【かがみの孤城感想】「学校なんて行かなくていい」という言葉の大切さ

かがみの孤城
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『かがみの孤城』について語っていこうと思う。

『かがみの孤城』は辻村深月先生による小説が原作だ。そして2022年12月に劇場アニメが公開される。

アニメ制作はA-1 Pictures。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』などの名作アニメ映画を数多く手がけてきた原恵一が、監督を担当している。

目次

『かがみの孤城』の評価

ネタバレ注意!

作画75点
世界観・設定77点
ストーリー80点
演出80点
キャラ75点
音楽75点
※個人的な評価です

作画

作画のクオリティはまずまず。細かい部分にもしっかり気を遣って、丁寧にキャラを動かしていた。おそらく制作費にそこまで予算が割かれなかったのだと思うけど、その中でしっかり仕事した感じではある。ただし、ピーク時だけフルアニメーションにする必要はなかった気がする。不自然だった。

世界観・設定

世界観は、かなり良い。舞台となっている城の作り込みは少々甘いけれど、予算枠を考えれば十分だろう。それに、ミステリー要素も強かったので、「キャラの裏設定を早く知りたい!」という気持ちになることができた。また、引きこもりや現代の教育観もテーマになっていて、メッセージ性も素晴らしかったと思う。

ストーリー

ストーリーの質は高いと思う。全部で116分という割と長めの尺だけれど、見ていて飽きることがほとんどなかった。原作小説の質が高いというのもあるだろうけど、丁寧にアニメ制作されていたというのが一番の要因だと思う。

演出

演出のクオリティは素晴らしい。先ほど述べた通り、クライマックスのところでフルアニメーションにする演出だけは微妙だったけど、それ以外の演出は完璧。原恵一監督の地力を魅せつけられた。

キャラ

キャラ設定も中々良い。キャラ設定にしっかり裏があって、それがストーリーの質向上に大きくつながっていた。また、なんだかんだで主要人物7人の個性がしっかり分かれている。

また、『かがみの孤城』では声優ではなく俳優が多く起用された。けれども割と自然な演技だったと思う。少なくとも、違和感みたいなものはほとんど感じられなかった。

音楽

楽曲のクオリティはまずまず。ただし、随所でセンスは感じられた。特に狼が襲ってくるシーンの劇伴・音響は、まさに”映画館で見た方がいい出来”だったと思う。

『かがみの孤城』の感想

ネタバレ注意!

予算内で上手くやれる技術

『かがみの孤城』を視聴した時の第一印象は「想像以上に面白そう」だった。実は正直なところ、僕は『かがみの孤城』には期待していなかったのだ。

なぜなら、『かがみの孤城』はプロモーションに多くの費用をかけているのが明確だったため、制作費にそこまで予算が割り当てられていないのではないかと考えたからだ。そして視聴していても、他の大作アニメ映画に比べて、明らかに予算額が少なそうだった。

しかし『かがみの孤城』は、限られたリソースを上手く活用することで、可能な限りクオリティを高めることに成功していた。『かがみの孤城』はストーリーの特性上、キャラが機敏に動くということはない。しかしキャラの細かい動きの部分を丁寧に作り込むことで、作品に対する没入度を高めるように工夫されていた。

また、おそらく絵コンテの段階から演出が作り込まれているのだろう。随所で引き込まれるような演出がいくつも見受けられた。しかもそれらの演出は、そこまでお金がかからなそうなアイデアばかりだった。

これは、アニメ制作会社A-1 Picturesのパフォーマンスはもちろんのこと、監督を務めた原恵一の敏腕が最大の要因だと考えられる。

学校なんて行かなくてもいい

『かがみの孤城』は非常に現代的なストーリー性だった。どこか異世界転生に通ずる部分があるし、ミステリー要素も取り入れられていたので、常に続きが気になる展開だった。エンタメ作品として非常に優れている。

それだけでなく、内容もかなり深い。『かがみの孤城』では不登校の中学生が主要人物だ。それぞれのキャラは、学校で辛い思いをしてしまったがために、不登校になってしまっている。

そして一般的に不登校生徒に対しては「学校に登校すること」が推奨されることが多い。だが、それは不登校生徒にとっては非常に辛いこと。不登校生徒が毎日のように「学校に行くか行かないか」みたいなことを考えていると思うと、本当に毎日が戦いみたいなものなのである。そこでさらに圧力をかけてしまうと、本当に潰れかねない。

『かがみの孤城』では、フリースクールの先生を務める喜多嶋先生や、主人公の母親が「学校なんて行かなくてもいいんだよ」と声をかけてくれる。それは不登校生徒にとって、本当に救われる言葉なのだと思う。

実際、今の学校教育は現代的ではないし、無理して学校に行く必要は全くないと僕は考えている。けれども多くの人(教師や親世代の人々)は、やっぱり「学校は行かなければいけない」と考えていると思うし、「勉強しなければいけない」という固定概念に囚われているとも思う。

『かがみの孤城』は、ぜひとも親世代の方々に見てほしい作品だ。あと、教師の方々にも視聴してほしい作品である。そう考えると、『かがみの孤城』が熱心にプロモーションされているのは実に喜ばしいことだ。しかも、『かがみの孤城』は日本テレビが多額の出資をしているため、金曜ロードショーで放送される可能性が高い。

2022年アニメ映画の最後の最後で、素晴らしい作品に出会うことができた。

さいごに

やはり、アニメ映画は面白い。『かがみの孤城』のように、隠れた名作アニメみたいなものが年に3作品ぐらい出てくる。

『かがみの孤城』は、特別力が入っていたわけではないけれども、予算内で上手くやった作品として真っ先にあげられると思う。ぜひとも、多くの人に視聴してほしい作品だった。

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