【幻日のヨハネ感想】田舎的でマイペースなライフスタイル

幻日のヨハネ
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-(以下、幻日のヨハネ)』について語っていく。

『幻日のヨハネ』は『ラブライブ!サンシャイン!!』のスピンオフ作品で、2023年夏クールにTVアニメが放送された。

アニメ制作はサンライズが担当している。

目次

『幻日のヨハネ』の評価

※ネタバレ注意!

作画80点
世界観・設定78点
ストーリー70点
演出75点
キャラ88点
音楽80点
※個人的な評価です

作画

『ラブライブ!サンシャイン!!』からキャラクターデザインが変更されているのが特徴。『SAO』や『リコリコ』で総作画監督を務めた山本由美子がキャラクターデザインを担当しており、たしかに『リコリコ』の面影を感じる。

そして『ラブライブ!スーパースター!』や『虹ヶ咲』と同様に、キャラクターの色彩が明るくなっていて、キャラデザの方が3DCGに近づいた印象を受けた。これにより、3DCGと手描きの区別が本当につかなくなってきている。

ちなみに個人的には『ラブライブ!サンシャイン!!』の本編よりも『幻日のヨハネ』のキャラデザの方が好き。

世界観・設定

沼津市を模した異世界”ヌマヅ”を舞台にしていて、働き方、生き方、街がテーマになっていたと思う。これは都市部を舞台にした『ラブライブ!』では絶対にできない世界観で、これが『ラブライブ!サンシャイン!!』の最大の強みでもある。それを再活用しているのが『幻日のヨハネ』だ。

“ヌマヅ”の雰囲気も悪くなく、思っていたよりも上手に異世界化できていた。

ストーリー

序盤・中盤の盛り上げ方とかメッセージ性はとても良かったと思う。お金や名声を追求しない働き方を提示できている。あまりお金に興味がないZ世代には響く内容かも。

一方で、終盤のストーリーが釈然としない印象を受ける。「まあたしかに悪くないけど……」という感じで、驚きがない。もちろん『ラブライブ!』という王道を貫く作品にストーリーで驚きを求めるのがお門違いかもしれないが。

演出

ライブパフォーマンスの演出がGOOD。全体的にキャラもよく動くし、キャラクターも可愛らしかった。

キャラ

やっぱり『ラブライブ!サンシャイン!!』はキャラクターが良いのだけれど、その中でヨハネを主人公にしたのも着眼点がいいし、異世界リメイクのやり方もGOODだ。どのキャラクターもピッタリの職業に就いていると思う。

音楽

かなりカッコいい系の楽曲が多い。そもそも『幻日のヨハネ』はスクールアイドルの物語ではないため、アイドルソングに縛られる必要もない。ヨハネ(津島善子)を主人公にしている以上、少しダークな雰囲気のある楽曲になるのは必然かも。その際たる例がOPの『幻日ミステリウム』だ。

僕は『ラブライブ!』シリーズは大抵EDの方が好きになのだけれど、『幻日のヨハネ』も例外ではない。EDの『キミノタメボクノタメ』は僕が好きなタイプの楽曲で、比較的落ち着いたメロディーなのだけれど、合いの手が楽しそうな曲でもある。

『幻日のヨハネ』の感想

※ネタバレ注意!

“ヌマヅ”という素材を最大限に活用

『幻日のヨハネ』は沼津市の異世界Verである”ヌマヅ”を舞台にした作品だ。

話をめちゃくちゃ大きく広げると、現在、日本は東京一極集中問題に見舞われている。東京になんでもかんでも詰め込むのは効率化を促進させる一方で、リスク分散できないのが最大のデメリットとなる。だからこそ、現在は地方分権に力を入れるべきだとされており、その中で地方の最大の魅力とも言える自然やグルメを活用した観光業に力を入れるケースが多い。もちろん沼津市も例外ではなく、それこそ『ラブライブ!サンシャイン!!』の活躍もあって、知名度がかなり高まってきているところだ。

東京の問題はほかにもある。一般的に、東京は”夢を追い求める場所”だとされてきた。実際、『ラブライブ!』シリーズは『サンシャイン!!』を覗くと、全ての作品が東京を舞台にしている。それも港区・千代田区・渋谷区というキラキラした場所だ。たしかに東京は、夢を叶える場所としては最有力候補にあるだろう。カネもヒトもモノも集まっている街だからだ。しかし「夢を叶える=幸せ」が成り立つわけではない。もしかしたら東京に行くことで夢を叶えてキラキラした毎日を送れるようになるかもしれないが、それが幸せに結びつくかどうかは全くの別問題なのである。たびたび報道される芸能人の自殺ニュースが、その典型例だろう。

さて、話を『幻日のヨハネ』に戻そう。『ラブライブ!』シリーズの中でも『サンシャイン!!』は異質の作品だ。なぜなら、東京ではなく静岡県沼津市を舞台にしているから。
そしてAqoursの中で津島善子(ヨハネ)は、都会的なキャラクターだと言える。だから『ラブライブ!サンシャイン!!』を使って、今一度”地方”と”都会”の対比を描く際に、ヨハネを主人公にするのは理にかなっている(もちろん、ヨハネが人気キャラというのもあるだろうけど)。

実際、序盤・中盤で、ヨハネが少しずつ”ヌマヅ”の生活に溶け込んでいく様からは、色々なメッセージを受け取ることができた。別にお金のために働く必要はない。それなりに楽しい生活ができれば、それで十分なのである。このような生活スタイルは、決して東京である必要はない。特に沼津はちょうどいい。僕は5日間ぐらい沼津に滞在したことがあるけど、駅周辺で大体のモノは買えるし、ちょっと足を伸ばせば自然と戯れることができる。家賃もそこまで高くないだろう。

そう考えると、もしかしたら『ラブライブ!サンシャイン!!』は沼津移住を狙った作品なのかもしれない……。笑

まあ、悪くないけどさ……

『幻日のヨハネ』は、良くも悪くも無難な作品になった。主人公をヨハネにし、沼津市を異世界に見立てて、田舎的なライフスタイルをテーマにし、”ライラプス”という新キャラを出し、序盤からシリアスな雰囲気(謎の瘴気)を漂わせてきたので、「お、これは?」と思わせるスタートを切ることができた。そして中盤までは、Aqoursのメンバーを深掘りしながら、田舎的なライフスタイルをメッセージとして伝えていた。ここまでは、それなりに良い。

だが、終盤になって勢いが一気に失速した。獣の謎の暴走やライラプスの伏線回収が、ちょっと微妙だったのだ。別に「ライラプスを殺せ!」という過激な思想を持っているわけではないけれど、なんか他にもっと刺激的なストーリーを描くことができたのではないかなぁと思う。

『ラブライブ!』は王道展開ではあるもの、ストーリーにツッコミどころが多いのが気がかりだ。それでいて、なんだかんだで攻めた内容を提示できていない。そろそろ、もっとぶっ飛ばしてみてもいいのではないかと思う。

きっと『幻日のヨハネ』は、トータルでは絶対に黒字になるだろうし、Aqoursを再活用でき、持続的なコンテンツとしてスタートを切れたのは大きかった。でも、一人のアニメファンとして、せっかくのスピンオフなのだから、もっと攻めてみてもいいと思う。攻めるというのは、もっとエロくするとか、もっと過激にするということではなく(まあそれでもいいけど)、もっと強いメッセージを示してほしい。イメージは『よりもい』みたいな。そしてこれは、これまでに『コードギアス』や『ガンダム』を制作してきたサンライズなら、絶対にできると思うのだ。

さいごに

沼津市を異世界に見立てるというのも、イマドキな感じがしてるなぁと思う。でも、実際これは悪くない着想だ。他の『ラブライブ!』作品でもできると思うし、『ラブライブ!』に限った話ではなく、その他有名IPでも、スピンオフで異世界転生させてみるのはかなり面白いかも。なろう系を量産するぐらいだったら、有名IPを異世界転生させた方がいいのかもしれないね。KADOKAWAさん。

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