今回は『怪 〜ayakashi〜』について語っていく。
『怪 〜ayakashi〜』はフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」の第3作目で、日本古来の怪談を現代風にアニメ化した作品となっている。
2006年冬クールに放送され、アニメ制作は東映アニメーションが担当した。
『怪 〜ayakashi〜』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 85点 |
世界観・設定・企画 | 83点 |
ストーリー | 83点 |
演出 | 83点 |
キャラ | 80点 |
音楽 | 80点 |
作画
各ストーリーでクリエイターが異なるため、作画も全然違う。特に『化猫』に関しては圧倒的で、和紙風に加工された映像、カット割りが秀逸だった。
全体的に、2006年制作の割にはクオリティは低くない。もちろん『化猫』のクオリティはお化け。
世界観・設定・企画
日本古来の会談を現代風にリメイクしている。なんだかんだで、ホラー系の作品はアニメで少ない。だから、新鮮な気持ちで本作を楽しめた。
個人的には『四谷怪談』のメタ的な視点の怪談が好きだ。
ストーリー
ストーリーが普通に面白い。どんな結末が待ち受けているのかがとても気になる構成になっている。オムニバス形式なので、サクッと楽しめるのもいい。
演出
『四谷怪談』と『化猫』の演出は秀逸だと思う。
『四谷怪談』は実写映像も盛り込むことで、視聴者を怪談の中に引き込む演出がされていた。
『化猫』は、もう全体として素晴らしく、あの独特のテンポ感とか、漫画的な表現の組み込み方は、簡単に真似できるものではない。
キャラ
『化猫』になった途端に一気にキャラデザが漫画的になるのがおもしろい。クールだった。
全体的に、人間の「欲深さ」が描かれていて、日本の怪談はシェイクスピアで言うところの「悲劇」みたいなものなのだと思う。
音楽
OPの『HEAT ISLAND』は、まるで『サムライチャンプルー』を意識したかのような曲。日本的なサウンドを使いながら、ビートを刻んでいる感じ。
EDの『春のかたみ』は、がっつり日本的な曲で、なんとユーミンが作詞作曲。たしかに歌詞はよかった。
『怪 〜ayakashi〜』の感想
※ネタバレ注意!
3作品の共通点は?
本作は『四谷怪談』『天守物語』『化猫』の3つのストーリーを描いたオムニバス形式の作品だ。
この3作品はいずれも「怪談」であるが、ストーリーや世界観の毛色は異なる。特に『化猫』の雰囲気は別格だった。
そんな3作品だが、共通点を挙げるとするなら、やはり「人間の欲」を描いている点に尽きるだろう。
『四谷怪談』も『天守物語』も『化猫』も、いずれも「愛」を描いているのは間違いなく、ただし道理を外れ過ぎてしまったが故に、悲劇的な結末を迎えることになった。
先ほども述べたが、怪談というのは、ただ人間を怖がらせるエンタメなのではなく、反面教師的な役割があるのかもしれない。本作は、いずれのストーリーも理不尽というわけではなく、ある程度は納得できる展開だった。
少なくとも僕は『怪 〜ayakashi〜』を見て、愛とか環境に呑まれないようにしようと思った。
『化猫』の圧倒的な表現力
『天守物語』は、作画のクオリティに関しては特別優れているわけではなく、2006年制作という点で、良くも悪くも妥当なクオリティだった(ストーリーはおもしろい)。
『四谷怪談』は、演出とストーリーの親和性が高く、実写映像を差し込む演出が、視聴者を怪談の中に引きずり込んだ。
そして何と言っても『化猫』だが、これはおもしろい。一見すると、和紙テイストの作画が目立つが、おそらくこの演出自体はそこまで難しくない。映像を作った後に、和紙風に加工すればいいからだ。
それよりも、手描きアニメと3DCGの一体感が絶妙なのである。手描きとCGの間に生まれる違和感を和紙で誤魔化しているのだ。
実際に『化猫』は、3DCGの背景を利用していると思われるカメラワークが散見された。「背景を動かす」という演出は、手描きよりも3DCGの方がやりやすい。それを和紙風に加工することで、3DCGの違和感を無くし、映像全体の一体感を高めることに成功している。
それに加えて、カット割りや会話のテンポ感が絶妙で、どんどん作品に引き込まれる。ストーリーもおもしろい。
『化猫』だけ高視聴率を獲得したようだが、納得である。
さいごに
『化猫』だけ5%以上の視聴率を獲得したとのことで、続編として『モノノ怪』が制作された。こちらも早速視聴しようと思う。