今回は『クラユカバ』について語っていく。
『クラユカバ』は、塚原重義によるオリジナル長編アニメで2023年に公開された。
アニメ制作はチームOneOneが担当している。
『クラユカバ』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 93点 |
世界観・設定・企画 | 90点 |
ストーリー | 83点 |
演出 | 85点 |
キャラ | 79点 |
音楽 | 83点 |
作画
本作の主な使用ツールはBlender、After effect、Animateということで、一般的な手描きアニメに頼ることなく、少人数での制作に成功。そのうえでこのクオリティということになると、映像表現としてのレベルは相当に高い。特にキャラクターの動きが素晴らしく、事実上のFlash制作であることから、フルアニメーションである。
世界観・設定・企画
大正レトロな時代設定に、重厚かつトリッキーなメカギミックが、塚原重義作品の特徴とのこと。そのうえで、Aftet effectによる世界観の作り込みと、監督自ら手がけるカラーグレーディングにより、個性的でエモい世界観が広がる。
インディーズらしさも持ちながら、ビジネスとしてそれ相応にプロモーションをかけていて、そのバランス感がいい。
ストーリー
一応、ジャンルとしては探偵推理ということになるわけだが、ちゃんとおもしろかった。与太話ではなく、ちゃんと「人間」が犯人だったのも個人的には好印象だった。
演出
3DCGをゴリゴリに活用。カメラワークが素晴らしい。それでいて、適度に実写的なカメラワークも用いられていて、ちゃんと「アニメ映画」として仕上がっている。
キャラ
ここまでキャラクターが作り込めるなら、もうAnimateでやっちゃった方が、キャラデザも崩れないしいいんじゃないかと思ってしまう。実際、キャラクターがとても良く、ちゃんとした人気声優を起用しているだけあって、違和感もない。
音楽
大正時代を彷彿とさせる劇伴のオンパレードで、これが雰囲気の演出に一役買っている。主題歌の『内緒の唄』も雰囲気が出ていた。
『クラユカバ』の感想
※ネタバレ注意!
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗く
結局は、これに尽きるだろう。「クラガリ」という単語が出た時点で「これはもうニーチェの深淵のことだろう」という考えになってしまう。実際、移動サーカス団「眞泥幻術団」がその典型例で、本作における深淵が、この移動サーカス団なのだろう。
クラガリの奥深くには、それはそれは素晴らしいものがかり、それにのめり込みすぎると、帰って来れなくなる。主人公の父親も、おそらくそんな感じになったのだ。
んで、じゃあこの「深淵」のくだりは何を表しているのだろうか。色々な視点があるのだけれど、少なくとも僕は、1人のアニメファンとして、この「深淵」は『クラユカバ』という作品そのものを表しているように思う。
僕は『クラユカバ』を視聴するために、青梅の映画館「シネマネコ」にわざわざ赴いた。時間帯は水曜の夕方ぐらいで、そのときは僕含めて10人ぐらいの観客がいたのだけれど、この絶妙な場所かつ絶妙な時間帯に、こんなマイナーなアニメを見に来ている人は、それなりに世捨て人に違いない。きっと、監督の塚原重義も、自主制作アニメという名の「深淵」に取り込まれていて、『クラユカバ』でやっと深淵から少しだけ抜け出せたのではないかと思う。
僕も、あまりアニメ沼にハマりすぎないようにしよう……。
Animateでここまでいけるんだ……
『クラユカバ』は、3DCGソフトはBlender、撮影はAfter effect、2DアニメーションではAnimateを用いているらしい。Adobeが提供するAnimateは、元々はAdobe Flashと呼ばれていたツールで、これを用いたアニメ作品をFlashアニメーションと呼ぶ。Animateでは、あらかじめ動きのパターンのようなものがあり、それを用いることで簡単にアニメーション表現をつけられる。もちろん、パラメータを調整することで、複雑な動きもできる。
んで、この『クラユカバ』に関して言えば、一般的な手描きアニメ以上のクオリティで、しかも普通にフルアニメーションと来た。このクオリティでやれるんだったら、もう動画マンとかいらないじゃんって感じなのだけど、実際のコストはどうなのだろうか。気になる。
さいごに
『クラユカバ』のスピンオフ作品である『クラメルカガリ』も同時に視聴したので、そちらの感想記事も、ぜひ読んでみてほしい。
それにしてもインディーズ系のアニメ映画は、やっぱりおもしろいなぁ。