今回は『変態王子と笑わない猫。(以下、変猫)』について語っていく。
『変猫』はさがら総によるライトノベルが原作だ。そして2013年春クールにTVアニメが放送された。アニメ制作はJ.C.STAFFが担当している。
『変猫』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 80点 |
世界観・設定 | 78点 |
ストーリー | 79点 |
演出 | 78点 |
キャラ | 85点 |
音楽 | 92点 |
作画
作画は地味に良かったのではないだろうか。ラブコメ作品だけれど、かなりの高頻度でぬるぬる動いた。その上、画面構成も巧みだったし、作画崩壊もほとんどなかった。2013年という時期を考えても、良作画だと言えるだろう。
世界観・設定
普通のラブコメ作品だと思っていたけれど、想像以上にファンタジー要素満載だったし、想像以上にミステリー要素も感じられた。猫神の設定の使い方が上手かったことに加え、常にポップでコミカルな雰囲気を作れていたので、気楽に視聴できた。
ストーリー
原作5巻分を全12話でアニメ化しているので、かなり詰め込んでいる。特に序盤なんかは、尺が全然足りていなくて、最初はついていけなかった。その一方で全体的にストーリーは面白かった。
一般的にライトノベルをアニメ化する際は、1巻あたり3話から4話分の尺をかけるのだが、それに比べると『変猫』は非常に詰め込みすぎであることがわかる。しかし、それでも全体的なストーリーは面白く感じられたので、さがら総による原作そのもののストーリーと、脚本家の腕が良かったのだと思う。
演出
演出はそれなりに力が入っていた。メインヒロインの筒隠月子は表情を出せなくなってしまっているので、必然的に動きなどの非言語的な部分で表現する必要がある。その点、『変猫』は非常に可愛らしく月子を演出していたように思える。
キャラ
メインヒロインの月子と小豆梓が極めて強力。そして個人的に、主人公については意外に共感を抱ける。普通、ハーレム系の作品の主人公に共感することはないのだが、横寺陽人に関しては、エロ発言や下ネタを容赦なく実行するので、それで1人の高校生男子として共感が持てるのかも。
音楽
主題歌がバグってる。こういったラノベ原作のラブコメのアニメ作品は「OPとEDのどちらかが名曲」というのはよくある。でも『変猫』は、OPもEDも名曲なのだ。もはや『変猫』の最大の強みと言っても過言ではない。
OPの『Fantastic future』は中毒性が異常。「もう一回、こっち向いて」の中毒性がヤバいし、歌詞ハメで月子と梓がこっち向いてくる。ヤバい。
EDの『Baby Sweet Berry Love』も超が付くほど強力な楽曲だ。一般的にEDの映像は省力化されるケースが多いが『変猫』はEDでもしっかり映像を動かしてきた。
『変猫』の感想
※ネタバレ注意!
小豆梓派?それとも月子派?
『変猫』はキャラクターが強力だ。
おそらく小豆梓か筒隠月子で推しが二分されるのだろう。そしておそらくだが、小豆梓の方が人気のはずだ。梓は典型的なツンデレだが、時を経るたびにデレ要素が強くなり、最終的にはデレ100%になってしまう。これがめちゃくちゃ可愛い。個人的には当初のツン要素満載のSっ気な感じが好きだったが、一方で、ちょっとMっ気も感じさせられるのも好き。
とはいえ、月子も捨てがたい。ポーカーフェイスだし、その影響で声色も平坦なものになっているが、ところどころで陽人にアプローチをガンガン仕掛ける。でも表情が出ないから、中々気持ちを伝えることができていない。というかむしろ、表情が出ないからこそ、ガンガンアプローチを仕掛けられているという側面があるのだろう。そして、その言動がめちゃくちゃに可愛い。
だから普通に、陽人と月子の関係性がどのような結末を迎えるのかが純粋に気になる。
原作ラノベを読みたくなるほどの面白さ
『変猫』はラノベ5巻を全12話に収めているということもあり、明らかに尺が足りないエピソードが多く見受けられた。特に、序盤はかなり問題だ。ちょっと置いてけぼりにされてしまった。
しかし、中盤からの展開は非常に面白く「一体誰が猫神に祈ったのか」というミステリー要素も入っていた。しかも、それなりの時間をかけての伏線回収が実施されていたので、続きがどんどん気になったし、というか普通にストーリーが面白かった。
ラノベ5巻を全12話に収めるというだいぶ無理がある構成なのに、ストーリーが面白かったので、個人的に、原作ラノベがどれくらい面白いかが普通に気になる。それに『変猫』が続編を制作することはもうないだろうから、結末を知るには、原作ラノベを読むしかない。
ということで多分、僕は『変猫』の原作ラノベを全巻購入して読むと思う。全13巻というのもボリュームとしてはちょうどいい。
さいごに
久しぶりに、ごく一般的なラブコメに「おもしろい!」という感想を抱けた。『俺ガイル』や『弱キャラ友崎くん』みたいにちょっと自己啓発が入っている感じではなく、100%エンタメとしてのラブコメ。そういったジャンルの中で『変猫』はかなりいい作品だ。
そして個人的には、主題歌のパワーが強かったと感じる。田村ゆかりの『Fantastic future』と小倉唯の『Baby Sweet Berry Love』はどっちも中毒性がヤバい。これだけで『変猫』を見る価値がある。
知的好奇心をくすぐるような演出や表現はないけれど、エンタメとしては十分すぎるぐらいに面白い。それが『変猫』の魅力であり、ひいてはライトノベル系のラブコメの魅力なのだ。