今回は『白い砂のアクアトープ』について語っていく。『白い砂のアクアトープ』は、アニメ制作会社P.A.WORKSによるアニメオリジナル作品だ。2021年夏クールから2クールにかけて放送された。
『白い砂のアクアトープ』の感想
ネタバレしているので未視聴の方は気をつけてください。
感想①:水族館の実態がよく描けている
『白い砂のアクアトープ』は前半と後半でストーリーが分かれている。前半は『がまがま水族館』という小さな水族館での物語。そして後半は大型水族館の『アクアリウム・ティンガーラ』での物語となっている。
どちらも水族館特有の問題をテーマにしていた。特に『がまがま水族館』のように、地域密着型の小さな水族館は、現実でも経営困難になっているのだろう。主人公の海咲野くくる(CV.伊藤美来)も『がまがま水族館』を存続させようと頑張っていた。だが、結局『がまがま水族館』は潰れてしまう…。
『ティンガーラ』では水族館における様々な工夫が散りばめられていた。特に終盤の”水族館での結婚式”はとても斬新だろう。結婚式の招待状に生き物の絵を描くのも面白い。
このようにして『白い砂のアクアトープ』では水族館の実態がよく描かれていた。また、海の生き物の豆知識も随時出てくる。水族館の現状や素晴らしさを学ぶことができたのが良かった。
感想②:着地点が曖昧だった
『白い砂のアクアトープ』はアニメとしての着地点がとても曖昧だった。そもそも『白い砂のアクアトープ』は何を伝えたかったのだろうか。
最も考えられるのは、海の生き物の保全にあるだろう。くくるは、水族館の運営という形で海の生き物を守る道を選んだ。一方、もう1人のヒロイン・宮沢風花(CV.逢田梨香子)は、海の生き物を直接的に保全するために海外研修する道を選んだ。
これらのエピソードを描くことによって、”海の生き物を守る”という一種の着地がされたように思える。
しかし、やはりそれだとインパクトに欠ける。アニメ制作を描いた『SHIROBAKO』のように、夢にチャレンジすることの素晴らしさを強く感じるわけではないからだ。
“海の生き物を守る”というメッセージ性はとても素晴らしい。しかし、メッセージを伝えるためにはインパクトが必要だ。『白い砂のアクアトープ』にはクライマックスのインパクトが足りなかった。海の生き物を交えた粋な演出があれば良かったかもしれない。
『白い砂のアクアトープ』の評価
作画 | 85点 |
世界観・設定 | 80点 |
ストーリー | 75点 |
演出 | 80点 |
キャラ | 75点 |
音楽 | 77点 |
作画
作画はとても良かった。P.A.WORKSの強みが最大限発揮されている。海の生き物たちの動きもリアルだ。
世界観・設定
水族館をテーマにしたのが良い。実態もよく描けていると思う。海の生き物の保全に話を広げたのも良かった。
ストーリー
1話ごとの展開はいい。だが、長期的なストーリーの着地点が見えなかった。物語としてインパクトにかけたのは否めない。
演出
海の動物たちの様子が、見ていてとても癒される。女の子キャラの雰囲気も良かった。
キャラ
P.A.WORKSの強みでもある群像劇っぷりが最大限発揮されていた。どこにでもいそうな顔なのに印象に残る不思議さがある。
音楽
楽曲はとても綺麗で、印象に残る。特に後半クールのOP『とめどない潮騒に僕たちは何を歌うだろうか』はめちゃくちゃ良い。イントロで鳥肌が立った。
さいごに
『白い砂のアクアトープ』のような作品は、P.A.WORKSにしか作れない。そう思わせるクオリティだった。インパクトがないというのは、”大衆向けに作っていない”と捉えることも可能だ。そして大衆向けでないからこそP.A.WORKSの独特のクリエイティビティが最大限発揮される。これがP.A.WORKS作品の面白さだ。
P.A.WORKSのアニメには引き続き注目したいと思う。