今回は『クラメルカガリ』について語っていく。
『クラメルカガリ』は、2023年に公開された『クラユカバ』のスピンオフ的な作品で、2024年に公開された。
監督は塚原重義、アニメ制作はチームOneOneが担当している。
『クラメルカガリ』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 90点 |
世界観・設定・企画 | 85点 |
ストーリー | 80点 |
演出 | 80点 |
キャラ | 80点 |
音楽 | 82点 |
作画
『クラユカバ』同様の雰囲気の作画。ただし前作とは異なり、地上が舞台になっていて、かつ「虫」がテーマになっているだけあって、その点で違いがある。
それにしてもAnimateを用いたキャラ作画が素晴らしい。
世界観・設定・企画
前作『クラユカバ』の世界観を受け継ぎながら、今回は地上が舞台になっている。正直、世界観は『クラユカバ』の方が好きかなぁ。
企画としては『クラユカバ』と同時上映でやってみたのは良かったと思う。実際、僕は『クラメルカガリ』経由で『クラユカバ』を視聴することができたわけだし。
ストーリー
キャッチコピーは「町は変わる。私も変わる。」で、そのコピー通りに、登場人物の成長に焦点を当てているのが『クラメルカガリ』の特徴だ。
この手のアニメ作品は山のようにあるが、このコピーの割には「変わろう!」って感じを出してなくて、そのナチュラル加減のセンスがいいと思う。
演出
『クラユカバ』よりも、さらに手描きアニメの感じが出ていて、ここまでくると本当に動画マンの必要がない。また、ストーリーがやや感動的だったこともあり、本作の演出も柔らかいものが多かった。んで、それを3DCGの空間でちゃんと演出している。
キャラ
『クラユカバ』に比べて、人気声優を起用しているだけあって、それだけで印象が良くなった。笑
実際、主人公のカガリは、ほかのアニメではあまり見かけない良いキャラだと思う。
音楽
作品に寄り添うアニソンで定評のあるオーイシマサヨシの『僕らの箱庭』が主題歌で、これはめちゃくちゃいい。
適度に有名なクラシック曲を挟んで、見せ場をちゃんと演出できている。
『クラメルカガリ』の感想
※ネタバレ注意!
たしかに町は、変わり続ける
『クラメルカガリ』の世界では、度重なる陥没事故によって、刻々と町並みが変わっていく設定となっている。その度に、主人公のカガリや、その幼馴染のユウヤは地図を作成することで、上手く稼いでいるようである。
それで、その様子を『クラメルカガリ』は「町は変わり続ける」として、この世界が諸行無常であることを暗喩で表現している。
実際、この世界は社会的にも物理的にも諸行無常だ。日本一のオタク街・秋葉原に通っていると、それがよくわかる。行くたびに電気街の様子が変わっていく。ここ数年で、ポケモンカードの取引所の店舗数が劇的に増えている。どうやら秋葉原のポケモンカードの取引所は、金品買取店みたいなものらしい。
それに根本的に、この世界はサイクルに基づいて常に変化している。日本の場合、365日の中で4つの季節があるし、その日によって天候も違う。当然、町の様相も日によって違う。僕の近所のショッピングモールは、平日と休日で利用者が劇的に変わる。
そして何よりも、時間が僕たちを半強制的に変えていく。
そんな世界に生きているわけだから、変化を拒むのは、やっぱりよくないと思う。常に変化を受け入れる。それどころか、場合によっては変化を促す必要があるかもしれない。
『クラメルカガリ』が取り扱う「変化」の特異性
それで『クラメルカガリ』がおもしろいのは、主人公のカガリは変化をあまり気にせず、幼馴染のユウヤが変化を求めようとしていた点である。そのうえ、どちらかと言うとユウヤの方が反面教師的扱いをされていた。
普通、この手の作品は「変化を促す」ことを強く奨励するのだが、『クラメルカガリ』は少しやり方が違う。そう、この世界にも「クラガリ」はあるのだ。そしてユウヤは、クラガリにハマりすぎてしまったのである。
『クラユカバ』の感想記事でも書いたけど、結局は「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」ということである。ユウヤは「変化」という名の深淵に囚われすぎたのだ。
それでも、それが全く無駄になったわけではない。ユウヤが一生懸命変わろうとしたことで、その熱量がカガリにも届いたのである。そして結果として、カガリも変われた。
このような「変化」の描き方は、ほかの作品ではあまり見られないもので、「クラガリ(深淵)」というテーマを取り扱う『クラメルカガリ』らしいやり方だと僕は思う。
さいごに
『クラユカバ』と『クラメルカガリ』を視聴して、Adobe Animateのポテンシャルの高さを感じさせられた。ぶっちゃけ、もうゼロから動きをつくる必要はなくて、Animateで十分なのではないかと思う。このアートアニメーションの領域では、制作技法含めての作品だから、やはりアートアニメーションにアニメ制作の未来が眠っているような気がする。これからもインディーズ系のアニメ映画を視聴していこうと思う。