【ヒロアカ1期感想】画一性より個性を重要視する教育システム

ヒロアカ1期

今回は『僕のヒーローアカデミア(以下、ヒロアカ1期)』について語っていく。

『ヒロアカ』は堀越耕平の漫画(週刊少年ジャンプ)が原作で、2016年春クールにTVアニメ1期が放送される。

アニメ制作はボンズが担当した。

目次

『ヒロアカ1期』の評価

※ネタバレ注意!

作画82点
世界観・設定・企画85点
ストーリー85点
演出83点
キャラ85点
音楽75点
※個人的な評価です

作画

作画は、思っていたよりも平凡だった。ストーリー的に、まだ盛り上がりがピークに達しているわけじゃないからだと思う。ボンズに割には、作画は比較的普通。とはいえ、相対的に見て作画のクオリティは高く、戦闘シーンだけでなく、日常シーンでの作画も気合が入っていた。

世界観・設定・企画

『ヒロアカ1期』の最大の魅力と言っても過言ではないのが世界観だ。現代社会の教育システムに対する風刺のような世界観でありながら、アメコミ風のエンタメ作品として仕上がっている。週刊少年ジャンプの企画力が素晴らしい。そして、そんな『ヒロアカ』をボンズが制作するというのも、また素晴らしい。

ストーリー

原作コミックス3巻のUSJ襲撃事件までが描かれた。漫画3巻分に対して1クールだから、尺はかなり余裕がある。実際、デクが入学するまでのエピソードが、かなりたっぷり描かれた印象を受ける。

演出

原作漫画のアメコミ風なタッチの絵柄を、ちゃんとアニメーションに落とし込んでいる。アメコミ風な演出もたくさんあるし、背景とのバランス感覚、戦闘シーンの迫力の出し方など、ボンズの技術力がちゃんと投下されている。一方で、ボンズらしい演出は、あまり見られなかった。それと、最近のアニメでありがちなエフェクトを用いた演出も『ヒロアカ1期』では抑えめだ。

キャラ

「個性」をテーマにしているだけあって『ヒロアカ1期』のキャラの個性の強さは抜群だ。全13話の中で、30人以上のキャラが登場したけれど、その全員が超個性的で、普通に顔を覚えられた。

音楽

OPの『THE DAY』はポルノグラフィティ、EDの『HEROES』はBrian the Sunということで、J-POPアーティストをがっつり起用している。とはいえ、全体的に音楽は特に印象に残っていない。

『ヒロアカ1期』の感想

※ネタバレ注意!

大人になってから見るとまた違う

僕が中学生のときに『ヒロアカ』の連載がスタートし、高校生のときには『ONE PIECE』や『NARUTO』に次ぐジャンプ作品になっていたように思う。もちろん、当時から『ヒロアカ』を読んではいて、エンタメ作品として普通におもしろかった記憶がある

時は流れ、大人になってからアニメをたくさん見るようになった僕は、『ヒロアカ』のストーリーをすっかり忘れてしまったので、TVアニメを最初から見ることにした。そもそもボンズがアニメ制作を担当しているという時点で「絶対視聴!」は間違い無いのだけど、それにしても『ヒロアカ1期』は、なんだかんだで社会風刺の強い作品のように思う。

2010年代に入り、誰もがSNSを利用し、AIの実用性も現実味を帯び始めたころから「個性の時代」が意識されるようになった。僕たち若者は、デジタル社会上で「個性を育むこと」を激しく強要される。

一方で、現代日本の社会システムは、とてもじゃないが、個性を育てられるような環境になっていない。個性よりも、画一性が求められる。社会全体(とは言ってもネット社会に限る)が「個性」「多様性」とか言っているのに、肝心の社会システム(とりわけ教育システム)が、子どもたちの個性を育める環境になっていない。

こんな言説が広まるようになった裏側で、一躍人気を集めるようになったのが『ヒロアカ』という作品だった。特に『ヒロアカ1期』の場合、世界観の説明がエピソードの中心に据えられていたこともあり、なおさら社会風刺を強く感じさせられた。『ヒロアカ1期』の世界では、とにかく個性が重要視される。そして、緑谷出久という「後天的に個性を取得できるキャラ」を主人公に据えることで、努力次第で強烈な個性を手に入れられることが示唆されているのもジャンプ作品らしいなぁと思う。

「環境を変えたいなぁ」と漠然と思った

『ヒロアカ1期』では、主人公の緑谷出久が雄英高校に入学するまでの過程と、入学してすぐのエピソードが描かれた。雄英高校は日本最先端のヒーロー学校で、強烈な個性を持つヒーロー志望の高校生が集まる。最高にヒーロー向きの個性を持つ爆豪勝己も、雄英高校に集まる生徒たちの個性の強さに衝撃を受けていたのが印象的だった。緑谷出久と爆豪勝己は、日本最先端のヒーロー学校である雄英高校で磨かれて、どんどん強くなっていくに違いない。

結局のところ、何かを変えたいのであれば、または何かを目指すのであれば、それ相応の環境に飛び込むのが一番なのだ。『ヒロアカ』において、ヒーローを目指すのであれば、雄英高校が第一候補になるだろう。フランス料理を極めたいのであればフランスに赴くべきだし、暗号通貨について知りたいならスイスのツークに赴くべきだ。そしてアニメ制作に興味があるなら、それこそ東京に一度は赴くべきだろう。

このようにして、厳しい環境に身を置くことは、何かを成し遂げるために重要なことなのかもしれない。

参考までに、僕は現在、横浜にある実家に滞在している。正直、ぬるま湯である。お金をたくさん稼ぐ必要はないし、近所に知り合いがたくさんいる。でも、多分これじゃダメなんだと思う。もっと厳しい環境に身を置かなくてはならない。具体的には、ヒトとカネとモノが集まる東京都心部、逆に都心から距離の離れている南の島、そして日本語が全く通用しない異国の地が挙げられる。こういうところに身を置かないと、いつまで経っても劇的な成長を遂げることができないんだと思う。

そういう意味で『ヒロアカ』は、アニメ(漫画)のくせに全く現実逃避的じゃなく、むしろ、視聴者をより良い方向に導く素晴らしい作品のように思える。NYタイムズのベストTV部門に選出されたのも納得だ。

さいごに

『ヒロアカ』はTVアニメ6期まで放送されていて、2024年からはTVアニメ7期も放送される。『ヒロアカ』の世界観であれば、色々とやれることがあるはずで、特に「ヒーロー」という点に関しては、ヴィランと対比させながら、色々と描いていくはずである。

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