今回は『FLEE』の感想を述べておく。一応注意しておくが、水泳アニメの『Free!』とは全くの別物だ。
『FLEE』はデンマークで制作されたアニメで、ドキュメンタリー形式になっているのが特徴の作品だ。アカデミー賞では国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー映画賞、長編アニメ映画賞の3部門でノミネートされた。
2021年1月に米国で上映された後、2022年6月に字幕付きが日本でも上映された。
『FLEE』の感想
ネタバレしているので、未視聴の人は気をつけてください!
知らない方がいい世界だった
『FLEE』のストーリーは衝撃的だった。
主人公のアミンは、アフガニスタンで生まれており、幼い頃から戦争の影響を受けてきた。そして家族と一緒に、故郷であるアフガニスタンを離れて、ロシアのモスクワに密入国する。しかし、当時のモスクワは共産主義が崩壊した後で、凄惨な状況だった。そして、アミンの兄が住んでいるスウェーデンに入国するために、アミンと家族はスウェーデンへの密入国を決意する……。といった感じのストーリーだ。
しかも、アミンは同性愛者(ゲイ)だった。アフガニスタンでは、同性愛者は完全に禁止されているため、家族に打ち明けることもできなかった。だが結局、家族はアミンの恋愛観をしっかりと理解していたようだった。アミンの兄がゲイクラブを紹介するシーンは、屈指の名場面だ。
こんな感じに、日本人にとっては全く実感が持てないストーリーだった。中東事情なんて全然知らないし、僕の周りに同性愛者はいない(もしかしたら隠しているだけかもだけど)。でも、”この世界”は実際に地球上に存在しているのだ。知らない方がよかった世界だと思うけれど、知らなければいけない世界だとも思う。
人生を既に手に入れている日本人は勝ち組
アミンは、自分の人生を手に入れるまでに、何回も恐怖を乗り越えなければならなかった。本当に、命を賭けなければ、自分の人生を手に入れられなかったのだ。
では、我々日本人はどうだろうか。言ってしまえば、イージーモードだと思う。英語がネイティブじゃないのが唯一の欠点だけど、それ以外は最高の環境だといえるだろう。でも実際は、自分の人生を放棄して、生活費を稼ぐために、やりたくもない仕事をしに会社に通っている人が何人もいる状態だ。
僕たち日本人は本来、何も失うものはないはずだ。少なくとも命は保証されている。段階を踏めば、アルバイトで月10万ぐらいは稼げる。そのお金でも十分暮らせるし、しっかりお金を貯めてPCやスマホでも買えば、仕事だってできる。日本人の多く(僕含め)は、一体何が不満なのだろうか。
せっかくのイージーモードなのだ。自分のやりたいことをとことんやるべきなのではないだろうか。
『FLEE』の評価
※個人的な評価です
作画 | 30点 |
世界観・設定 | 85点 |
ストーリー | 90点 |
演出 | 80点 |
キャラ | 75点 |
音楽 | 70点 |
作画
作画は作画でしっかり評価してみた。通常のアニメと比べれば、作画のクオリティは低い。逆に言えば、作画のクオリティが低くても、コンセプトが面白ければアカデミー賞を受賞できるということでもある。ちなみに、アニメーターは約10名しか参加してないそうだ。
世界観・設定
実話だけれどもあまりにも際どい内容で、当の本人を守るために、わざわざアニメで表現するというコンセプトが面白い。今後、めちゃくちゃ際どいドキュメンタリーを、アニメで表現する作品が増えるかもな。
ストーリー
「ファンタジーの登場人物よりもリアルの人間のストーリーの方が面白い」という典型例だと思う。先進国の多くの人々にとって知らない世界だった。
演出
演出も中々良かった。派手さはないけど、リアリティのある演出で、どんどん作品に引き込まれていく。適度に実写の映像を挿入するのもイイね。
キャラ
主人公の人生が波瀾万丈すぎて、キャラが立ちまくっている。
音楽
僕は洋楽の知識がそれほどないのでなんともいえないけど、とりあえず雰囲気はいい感じだった。
さいごに
『FLEE』のように、あまりにも危険すぎるドキュメンタリーをアニメで表現する作品は、今後も増えていくと予想される。特に、中東事情とか北朝鮮関連とかに適したスタイルだと思う。
それに、ストーリーさえ面白ければ、アニメーションの部分は最低限のクオリティを守ればいい。あとはセンスで補えばいいのだ。
僕もこんな作品を作ってみたいなぁと思う。