【文豪ストレイドッグス3期感想】「死」は「生」の反対ではない

文豪ストレイドッグス

今回は『文豪ストレイドッグス 第3シーズン(以下、文スト3期)』について語っていく。

『文スト』は『ヤングエース』で連載されている漫画が原作だ。2016年からアニメが放送され、2018年3月には『映画文スト』が上映。そして2019年春クールに『文スト3期』が放送された。

アニメ制作はボンズが担当している。

目次

『文スト3期』の評価

※ネタバレ注意!

作画75点
世界観・設定75点
ストーリー70点
演出75点
キャラ80点
音楽75点
※個人的な評価です

作画

作画は普通。2016年に放送された『文スト1期』に比べると、良い意味でも悪い意味でも作画のレベルがほとんど変わっていない。「作画が安定している」と読み取ることもできるけど、「作画が進化していない」と読み取ることもできる。

世界観・設定

ギルドが北米の小説家をモチーフにしたのに対し、今回登場した「死の家の鼠」はロシアの小説家がモチーフになっている。そう考えると、次はヨーロッパの小説家がモチーフになるのだろうか。

ストーリー

ストーリーの質は悪くはないのだけれど、ラストで中島敦と芥川龍之介の2人が締めるという展開は流石に飽きてきた。もちろん『文スト』の本編が、この2人(+鏡花)の成長を描いているのはわかるけれど、もっと違うキャラが活躍するのを見たい。

それと今回は中原中也が深掘りされたけれど、『文スト』には魅力的なキャラが多いので、いくらでも横展開できるのが良い。

演出

演出は普通。戦闘シーンは、ボンズだからやっぱりクオリティが高い。あと3DCGの使い方も印象的だった。

ただ個人的には岩崎琢の個性的な音楽をもっと活用してもいいんじゃないかなぁとは思う。

キャラ

キャラは流石に魅力的。そしてポートマフィアだけでなく、ギルドのキャラも深掘りされるのか。こうなってくると永遠に横展開できる気がする。笑

音楽

OPとEDは全体的に明るめで、個人的に好きだった。でもさっきも言った通り、岩崎琢の個性的な劇伴を駆使して、もう少し尖らせても良い気がしている。

『文スト3期』の感想

※ネタバレ注意!

太宰治の”死”の捉え方が印象的

『文スト3期』の前半では、太宰治と中原中也の出会いが描かれた。これは原作漫画にはないエピソードらしく、『映画文スト』の入場者特典だった小説「太宰、中也、十五歳」がアニメ化されたということらしい。

そして、そこで登場する太宰治の”死”の捉え方が、実に印象的だった。

表の世界、光の世界では、死は日常から遠ざけられ隠蔽されるのが普通だ。忌まわしいものだからね。

でもマフィアの世界では違う。死は日常の延長線上であり、一部だ。

そして僕は多分、そっちの方が正しいんじゃないかと思う。何故なら、『死ぬ』は『生きる』の反対じゃなく、『生きる』に組み込まれた機能のひとつに過ぎないからだ。

息をし、食事をし、恋をし、死ぬ。

死を間近で観察しなくては、生きることの全体像は掴めない。

『文豪ストレイドッグス』より引用

これはマフィアを正当化する危険な思想だと思うけれど、しかしたしかに「死が日常の延長線上であるべき」という考えは、あながち間違っていないのかもしれない。

僕たちは、いつか死ぬ。そして”死”があるからこそ、生きることに価値が生まれていると考えている人も多いだろう。だが現実として、僕たちの世界(少なくとも先進国)では、死は日常から遠ざけられている。一般的に死は、病院、介護施設、葬祭場のどれかでなければ目の当たりにすることができない。日常から隠蔽されているのだ。

そう考えると、太宰治が常に自殺を試みようとしているのも納得がいく。彼は、存分に”生”を楽しむために、自殺を何度も試みるのだ。『死ぬ』は『生きる』の反対ではなく、『生きる』に組み込まれた機能のひとつに過ぎないのだから。

結局、”殺人”は許されるの?

『文スト』はヨコハマを舞台にしているけれど、このヨコハマを守るために、武装探偵社・ポートマフィア・内務省異能特務化の3つの組織が均衡を保つ三刻構想が生み出されたということらしい。

それで『文スト』は、僕の予想以上に敵キャラが深掘りされる。むしろ、武装探偵社よりもポートマフィアの方が深掘りされてるんじゃないか、という具合にだ。また『文スト3期』からは、ギルドのキャラも深掘りされている。

しかしポートマフィアの連中は、ほぼ確実に誰かしらを殺している。もちろん太宰治や泉鏡花も、相当の人数を殺しているだろう。

だから少し違和感がある。中島敦は芥川龍之介に「人を殺すな」というけれども、しかし実際は太宰治や泉鏡花も凄まじいぐらいに殺人を繰り返したわけで、それが許されるわけではない。

僕は色々な作品を見てきたけれども、人を大量に殺してきたダークヒーローは、どんな理由があるにせよ、必ず最後に報いを受ける。しかし『文スト』には、その”報い”の要素がほぼない。だからなんというか、全体的にちょっと甘い気がするのだ。

そもそも『文スト』は、やはりキャラ人気で勝負している作品だから、主要人物が何人も死なれると困るという側面があるのだろう。でも、この”甘さ”は個人的にあまり好きになれない。

とはいえ、やはりキャラ人気があるのは事実で、実際にそれぞれのキャラは魅力的だ。僕も、モチーフとなった作家の代表作をぜひ角川文庫から読みたいと思う。

さいごに

なんか今回は全体的に批判的な感想記事になってしまったけれど、評価点数を見て分かる通り、アニメ作品としてはちゃんと面白い。ということでもちろん、2023年冬クールにて放送される『文スト4期』も視聴していこうと思う。

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