2024年8月14日、新宿武蔵野館で『風が吹くとき』を鑑賞した。
本作はイギリスの漫画が原作で、1986年にアニメ映画化。日本では1987年に上映された。
そして2024年、リバイバル上映されるということで、今回、僕は映画館に赴いた。
『風が吹くとき』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 82点 |
世界観・設定・企画 | 80点 |
ストーリー | 83点 |
演出 | 84点 |
キャラ | 78点 |
音楽 | 83点 |
作画
一応フルアニメーションで、テーマがテーマなのでそれなりに予算も投下されているはずだ。
キャラクター自体は、よく動く。また、背景を動かすシーンも見られたし、実写映像もふんだんに用いられた。なんだかんだで飽きない。
世界観・設定・企画
登場人物は、基本的に夫婦の2人だけ。核戦争をテーマにしていて、最終的にはバッドエンドだが、備えの重要性を教えてくれる。核戦争に遭遇するのはキツイが、地震などの災害だったら、ある程度は対策できるのではないかと思う。
ストーリー
前半は「戦争が始まるかもしれない」という危機感を背景に、老夫婦の日常を描いている。後半で核ミサイルが落とされてからは、放射線で徐々に衰弱していく辛い展開が続く。前半の幸せそうな生活があるから、余計に辛い気持ちになる。
演出
1986年上映の英国アニメ映画だが、アニメーションだけでなく、実写映像や写真など、様々なメディアを使って演出を作っていたのが印象的だった。
キャラ
主な登場人物は基本的に老夫婦の2人だけで、しかもどちらも一般的なキャラ。世界観やストーリーが重要な作品なので、キャラはこれぐらいシンプルで充分だと思う。
戦争が起こる直前まで楽観的で、徐々に悲観的になっていくのが妙にリアルだ。ここから学べることは非常に多い。
音楽
イギリスが舞台ということで、ロック曲が多い。でも意外に、作品との世界観にマッチはしている。
『風が吹くとき』の感想
※ネタバレ注意!
備えあれば憂いなし
2024年8月8日、僕は長崎に滞在していたのだが、市内から空港への移動中に、地震が起きた。その日、空港内のテレビには「南海トラフ地震臨時情報」という見慣れない言葉が連呼されていた。
結局、飛行機は3時間遅れ、僕は羽田空港に終電ギリギリの時刻に到着することになった。もし、あの場所でもっと大きな地震があったら、僕は長崎に取り残されていたかもしれない。
そういった背景の中で本作を視聴したので、また違った印象を受けた。
本作は「核戦争」をテーマにした作品だが、伝えたいメッセージは「備えあれば憂いなし」だと思うから、これは地震対策として考えることができる。
主人公のジムは、国際情勢に対する理解はあったものの、核に対する知識が無かった、その結果、誤った判断を繰り返してしまい、どんどん衰弱していく。
同じことは地震でも言えるだろう。地震によって孤立してしまった状況を想定したとき、普段からどのようなアイテムを所持すべきだろうか。ここを考え抜き、実際に持ち歩くようになれば、生存確率を上げることができると思う。
楽観と悲観の使い方
本作は、前半部分の楽観パートと後半部分の悲観パートのギャップが凄まじかった。日々の生活の在り方について、深く考えざるを得ない。
普段から、ある程度悲観的に状況を読み取り、緊急事態にこそ楽観的であるべきではなかろうか。だが、ほとんどの人は、これが真逆になる。
もちろん、悲観的になりすぎても苦しいだけだ。だから、楽観と悲観のバランスを考えなければならない。
地震や戦争に対してずっと怯え続ける必要はないが、やはり準備は必要だろう。準備と言っても、ただアイテムを購入すればいいだけなので、1日あれば終わる。
理想を言えば、住む場所や働く場所を分散すべきなのだろうが、これは多少楽観的に少しずつ進めるしかない。
本作を見ていると、なんだか心が痛くなるというか。別に、この老夫婦が悪い人というわけではなく、むしろめちゃくちゃ良い人そうなのだけど、それが生存できるかどうかに直結するわけではない。ただシンプルに、準備できていたかどうかだけだ。
多分、良い人だけど準備できていない人は、日本に相当数いると思われるから、なおさら心が痛くなる。
少なくとも、まず自分の身を守れるようにして、それから周囲にいる大切な人を守っていけるようにする必要があると思う。
さいごに
『風が吹くとき』は、後世に語り継がれるべき作品で、これは戦争や核ミサイルに限った話ではなく、災害や原子力発電でも同じことが言える。
自分の身を守るには、入念に準備するしかない。今からできることはたくさんあるはずだ。災害は命に関わることなのだから、ここのリスクはしっかりコントロールしていきたいと思った。
風が吹くとき、ゆりかご揺れる
枝が折れるとき、ゆりかご落ちる
赤ちゃん、ゆりかご、もろともに
『マザーグース』より引用