものだった。
ストーリー
ストーリーについては今までよりもわかりやすく、涙を誘う展開でもあった。
演出
演出はいわずもがな。特に碇シンジと碇ゲンドウの対話シーンの演出は鳥肌が立った。4DXを利用したこともあって、戦闘シーンはアトラクションのように楽しめた。
キャラ
『シンエヴァ』はアスカや綾波のようなヒロイン勢の主張が、個人的には抑えめになっていたと思う。ちなみに今回もファンサービスのお色気シーンは満載だった。
音楽
EDの宇多田ヒカルの『One Last Kiss』は、さすが歌姫という感じの名曲だ。それと挿入歌の80年代を感じさせる曲も良かった。
さいごに
ついに『エヴァ』が完結した。「これからも続くのではないか」と考える人は少ないだろう。すべての伏線が回収され、碇シンジと碇ゲンドウの親子ゲンカも終止符が打たれた。
だが、『シンエヴァ』によって今までの『エヴァ』シリーズが全く違うものに塗り替えられた。これからはまたTVアニメに戻って見直す楽しみもできた僕にここまでの体験をさせてくれてありがとう、エヴァンゲリオン。