今回は『星屑テレパス』について語っていく。
『星屑テレパス』は大熊らすこによる4コマ漫画(まんがタイムきらら)が原作で、2023年秋クールにTVアニメ1期が放送された。
アニメ制作はStudio五組が担当している。
『星屑テレパス』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 80点 |
世界観・設定 | 70点 |
ストーリー | 70点 |
演出 | 70点 |
キャラ | 70点 |
音楽 | 73点 |
作画
Studio五組らしい「ド・安定」の作画だった。実のところ、キャラはそこまで動いていないように見える。だがその一方で、質感に工夫がみられて、結果的に見栄えのいい作画になっている。画のバランス感覚がよかった。
監督のかおりさんは、『五等分の花嫁2期』や『ゆゆ式』の監督を務めていた経歴がある。たしかに、キャラの作り方が少し似ているかも。
世界観・設定
『きらら』特有の「〇〇×JK」ということで、今回の『星屑テレパス』は「ロケット×JK」だ。近年はSpaceXなどのロケット開発企業が注目を集めていることから、タイミングとしては、今がドンピシャ。
とはいえ、流石にJKが本格的なロケットを開発できるわけがない。そこで『星屑テレパス』ではモデルロケットの開発が描かれる。これが中々ニッチでおもしろい。
ストーリー
きらら系とは思えないほどシリアス要素たっぷりなストーリー。主人公が超陰キャなのは『ぼっち・ざ・ろっく!』と同じ。ストーリーの展開としては、主人公を含めたメインキャラ4人が、自分の居場所を追い求めていく流れとなっている。ただ「日常→シリアス要素」の流れがちょっと安易な気がした。
演出
先ほども述べた通り、全体的に画の統一感があり、演出も例外ではない。ギャグの演出も全然しつこくなく、ちょうどいい塩梅だった。最終話と同じレベルの演出が全12話ずっと続いたらよかったけど、それは流石に予算オーバーか。
キャラ
ビジュアル面では、主人公の小ノ星海果がこれまでにあまりみられない雰囲気だけれど、他のメインキャラ3人は割と典型的。やはりきらら系ということで、キャラはかなりいい感じだ。
個人的には宝木遥乃か雷門瞬が好きかなぁ。
音楽
OPの『点と線』は、どこかKeyぽっさを感じる。デジタルサウンドをベースに編曲されていた。ちなみに『点と線』は、アニサマ2023で生で聴けている。
EDの『天体図』も中々にいい。編曲をパソコン音楽クラブが担当ということで、こちらも電子音がベースになったサウンドアレンジ。イントロが印象的だ。
『星屑テレパス』の感想
※ネタバレ注意!
“きらら系”のヒットの法則って何?
おそらく『星屑テレパス』がヒットすることはないだろう。最近だと『RPG不動産』や『スローループ』が不発に終わっているけれど、その一方で『ごちうさ』や『ゆるキャン△』は安定していて、何よりも『ぼっち・ざ・ろっく!』は絶大な人気を獲得することに成功した。
『星屑テレパス』に関しては、特別、クオリティが低いというわけではないし、普通におもしろかったと思う。だがそれでも、おそらく『星屑テレパス』がヒットすることはない。なぜ「ヒットしない」と言えるかというと、これは直感でしかない。でも、ネット上のリアクションを見る限り、やはり『星屑テレパス』はそこまで注目されていないように思う。
現在、きらら(というより芳文社)は、一体どのような作品がヒットするのかを見定める必要が出てきているように感じられる。結局は「数撃ちゃ当たる」なのだろうけれど、それでも、少しずつ成功確率を高めた方がいいのは間違いない。
『けいおん!』と『ゆるキャン△』と『ぼっち・ざ・ろっく!』は、作品としてのクオリティはもちろんのこと「JK×〇〇」の組み合わせが良かったと思う。特に「JK×キャンプ」は最高でしかない。一方の『星屑テレパス』の「ロケット」というテーマ性も、全然悪くないし、個人的にはそれなりに興味があった領域だったけれど、やはり「ニッチすぎた」ということなのだと思う。
そして何よりも、結局はキャラクターに尽きる。きらら系作品でヒットした作品は、いずれもキャラクターが非常に良かった。しかしだからとはいえ「キャラクターの成功の法則」なんてものは聞いたことがない。仮に成功の法則があるとしても、おそらく、割と早い段階で廃れてしまう。
と、ここまで、さぞ『星屑テレパス』が失敗したように書いてきたけれど、おそらくビジネス的には黒字に持って行けていると思う。なぜならFODが独占配信しているからだ。おそらくFODがそれなりに制作費を出しているので、あとはグッズ収入がぼちぼち出れば、それで黒字にはなりそうである。
ここ最近は、独占配信の使い方で分岐点が生まれているように感じられる。独占配信の契約を結べば、ほぼ確実に制作費を回収できる代わりに、視聴者数が大幅に減ることから、二次収入が見込めない可能性がある。逆に、全動画配信サービスでばら撒けば、多くの視聴者数を獲得できる代わりに、安定した制作費回収が見込めないリスクがある。
どうやら『星屑テレパス』は「確実に制作費を回収できる」という選択肢を取ったようだ。気になるのは製作委員会に参加している企業数が多いことで、どの企業も色々と渋って、確実に制作費を回収できる独占配信の道を選んだのかもしれない。だがそのおかげで『星屑テレパス』が非常に高いレベルでクオリティが安定していたのは間違いなく、僕みたいに「グッズをほどんど購入せずに質の高いアニメだけ見ていたい人」にとっては好都合ではある。FODの出費は痛いけれど。
居場所探しのロケットがテーマ
『星屑テレパス』は、自称宇宙人の明内ユウを宇宙に返すために、主人公の小ノ星海果がロケットを作る、というのが大まかなストーリーだ。だがその一方で、海果は「自分の居場所が地球にないから宇宙に行く」と割と本気で考えていて、それがロケット開発の原動力になっている。という裏ストーリーがある。
つまり『星屑テレパス』は、表面のストーリーがロケット開発で、裏面のストーリーが居場所探し、という見方ができる。これは海果に限らず、宝木遥乃と雷門瞬も例外ではない。特に遥乃みたいな感じの人は、かなりいると思う。人付き合いは上手いけれど、本当に熱くなれる場所がない、みたいな。雷門瞬も中々にいい感じのツンデレキャラだ。
さて、この居場所探しのロケット研究同好会は、『けいおん!』の放課後ティータイムのようにゆるふわには描かれず、終始ギスギスした雰囲気で描かれる。だが、おそらく視聴者はきらら系にシリアス要素を求めておらず、これが大衆受けしない要因となっている気はする。
んでもって、実際にロケットについての解説に関しては「なるほどなー」と思うことがいくつかあった。特に重要なメッセージは「失敗から学ぶ」ということだ。ロケットは、打ち上げてみなければわからない。もう、やるしかないのである。何度もやって何度も失敗して、そこから何度も学んで、ようやく成功に漕ぎ着けることができる。
そう考えると『よりもい』みたいな感じで、やや自己啓発チックな感じでロケット開発のアニメが出てくると、めちゃくちゃおもしろいかもしれない。それも”きらら系”みたいな雰囲気だと最高だ。だが「本格的なロケット開発のアニメ」となると、相当量の取材が必要で、それがネックになっているんだと思う。
さて「失敗から学ぶ」というメッセージに関しては、どうやら『星屑テレパス』は、このメッセージを人間関係に応用しているようである。実際『星屑テレパス』では、海果を中心に、多くの失敗があった。特に、ロケット大会の海果のあがり症は、盛大な失敗である。だが、それでも瞬ちゃんが最後まで映像で残そうとしたりして、色々と失敗して、それで最終的に、4人は自分の居場所を見つけることができた。このメッセージ性は、中々にエモい。
さいごに
『星屑テレパス』は続編制作されるかが微妙だけれど、もし続編が制作されるのであれば、ぜひとも視聴したいと思う。