【火の鳥 エデンの花感想】ロミとコムの判断は間違っていた?

火の鳥 エデンの花

今回は『火の鳥 エデンの花』について語っていく。

本記事を書いていて知ったが『火の鳥 エデンの花』は、Disney+で配信されている『火の鳥 エデンの宙』の別エンディング版らしい。てっきり劇場編集版だと思っていた……。

そして『火の鳥』は、紛れもなく手塚治虫の漫画が原作だ。そして『火の鳥』の『望郷編』をアニメ化したのが本作で、アニメ制作はSTUDIO 4°Cが担当した。

目次

『火の鳥 エデンの花』の評価

※ネタバレ注意!

作画90点
世界観・設定89点
ストーリー88点
演出85点
キャラ83点
音楽80点
※個人的な評価です

作画

高水準のクオリティで定評のあるSTUDIO 4°Cだが、今回の『火の鳥 エデンの花』も例外ではない。キャラクターの描き方は王道中の王道で、純粋のクオリティが高い。また、美術背景のクオリティが非常に高く、あれだけ奇想天外の世界観をしっかり再現できているのが素晴らしい。特に地球の描き方が印象的だった。作り込みが凄まじい。

世界観・設定

『火の鳥 エデンの花』は人類が宇宙に飛び立つことが当たり前になっている未来が舞台となっている。その中で登場人物は「故郷」を強く求める。のだが、実際は”人類が自らの故郷を滅ぼしている”という皮肉がたっぷり描かれていて、色々なことを考えさせられた。90分ほどの尺であまりにも壮大すぎる世界観となっていて、視聴後の余韻が凄まじかった。

ストーリー

意外にも、ストーリーはサクサク進むというか、場面転換が非常に多い。また、エピソードごとに視点も変わる。基本はロミだけど、ロミが眠っている間はカインやコムが奮闘する。このように、サクサク場面転換するし、その度に主人公も変わってくるので、なんだかんだで現代的なストーリー構成になっている。

演出

ストーリー自体は残酷なのだけれど、絵柄が非常に漫画的で、グロテスクなシーンもほとんどなく、しかしそれが逆に不気味さを生み出しているように思える。

あと、声が非常に良かった。今回は芸能人を何人か起用しているけれど、演技は普通に良かったと思う。

キャラ

とにかく『火の鳥 エデンの花』を見ていると「人間は愚かだな……」と思ってしまう。一見するとズダーバンが完全悪というか人間の欲望の塊のように思える。でも、実際に地球やエデン17を壊滅へと導いたのは、ロミやコムの判断ミスという解釈もできてしまう。

音楽

作品自体が壮大なこともあり、音楽も非常に壮大なものになっている。主題歌の『永遠の絆』もかなり良かった。

『火の鳥 エデンの花』の感想

※ネタバレ注意!

知的生命体の帰属意識

現在、誰もが世界各国に飛べる時代になっていることもあり、一般的には「日本人」や「アメリカ人」というように、国ごとで分類されることがほとんどだ。そして僕は紛れもなく日本人で、仮に今後、アメリカに住むようになったとしても、それでも根本的な部分はおそらく日本人なのである。それは、僕が日本で生まれ、幼少期を日本で育ったからで、だから基本的な考え方が日本的で、つまりは日本に帰属意識を持っているということなのである。

じゃあそれをグローバル規模ではなく宇宙規模に広げて考えてみたときに、僕たちは日本人というよりは「地球人」と呼ぶようになるのだと思う。だから宇宙に簡単に飛び立てる時代が訪れたとき、そして『火の鳥 エデンの花』のように”地球移民2世”が当たり前になった世界では、星ごとで分類されることになるのだと思う。

ロミはやっぱり地球人で、コムはやっぱりエデン17が故郷なのである。

知的生命体の帰属意識は、あながちバカにできない。なぜなら、その帰属している組織によって、ルールや根本的な考え方が異なるからだ。日本国憲法における”人権”とは、キリスト教の考え方がベースになっているのは言うまでもない。一方で、”人権”という考え方があまり通用しないイスラム教特有の考え方もある。日本人の僕がどれだけ世界中を飛び回ろうと、一夫多妻制を認めない日本に帰属意識を抱いている限り、僕は不倫問題に頭を悩ませるのだ。

『火の鳥 エデンの花』で言えば、やっぱりロミは地球人で、エデン17に多数存在する”地球人とムーピーの混血種”とは違うから、ずっと孤独に感じていた。これがもし、エデン17に存在しているのが地球人だったら、多分、ロミはそこまで寂しくなかったと思う。

人類は愚か

『火の鳥 エデンの花』は現代社会に刺さる内容となっている。『火の鳥 エデンの花』を見ていれば、まず間違いなく”環境破壊”や”戦争”を思い浮かべることになるだろう。

僕が『火の鳥 エデンの花』を見ていて衝撃的だったのは、極めて善意のあるキャラだと言えるロミやコムが、故郷を滅ぼしているかのように見えたことである。

例えばエデン17は、コムがズダーバンにエデン17の位置を教えたことがきっかけとなって崩壊した。なぜコムがエデン17の位置をズダーバンに教えたのかというと、それはロミを助けたかったからだ。これは立派な人助けだが、見方を変えると「ロミ1人を救うために星1つを売っぱらった」という自己中心的な考えのようにも見えてくる。

ロミも立派な人間のように思えるが、自分だけの判断でカインを独りぼっちにしたり何としてでも地球に帰ろうとしたり欲張ってヘブン島に帰ろうとしたりする。その結果、カインはロミに会えないまま寿命を迎え、エデン17も滅び、挙句の果てにヘブン島も綺麗さっぱり消え去った。

ここから得られる教訓は、自分自身が正しいと思える判断をしたとしても、それが結果的に何かしらの”悲劇”につながる可能性があるということである。物語的に言えば、ロミやコムの判断は間違っていないし、むしろ美しい判断だと思う。だが皮肉なことに、故郷に帰りたがっていたロミとコムは、自らの判断のせいで、結果的に故郷を滅ぼしてしまったのだ。

実に残酷だが、ここから得られる学びは非常に多い。今の時代で『火の鳥』の『望郷編』をアニメ化した意義は大きいだろう。

さいごに

本当は『火の鳥』の原作漫画を全部読んでから『火の鳥 エデンの花』を視聴しようと思っていた。でも、色々調べてみると『火の鳥』は各エピソードで独立しているようなので、特にあらかじめ予習する必要がなさそうだった。ということで『火の鳥』の事前情報を一切入れずに『火の鳥 エデンの花』を視聴した。

そして、近いうちに『火の鳥』の原作漫画を全部読みたいと思っている。

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