『この美』感想:『俺ガイル』の制作スタッフが贈るギャグセンス

この美
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『この美術部には問題がある!(以下、この美)』について解説していく。

『この美』は、いみぎむるの漫画(電撃マオウ)が原作で、2016年夏クールにTVアニメが放送された。

アニメ制作はfeel.が担当している。

目次

『この美』の評価

※ネタバレ注意!

作画78点
世界観・設定・企画75点
ストーリー80点
演出80点
キャラ80点
音楽82点
※個人的な評価です

作画

『俺ガイル』の制作陣が集結。ということで全体的にキャラクターデザインは安定していて、かつメリハリが効いている。特にギャグシーンの力の入れ方が絶妙で、全体的に楽しく視聴することができた。

世界観・設定・企画

そこまで大きな予算を与えられていないのだろうけど、その予算の中で上手にアニメを作っている印象がある。全体としてコメディ重視なので、安心感もある。

ストーリー

1話の中で複数のエピソードが挿入されている構成。ということでテンポ感がいい。おそらく原作漫画が、1話完結型なのだろう。言われてみれば、新キャラの出し方が漫画的で、それが終始続くので、全体として飽きない。

演出

本作品の最大の魅力は演出だと思う。後にウマ娘を制作することになる及川哲監督の強みであるギャグ演出が光っていた。「間」を活用することで、リソースを削減しながらも笑いを生み出すことに成功している。そしてそのリソースを、たまに見受けられるヌルヌルの作画に用いているので、それがメリハリを生み出している。

キャラ

音速はキャラクターも良い。主人公の宇佐美さんが絶妙に可愛いし、他のキャラクターもなかなかに個性的だ。キャラクターデザインも全体的に非常に安定していて、かつ万人受けである。

音楽

OPは水樹奈々の『STARTING NOW!』で、これが実にいいロックナンバーなのです。映像もメリハリが効いていてよかった。EDは上坂すみれの『恋する図形(cubic futurismo)』で、これも中々に面白い曲だった。

また、劇伴には主題歌を活用したものが用いられていて、音楽会社とアニメ制作がちゃんと連携しているのがわかる。

『この美』の感想

※ネタバレ注意!

『俺ガイル』の制作スタッフが集結

本作は『俺ガイル』の制作スタッフが集結して作られたアニメで、たしかに全体的に『俺ガイル』らしさがある。キャラデザはとても安定していて、かつ可愛らしいし、会話のテンポ感もリアルだ。「間」を活用したメリハリのあるギャグもいい。

そのうえ『この美』は『俺ガイル』ほど捻くれてはいないので、全体的に楽しく視聴できる。

結局、ギャグセンスがいいのだと思う。戦闘シーンはお金が必要だが、ギャグシーンにお金は必要ない。必要なのはセンスだ。特に、時間芸術を用いたギャグは、シュールさを生み出し、それが笑いに繋がる。そのためには、絵コンテ段階でタイムシートを作り込む必要があるので、それなりにおもしろい頭の中をしていないと『この美』みたいな作風にはならないと思う。やはり監督の腕がいいのか?

残念系というジャンル

『俺ガイル』から始まった「残念系」というジャンルは、思えば2010年代のラブコメ及びギャグアニメを支配していたように思う。残念系とは、その名の通り、登場人物が残念な作品を指す。本作品も残念系に該当する。まともなのは主人公くらいで、でもその主人公もチキンなので、そういう意味ではやはり残念である。

それにしても、なぜ残念系は、オタク受けがいいのだろうか。その理由は簡単で、完璧な登場人物よりも弱みのある登場人物の方が、受け入れられるからである。例えば『いちご100%』の西野つかさや、『H2』の古賀春華のようなヒロインは、たしかに可愛いのだが、あまりにも完璧すぎて、なんかこちらがみすぼらしくなる。一方で、ちょっと弱みのあるキャラクターの方が、ギャップ萌えなのか何なのかわからないが、たしかに愛着感が持てる。

完全に偏見だが、ヲタクの大多数は、何かしらの劣等感を抱いている。そのような人たちに対して作品を届けたいのであれば、作品そのものに劣等感を抱かせたほうがいい。それで『俺ガイル』はウケたわけだし、そのエッセンスを利用した『この美』みたいな作品もたくさん登場したのである。

それと同時に、主人公最強系の作品も大流行しているのが、また面白いところなんだけど。

さいごに

『この美』は、2024年時点でも連載中とのことだ。また、原作者のいみぎむるは『リコリス・リコイル』や『負けヒロインが多すぎる!』のキャラクターも描いていて、それもかなりの人気になっている。

監督の及川哲は『ウマ娘』でブレイク中だし、そう考えると『この美』がおもしろい作品に仕上がったのも必然だったのかもしれない。

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