今回は『花咲くいろは』について語っていく。『花咲くいろは』はP.A.WORKSによるオリジナルアニメで、2011年春クールから2クールにわたって放送された。
『花咲くいろは』の感想
ネタバレ有りです!
感想①:サービス業の葛藤が超深掘り
『花咲くいろは』は旅館業の従業員の葛藤を描く作品だ。旅館業というと、お客さまより早く起きてお客さまより遅く寝る仕事。これが毎日続くのだから、かなりヘビーな仕事だ。その上、お客さまに対する敬意が非常に重要になる職種なので、飲食店のアルバイトの接待とはレベルが違う。
『花咲くいろは』で印象的なのは、やはり「お客さま第一」の考え。『花咲くいろは』の舞台となる喜翠荘の女将・四十万スイ(CV.久保田民絵)は「自分よりもお客さまを大事にするべき」という考え方で、それに対して主人公の松前緒花(CV.伊藤かな恵)は「まずは従業員第一でしょ!」と反発する。物語前半は終始、この対立が続く感じだ。
しかし緒花もいつの間にか、お客さまを大事にする喜翠荘が大好きになっていた。みんなで協力してお客さまを喜ばせるという仕事が楽しくなっていたのだ。そしてそれと同時に、これまたいつの間にか、仕事を全て覚えてしまっている…。
日本人のほとんどがサービス業でのアルバイトを一度は経験していると思う。僕はアルバイトをしていて「あ〜めんどくさいな〜」と思い続けていた。しかし『花咲くいろは』のように従業員全員が共有している明確なビジョンがあると、とてもよく仕事が回るし、何よりも、楽しいことが分かる。『花咲くいろは』ではサービス業の在り方を考えさせられた。
感想②:最終回が感動
『花咲くいろは』には数々の名場面があり、感動できることも少なくない。その中でも僕が唯一泣くことができたのは、最終話「花咲くいつか」の終盤で、緒花が喜翠荘の床を掃除するシーンだ。
第1話「十六歳、春、まだつぼみ」で嫌々雑巾掛けさせられていた緒花が、帰りの電車が走り出すギリギリになってまで床を掃除するようになる。そしてこれを見たスイが、思わず涙を拭う。今まで一切のスキがなかったスイが唯一涙するというギャップ。そしてその際のハイセンスな演出には心揺さぶるものがあった。
感想③:『花咲くいろは』がキッカケで湯涌ぼんぼん祭りが開始
そしてなんと、『花咲くいろは』の作中で登場したぼんぼん祭りが、アニメをキッカケにスタートしてしまった。ぼんぼん祭りは神道の祭式なのだが、『花咲くいろは』をキッカケにゼロから祭式が企画・構成され、2022年現在まで続いている(コロナ禍の間は中止になってしまったが)。しかもあえて『花咲くいろは』と関連づけないことで、地域密着を目指しているとのこと。アニメが由来であることを知らずに訪れる人もいるそうだ。
ここまでの盛り上がりを見せるのは非常に興味深い。アニメというサブカルチャーが、神道というメインカルチャーに影響を及ぼし、地域密着型のイベントを長年にわたって開催しているのだ。面白くない訳がない。コロナ禍が明けて、湯涌ぼんぼん祭りが開催されるようになったら、絶対に参加しようと思う。
『花咲くいろは』の評価
作画 | 83点 |
世界観・設定 | 85点 |
ストーリー | 80点 |
演出 | 80点 |
キャラ | 85点 |
音楽 | 80点 |
作画
P.A.WORKSにとって『花咲くいろは』が一つの分岐点になった気がする作画だった。キャラデザのバランスも現代的だし、背景美術が素晴らしい。特に都会の背景はすごく丁寧に描かれていたと思う。
世界観・設定
「働く」とは何かを考えさせられる設定。旅館業は特にブラックな業態だが、それでも働き続ける意義がしっかり説明されている。
ストーリー
短期的にも長期的にもよくできたストーリーだった。特に始まりとラストが非常に印象的。相当な時間をかけて作り込んでいることが分かる。
演出
萌えるシーンも感動シーンもどちらも演出が良かった。PA作品の感動シーンはセンスがめちゃくちゃ良いのだけれども、『花咲くいろは』の最終話「花咲くいつか」の演出は、それはもう最高だった。泣いた。
キャラ
キャラの関係性が作り込まれている。やはりP.A.WORKSは群像劇に強い。緒花や菜子も可愛いけど、個人的には結名もツボでした。
音楽
nano.PIREのゴリ押し。nano.PIREにしかない爽やかさが『花咲くいろは』の作風に合っていた。やっぱりOPの『ハナノイロ』が名曲。
さいごに
『花咲くいろは』は劇場版の『花咲くいろは HOME SWEET HOME』を2013年に公開している。TVアニメの続きというわけではないが、劇場版も視聴するべきだろう。
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