今回は『僕のヒーローアカデミア TVアニメ6期(以下、ヒロアカ6期)』について語っていく。
『ヒロアカ6期』は堀越耕平の漫画が原作で、2022年秋クールから2023年冬クールまで放送された。アニメ制作はボンズが担当した。
『ヒロアカ6期』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 87点 |
世界観・設定・企画 | 88点 |
ストーリー | 85点 |
演出 | 85点 |
キャラ | 88点 |
音楽 | 80点 |
作画
TVアニメ5期の迫力が薄い分、今回のTVアニメ6期はめちゃくちゃ気合いが入っていた。特に、死柄木弔が復活したシーンから、全体的な作画のクオリティが上がってくる。一方で、いわゆる「神作画」と呼ばれるものは登場しておらず、これは最後の最後のとっておきということかもしれない。それとも、ただ単に目が肥えただけか。
世界観・設定・企画
ヴィランの絡め方がとても上手い。トガヒミコの件では「ヒーローの本質」みたいなものが深掘りされ、荼毘の件では「家族の在り方」を描いているように思う。ヴィラン連合とヒーローたちは戦うしかないのだが、その中で一部のヒーローはヴィラン連合を救おうとしている。とても深い作品になってきた。
ストーリー
前半はヒーロー全員出勤編で、後半は「黒いヒーロー」編が描かれる。前半は、とにかく怒涛の群像劇が描かれていて、ずっとワクワクしてしまった。
そして後半が、おそらく『僕のヒーローアカデミア』でもっともやりたいことの1つで、お茶子のあの演説は、デクだけじゃなくて全ての勇敢なヒーローを救ったと思う。
演出
とにかく全体的に絶望感がMAXで、それを表現するためにあらゆる手段が用いられていた。ずっと雨が降っていることから、色彩も薄く、全体として線が濃くなった。
あと、パート間のキャラ紹介をアップグレードしたのは地味だけど良かったと思う。
キャラ
色々なキャラが活躍したから全部は追えないけど、やはり気になるのはヴィラン連合だ。あれだけエピソードを深掘りされると、視聴者も段々とヴィラン連合に共感してしまう。デクやお茶子が抱えている「ヴィランだけど救いたい!」という葛藤を追体験できる。はたして究極のヒーローになれるのだろうか?
音楽
前半クールOPの『ぼくらの』は、ヴィランとヒーローの違いみたいなものが、よく歌詞に落とし込まれている。後半クールOPの『誰我為』は、凛として時雨らしい楽曲に仕上がっている。
EDは、あまり印象に残っていない。
『ヒロアカ6期』の感想
※ネタバレ注意!
ヴィランも救える究極のヒーローになれるのか?
『ヒロアカ』という作品が誕生した時点で、いつかこの領域について取り扱うと思っていた。真のヒーローとは、極めて利他的な人間のことで、その典型例がデクやオールマイトだ。爆豪いわく、この2人は自分のことを勘定に入れない。だから、狂ってるレベルで人を救うことができる。
一方でヴィランは、基本的には利己的な人間で、自分のやりたいことをやるために、どんな手段でも使う。ときには、それが社会を壊すことになっても……だ。特に死柄木弔に関しては「壊す」ということがやりがいだから最悪である。究極のヴィランと言っても過言ではない。
では、真のヒーローは、このような究極のヴィランも救わなければならないのだろうか。これは、とても難しい問題である。
しかしTVアニメ5期で描かれたエピソードでは、ヒーローとヴィランの違いが、境遇や環境であることが示唆された。デクと死柄木弔の違いは、人格者に出会えたかどうかに過ぎなかったのである。同じくトガヒミコも、トガヒミコ自身が悪意を持っていないのだから、なんだかしょうがない気がしてくる。
そう考えれば、やはり真のヒーローは死柄木弔やトガヒミコを救い出すべきだ。もちろん、AFOのように救い用のないやつはいる。でも、思想としては、やっぱりヴィランも救助の対象になってしまうのだ。
お茶子の演説は全てのヒーローを救う
しかしそうなってくると、真のヒーローにはとてつもない負担がのしかかることになる。本当の意味で社会を救うわけだが、これは狂人極まりなく、到底理解されるようなものじゃない。
その結果、デクは一回闇堕ちしたし、エンデヴァーもおかしくなった。たしかに真のヒーローは、あらゆるものを救うのかもしれないが、では誰が真のヒーローを救ってあげることができるのだろう?
そのアンサーが、お茶子の主張だった。
お茶子が校舎の屋上から主張するシーンは、まさにタイトル通り「未成年の主張」のパロディだと思うけど、それにしても感動的で、しかもお茶子にしかできないことだったと思う。
ヒーローのエネルギーの源は、人々の応援だとお茶子は説いた。あの破滅的な世界では、むしろ人々がヒーローの敵になっていて、何にも良くならなかった。それは十中八九でSNSの誹謗中傷がメタファーになっていると思うが、やっぱり世界を良くするのは「応援」なのだろう。
それに加えて、ヒーローのエネルギーの源は友情愛と家族愛にもある。デクは仲間に救われ、エンデヴァーは家族に救われた。
誰も置いていかない究極の領域へ踏み出そうとする。『ヒロアカ6期』は、そんな物語だった。
さいごに
なんだか素晴らしい作品になってきた。『ヒロアカ』は、その世界観を持ってして、とても大きなテーマを取り扱おうとしている。それでいてエンタメとしても優れているのだから、そりゃあ売れるに決まってるじゃないか。
ということで引き続き『ヒロアカ』を追いかけていこうと思う。