今回は『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』について解説していく。
2019年秋クールに『サイコパス3期』が放送された後、2020年3月に本作が上映された。
アニメ制作はProduction I.Gが担当している。
『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』の感想
ネタバレ注意!
保安局が乗っ取られる!
本作は今までとは異なる展開だった。
従来の『サイコパス』は、どこかしらで事件が起きて、それに対して保安局刑事課が駆けつける展開だった。しかし今回は、ラスボス的存在である梓澤廣一(CV.堀内賢雄)が、保安局そのものを攻撃してしまうのだ。
まさかの保安局が攻撃されるという展開が、逆に斬新だった。保安局は高層ビル的な構造となっていて、梓澤廣一が口にしていた通り、まさにゲームのような展開を構築できる。
実際には、下層フロアが毒ガスで満たされていたり、至る所に敵がいたりした。公安局メンバーがいつ死んでもおかしくない状況が作り出されている。
それだけでなく、本作はいつも以上に群像劇的な展開となった。事件開始時の状況は、ざっくりこんな感じだったと思う。
- 梓澤廣一が慎導灼を人質に
- 小畑千夜が分析室でハッキング
- イグナトフは保安局の外
- 廿六木天馬と雛河翔は食堂
- 入江一途と如月真緒が建物上層の外
- 唐之杜志恩が小宮カリナの付き添い
- 霜月課長はソロで課長室
- パスファインダーの2人が建物内をウロウロ
そしてこの状況から外務省行動課の4人(狡噛慎也・宜野座伸元・須郷徹平・花城フレデリカ)が参戦することになる。
この群像劇が終盤でそれなりに綺麗にまとまっていたのだから、やはり『サイコパス』シリーズは総じてシナリオに優れていると思う。
なんでこんなに続きが気になってしまうのだろう?
そして終盤では、常守朱と狡噛慎也が久しぶりに再会することに。だがよく考えてみると、常守朱に一体何があったのかは全く語られていない。人事再編も進められていたことから、続編があるのはほぼ間違いない状況だった。
しかしそれにしても、なぜ『サイコパス』シリーズを見ていると、ここまで続きが気になってしまうのだろうか。
まずあげられるのは、シナリオの密度の濃さだ。『サイコパス』のシナリオは、様々なキャラの思惑が交錯している。本作の事件も、慎導灼の父親と梓澤廣一が繋がっていたし、ビフロストを破壊したい法斑静火の思惑もあった。
そしてその中で多数の伏線が登場し、未だに解決されていない伏線がいくつかある。それでその伏線を回収するための新作が公開され、そこでも濃密なシナリオが展開され、そしてまた伏線が張り巡らされていく。このサイクルが回せているから、『サイコパス』は自然な形で続編を制作することができるし、我々視聴者も続きが気になってしまう。
あとはやはり、狡噛慎也の存在が大きいように思える。『サイコパス1期』の主人公だった狡噛慎也が未だに存在感を発揮している。また、本作における事件は、常守朱が何かしらの企みの過程で発生したものだと考えていいだろう。
そうなると、もし『サイコパス』が完結するとしたら、そのケリをつけるのがこの2人になるのはほぼ間違いない。僕たちは心のどこかで、この2人が活躍するシーンを見届けたいのだと思う。
『サイコパス3 FIRST INSPECTOR』の評価
作画 | 80点 |
世界観・設定 | 85点 |
ストーリー | 85点 |
演出 | 80点 |
キャラ | 83点 |
音楽 | 75点 |
作画
いつも通り、作画のクオリティがそれなりに高い。特に戦闘シーンは大迫力。映画の大スクリーンで見たかった。
それと以前よりも、3DCGのクオリティが高くなっていた。具体的にはセルルック(3DCGのテクスチャをセル画に近づけること)が優れていて、アニメの風景に溶け込むようになっている。
世界観・設定
今までは事件現場に駆けつける展開だったけど、今回は保安局が舞台となっている。高層ビル的な構造を活用した戦術が採用されていて、そこが面白かった。
ストーリー
『サイコパス3期』時点では展開が全く読めなかったけど、想像以上に綺麗にまとまっている。梓澤廣一がラスボスだったのはまだしも、法斑静火が味方的な存在に落ち着いたのが意外すぎた。
演出
いつも誰かしらが死ぬので、今回も「誰か死ぬんじゃないか?」という感じにハラハラさせられた。『サイコパス1期』から刑事課一係で活躍していた唐之杜志恩の胸熱シーンは最高でした。
キャラ
『サイコパス3期』における主要人物全員がしっかり活躍した。そして最後の最後で狡噛慎也と常守朱が再会する様子が描かれる。そして相変わらず、霜月美佳の扱いが面白い。人事が再編されて、常守朱が部下になり、法斑静火が上司になることが発覚した時の霜月美佳の表情が……。
音楽
劇伴のクオリティが総じて高い。OP・EDは、単発としての威力に欠けるけど、作品の魅力をしっかり引き立てていた。
さいごに
2022年8月に『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』の制作が発表された。ティザービジュアルを見る限り、常守朱が主人公になる可能性が高そうだ。これで『サイコパス3期』における最大の謎だった”常守朱が勾留された理由”も明らかになりそうである。
これは早く見たいなぁ〜。→視聴しました。