【ほしのこえ感想】クリエイターとしての新海誠の凄さがわかるアニメ作品

ほしのこえ
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『ほしのこえ』について語っていく。

『ほしのこえ』は新海誠監督の短編アニメーション映画で2002年に公開された。

2002年という時代でフルデジタルアニメーション作品であり、その制作のほとんどを新海誠一人で進めたことが話題になった。新海誠の原点とも呼べる作品かもしれない。

目次

『ほしのこえ』の評価

※ネタバレ注意!

作画80点
世界観・設定70点
ストーリー70点
演出70点
キャラ50点
音楽75点
※個人的な評価です

作画

キャラクターの動きに関しては正直かなり微妙だ。キャラクターデザインも微妙だった。その代わりに美術背景が素晴らしい点に注目したい。美術背景のクオリティの高さに関して言えば、2000年代前半に誕生した作品の中でもトップレベルだろう。また、CGを用いた戦闘シーンも良かった。これらを全て一人で制作したのだというから驚きだ。

世界観・設定

2046年を舞台にしたSF設定。でも正直なところ、SFの実現性に関しては非常に低い。今となって振り返ってみれば、2046年でもガラケーなわけがないだろう。

ただし、携帯電話のやり取りを宇宙規模に広げる着想は面白い。そしてそれを男女の関係性に繋げるのが、なんとも新海誠らしい。

ストーリー

30分弱の尺の中ではかなりまとまっている。全体的に文学的だからこそ、セリフではなく地の文としてシナリオを展開できるのが大きいと思う。

演出

演出は、まあ普通といったところだろうか。ただし美術背景の使い方が贅沢で、新海誠の強みが最大限活用されていると思う。シナリオとの整合性が取れているのも良い。

キャラ

やっぱりキャラクターデザインがなんとも言えない。キャラの動きが悪いのはしょうがないけれども、キャラクターデザインに関しては「もう少し画力が高ければもっと良い作品になるのに……」と思ってしまう。

音楽

新海誠作品の中でもギャルゲーの印象が強い音楽だったと思う。そもそも新海誠も、音楽を担当している天門も元々はゲーム業界出身なわけだから当たり前か。それに2000年代前半はギャルゲー全盛期だったというのもあると思う。

『ほしのこえ』の感想

やはり注目すべきは制作スタイル

ストーリーや世界観に関しては正直なところ魅力を感じなかったけれども、それよりも制作スタイルの方に非常に強い興味がある。

Wikipedia先生によれば、この『ほしのこえ』という作品は新海誠が自宅に引きこもって制作したアニメーション映画だという。制作環境はPower Mac G4 400MHzで、使用したソフトはPhotoshop、AffterEffects、LightWaveなど。そして音楽と声以外の全ての制作パートを新海誠一人がやり切った。

従来のアニメ制作は(というか現代も)、大人数が携わるものだと認識されていた。そんな中、新海誠は2002年の段階で個人によるアニメ制作を確立させたのだ。

新海誠も今となっては大人数で高品質のアニメ映画を制作しているけれども、その下支えになっているのはやはり「新海誠一人が全てのパートをやり切る」という部分だ。新海誠作品の大半は、新海誠が原作・脚本・監督を担当し、美術背景・撮影・編集も新海誠が仕切ることが多い。新海誠が外注している部分というと、キャラの作画と音楽ぐらいではないだろうか。

これは多くのアニメーター及びクリエイターが注目すべきことだ。分業制ではなく、全ての業務に手を出せるクリエイターが現代のクリエイティブに求められているように思う。そして新海誠作品の中でも、新海誠の凄さがもっともわかる作品が『ほしのこえ』だ。だからクリエイターは、『ほしのこえ』を絶対に視聴するべきだと思うし、僕は今後『ほしのこえ』を周囲のクリエイターの方々に勧めていくつもりだ。

さいごに

『ほしのこえ』は全クリエイターが視聴すべき作品だ。個人でアニメを制作するという偉業をコンピューターが普及して間もない2002年の段階で成し遂げたのが新海誠の凄さの根幹部分である。

そして今後はテクノロジーの進化によって、高品質のアニメを個人で制作できる時代がやってくるだろう。その際に求められるのは、全ての業務を手がけることができるアニメーター(クリエイター)だ。特に個人的には、音楽制作もできるアニメーターのポテンシャルを感じる。これまで、原作・脚本・美術・作画などを兼任できるアニメ監督は何人もいたけれど、音楽の大部分まで兼任できるアニメ監督は存在しなかった。もし次の革命を起こすアニメ監督が誰かと言われれば、それは音楽制作もできるアニメーターだろう。

もしこの記事を読んでいただけたアニメーターがいるとするならば、ぜひとも音楽制作にもチャレンジしてみてほしい。

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