今回は『ヨルムンガンド(以下、ヨルムンガンド1期』について語っていく。
『ヨルムンガンド』は高橋慶太郎による漫画(月刊サンデージェネックス)が原作で、2012年春クールに『ヨルムンガンド1期』が放送された。
アニメ制作はWHITE FOXが担当している。
『ヨルムンガンド1期』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 79点 |
世界観・設定・企画 | 82点 |
ストーリー | 82点 |
演出 | 80点 |
キャラ | 79点 |
音楽 | 80点 |
作画
WHITE FOXがアニメ制作を担当しているとのことだけれど、作画が特別にいいというわけではない。ただし、作画が崩れることは一切なく、常に高水準で安定している印象を受けた。妥協という妥協も見当たらず、戦闘シーンも十分に見応えがある。
世界観・設定・企画
武器商人がテーマ。Wikipediaをちょっと覗いた感じでは、ミリタリー系作品で情報提供・考証を手掛ける方々が多数参加しているそうなので、かなりリアリティがある。一方で、ファンタジー要素とのバランスもちょうどよく、刺激的な作品に仕上がっている。
ストーリー
一般的に、ライトノベル作品の大半は、3話から6話程度の尺で1つのエピソードの区切りがつく。一方で『ヨルムンガンド』の場合、長くても2話で区切りがつくため、テンポよく視聴することができる。やや説明不足な感じは否めないが、そのデメリットよりも「テンポ感がいい」のメリットが上回っている印象を受ける。
演出
シリアスとコメディのバランス感覚が非常に優れている。全体としてはコメディに寄っているので、なんだかんだで安心して視聴できる。戦闘シーンも見応え抜群で、作画カロリーを高めすぎず、演出で上手く魅せている印象を受ける。
キャラ
キャラの個性が強い。全体的に実力派の声優を起用しているのも大きい。主人公のココの思惑が気になるところだ。
音楽
OPは川田まみの『Borderland』で、これがめちゃくちゃにかっこいい。一方のEDは、やなぎなぎの『Ambivalentidea』で、これが中々に不思議な曲だった。あと、次回予告の劇伴がめちゃくちゃカッコよかったのが印象に残っている。
『ヨルムンガンド1期』の感想
※ネタバレ注意!
めっちゃくちゃおもしろい
『ヨルムンガンド』は、とにかくめちゃくちゃおもしろい。『ヨルムンガンド』は、名前だけは聞いたことがあって、名作量産のWHITE FOXがアニメ制作を担当しているということで、いつか見ようとは思っていた。
それで、2024年3月に開催される『ANIMAX MUSIX SPIRING』でやなぎなぎが登場するということで、僕は、やなぎなぎが主題歌を担当する作品を片っ端から見ることに。これがきっかけで僕は『ヨルムンガンド』を視聴したわけだ。
そしたら、この『ヨルムンガンド』がめちゃくちゃおもしろいのである。まず「武器商人」をテーマにしているのがおもしろい。戦争をテーマにした作品(例えばガンダム)で、武器商人が登場することはあっても、武器商人を主人公にした作品は、そこまで多くない。アニメだと尚更だ。そのうえ『ヨルムンガンド』は、考証もしっかりしているので、リアリティを感じさせられる。世界中の裏を飛び回る武器商人のエピソードは、とても刺激的だ。
そして、1つのエンタメ作品としても非常に優れており、適度なコメディ要素が気持ちよかった。戦闘シーンも爽快だったし、適度にグロいのも深夜アニメにピッタリである。
『ヨルムンガンド』はミリタリー系が好きな人にガッツリおすすめできる名作アニメだ。
「武器」というメディアについて
『ヨルムンガンド』のテーマは”武器”だ。主人公格のヨナは戦争によって両親を失ったことから武器を激しく憎んでいる一方で、武器に頼らなければ生きていけない環境だったことから、自ら武器を手に持って戦い続けてきた。『ヨルムンガンド』に登場する数多くのキャラの中でも、ヨナほど”武器”について理解している人物は、そう多くない。
自分ごとだが、僕はライターとして生活費を稼いでおり、自分で本を出したりしていることから、メディアについて絶賛勉強中である。メディアと言えば、マーシャル・マクルーハンの『メディア論』は外せない。そして本書で紹介されるメディアの1つとして”武器”が登場する。マクルーハンによれば、新聞や映画と同じく、武器もメディアなのだ。
たしかに、武器はメディアだと僕も強く思う。マクルーハンは「メディアはメッセージである」という格言を残しているが、武器も極めて強いメッセージ性を感じる。武器は、言葉が通じないものに対するコミュニケーション手段として、機能する。また、武器とは一般的に”銃”や”ナイフ”のことを指すが、近年においては”言葉”も十分すぎるほどの武器になる。『コードギアス』の「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」は、SNS上での誹謗中傷問題に対して深く切り込んだ名言だ(このセリフの元ネタはレイモンド・チャンドラーの『大いなる眠り』)。
そう考えると、現代社会において”武器”は、かなり身近な存在なのかもしれない。
暴力に関係ない人なんて、いったいどこにいるというのか。手を伸ばせば銃に触れる世界。優しさより信じられるのが、こんなモノとは寂しい限りだ。
『ヨルムンガンド』より引用
人を殺しすぎた人間はある日、ドラゴンに変わるんだ。金で地を踏みしめ権力者で空を飛ぶ怪物。暴力はますます強くなり、人の言葉なんて通じなくなっていく。人はこの世にドラゴンがいることを許せない。自分たちが生んだ怪物だというのに。
『ヨルムンガンド』より引用
さいごに
『ヨルムンガンド』は2012年春クールでTVアニメ1期が放送されたあと、2012年秋クールですぐさまにTVアニメ2期が放送される。こちらも大至急視聴しようと思う。はたして『ヨルムンガンド』とは一体なんなのだろうか?