【個人的】禁断の京アニ全作品ランキングTOP21

京アニ作品ランキング

今となっては、京都アニメーションは誰もが認めるアニメ制作会社だ。圧倒的なクオリティはもちろんのこと、アニメーターの労働環境改善については、日本国内で最も進んでいるアニメ制作会社だと思う。

そしてつい最近、僕は京アニ作品をほぼ全て視聴することができた(一部のミニアニメは除く)。そんな中、禁断の思考に行き着く。「京アニ作品でランキングを作りたい」と。

アニメ作品を比較して順位づけするほど、愚かな行為はないと思う。本当に思う。

でも、どうしても作りたかったのだ! なぜなら京アニ作品が本当に大好きだから。そしてもっと多くの人に京アニ作品(特に隠れた名作系のやつ)を知ってもらいたかった。

ということで、本記事では京アニ全作品のランキング(個人的)を紹介していこうと思う。GoogleでYouTubeで見受けられる「なんとなーく」の京アニ作品ランキングではない。京アニ作品をほぼ全て視聴している僕が、個人的な意見を盛り込みながら、ランキングを作成している。ぜひ最後まで読んでみてほしい!

目次

禁断の京アニ全作品ランキング

今回の京アニ全作品ランキングでは、基本的にシリーズ単位でランキングを作成している。シーズン毎で作品を分けていない点には注意が必要だ。例えば『けいおん!』だったら、TVアニメ1期と2期と劇場版含めて『けいおんシリーズ』としてランクインさせている。

第21位:境界の彼方シリーズ

第21位(事実上の最下位)は『境界の彼方』だ。正直、僕は『境界の彼方』があまり好きじゃない。いや、好きじゃないと言っても、あくまでも「京アニ作品の中では」というだけで、普通にシリーズは全部見ているし、聖地巡礼で奈良までちゃんと行っている

なぜあまり好きじゃないのかというと『境界の彼方』のストーリーや世界観が非常に感傷的で、ちょっと危ないからだ。なんというか『境界の彼方』の行き着く先は、リストカットや自殺に近い部分にあるような気がする。「そういう葛藤を乗り越えていこう!」というのが『境界の彼方』のメッセージだと思うけど、だとしても、やはりちょっと危なっかしい気がしてしまう。

また、作画のクオリティは全体的に高いが、なぜか戦闘シーンに魅入ることができない。個人的に戦闘シーンは、フルアニメーションでヌルヌルに動かすか、リミテッドアニメーションでケレン味溢れる演出が必要なのだと思う。でも京アニは、その点に関しては、良くも悪くも無難。というか『境界の彼方』の作画は全体的に無難な印象を受ける。まあ、この無難で京アニらしい繊細な描写が『境界の彼方』の魅力だと思うけれど。

第20位:ツルネシリーズ

第20位は『ツルネ』だ。まず大前提として僕は男性なので、ツルネシリーズのキャラクターに惚れるということはほぼない。だから、この私見たっぷりな京アニ作品ランキングにおいて、女性向け作品のランキングはどうしても落ちてしまう。

『ツルネ』は京アニ作品の中で最も新しいシリーズだ。ということで、KAエスマ文庫の作品とほぼ同じで、とても繊細な描写がウリになっている。正直なところ、この「京アニらしい繊細な描写」は個人的に飽きていて、今は「繊細さより大胆さ」の時代が来ていると思っている。例えばTRIGGER作品みたいな。

とはいえ『ツルネ』は京アニ作品ということで、他社の作品に比べても、センスがいい。特にカメラワークの使い方が秀逸。弓道の試合を上から捉える演出があるが、これは中々に斬新だ。それにそもそも、弓道をテーマにしているのも面白い。未開拓なマイナースポーツというのもあるけど、弓道をやっている少年少女は、なんとなくだ民度が高そう。

『ツルネ』がヒットしている印象はないけど、自社製作である以上、それなりに利益が入っていると思うし、視聴者を制限できているから、全体的には民度が高そうではある。

第19位:Kanon

第19位は『Kanon』だ。まあこれは、妥当な順位なのではなかろうか。『Kanon』は京アニのKey三部作の一つ。また、Keyの初めてのゲームでもある。

『AIR』や『CLANNAD』に比べると、インパクトに欠ける印象がある。もちろん曲もストーリーもいいのだけれど、やっぱりインパクトが弱い。それに個人的に、あまり泣けなかった印象もデカいところだ。

一方で個人的にはキャラが好きだった。月宮あゆの「うぐぅ」がめちゃ可愛いし、水瀬名雪もめちゃ可愛い。もしかしたら『AIR』や『CLANNAD』も含めたKey作品の中でも、一番キャラが可愛いかもしれない。

ネタバレ注意!

あと、個人的に印象に残っているのが第21話「君のいない輪舞曲〜ronde〜」で名雪のお母さんが交通事故に遭うシーン。あれ、本当に良くないと思う(褒め言葉)。これまで見た交通事故のシーンで一番怖かった……。

第18位:Free!シリーズ

第18位は『Free!』だ。僕的京アニ作品ランキングだとこの順位になってしまうけど、女性ファンがランキングを作ったら、最低でもTOP5ぐらいにはいくのではなかろうか。少なくとも、数ある女性向けアニメの中で、最もクオリティが高い作品なのは間違いない。

僕が保証するけど『Free!』は男性でも楽しめる。普通のスポーツアニメとして楽しめるし、数少ない女性キャラである松岡江や天ちゃん先生が、結構可愛い。

それでもこの順位に落ち着いてしまった理由は2つある。まずストーリーが微妙。いや、エピソード別のシナリオのクオリティは非常に高いし面白いけど、最後の最後でのご都合主義が目立つのだ。また、メッセージ性が乏しいのも難点。『Free!』はエンタメ作品として非常に優れているけど、それ以上でもそれ以下でもない。

とはいえ、やっぱり作画は凄い。水をアニメーションで描くのはめちゃくちゃむずかしいと思うけど、それを完璧に表現している。この辺は「やっぱ京アニだわ……」ってなる。

第17位:無彩限のファントムワールド

第17位は『無彩限のファントムワールド』だ。多分、京アニ作品の中で最もマイナーな作品の部類に入るのではなかろうか。

『無彩限のファントムワールド』といえば、エッチなシーンである。2015年あたりの京アニは、良くも悪くも血迷っていたとしか言いようがない。非暴力と非エロを貫いていた京アニが、2015年あたりでちょっと崩れるのだ(笑)。

視聴済みの人がパッと思い出すのは、やはりあの”リンボーダンス”だろう。あの”胸の揺れ具合”は、最高にたまらない!

でも実際問題、エンタメ作品としては非常に面白かった。基本的に1話完結型なので、サクサク楽しめる。男性だったら誰でも楽しめる作品だと思う。

第16位:小林さんちのメイドラゴンシリーズ

第16位は『小林さんちのメイドラゴン』である。武本康弘監督のTVアニメ1期が2017年に放送された後、2019年に忌まわしき放火事件が発生。武本監督がお亡くなりになったのだが、石原立也監督が引き継ぐ形で2022年にTVアニメ2期が放送される。そのときのOPで武本監督がクレジットされていたところで、グッとくるものがあった。アニメファンの中でも『小林さんちのメイドラゴン』は、特別な作品になっていると思う。

さて。正直に言うと『小林さんちのメイドラゴン』は文句のつけどころがない。実際、悪い部分が見つからない。『小林さんちのメイドラゴン』はエンタメ作品としても非常に面白いし、その裏側で本質的なメッセージも見受けられる。ただ、これに関しては京アニの力はもちろんのこと、原作者のクール教信者の力も大きいとは思う。

ただ、悪い部分が見つからない一方で、ぶっちぎりで良い部分が見つからないのも事実だ。実際「『小林さんちのメイドラゴン』が一番好き!」という人はかなり少ないと思う。

第15位:日常

第15位は『日常』だ。先ほど紹介した『小林さんちのメイドラゴン』が優等生タイプなら、『日常』は極端に良い部分と極端に悪い部分がある問題児タイプだろう。でも、やはり極端に良い部分もあるので「『日常』が一番笑えた!」という人がいても全く不思議ではないと思う。

とはいえ、やはり『日常』は問題作だ。何が問題なのかと言うと、ギャグがあまりにもシュールすぎるのだ。本当に、良くも悪くも理解できない。僕はシュールなギャグが好きなのだけれど、あまり頭が良くなかったり真面目だったりする人は、多分『日常』の視聴をパスすると思う。

そして何よりも、このシュールすぎるギャグを京アニが全力をかけて映像化しているのが馬鹿げている。しかし、あらためて『日常』を思い返してみると、あれらのギャグの数々は、極めて高い演出力と作画力が求められることに気づく。あれは本当に京アニじゃないとできないだろう。

第14位:中二病でも恋がしたい!シリーズ

第14位は『中二病でも恋がしたい!』だ。この作品に関しては「え、こんな順位低いの?」という人が出てきてもおかしくなさそうである。

『中二病でも恋がしたい!』は、KAエスマ文庫の初めてのアニメ化作品だ。京アニは、この作品から、自社でIPを保有する戦略に切り替えることになる。たしかにKADOKAWA作品やKey作品を制作していた2000年代に比べると、2010年代は少し物足りないかもしれない。だが「ビジネス」という点で見れば、KAエスマ文庫作品の方が、京アニにとって遥かに収益率がいい。それにメディア展開も容易だ。

ということで、初めてのKAエスマ文庫のアニメ化作品が『中二病でも恋がしたい!』なのだが、ちゃんとヒットした。作品としての知名度・人気度も非常に高く、楽曲もいいし、キャラもいい。聖地巡礼もできる。ちゃんとアニメビジネスを抑えている。

一方で、これはKAエスマ文庫作品全体で言えるのだけれど、メッセージ性が薄い。『中二病でも恋がしたい!』は、たしかにシナリオは良かったが、全体的なストーリー構成が少し物足りない。良くも悪くも、ありきたり。”中二病”の使い方は面白かったけれど、これから紹介していく上位作品に比べると、尖りが乏しいのだ。

第13位:甘城ブリリアントパーク

第13位は『甘城ブリリアントパーク』である。これはおそらくだが『甘城ブリリアントパーク』を見たことがある人なら、この順位に納得してくれると思う。逆に見たことがない人は「え、こんなに順位高いの?」と思うだろう。

『甘城ブリリアントパーク』は2014年に放送されたTVアニメで、京アニが制作に携わったことのある『フルメタル・パニック!』の作者・賀東招二のライトノベルが原作だ。京アニ作品の中でもマイナーな部類なのは間違いない。

『甘城ブリリアントパーク』の最大の特徴は、良い意味で京アニらしくないブラックジョークがてんこ盛りなところだ。オ○ニーの単語が平気で出てくるし、モザイクで覆われた”何か”が登場することもある。非暴力と非エロのイメージがある京アニ作品とは思えないブラックぶりだ。

ストーリーは”遊園地再生”がメインだが、基本的にはギャグアニメである。『日常』や『らき☆すた』から脈々と受け継がれてきたギャグセンスを遺憾無く発揮しており、京アニ作品の中では最も大衆向けのギャグアニメに仕上がっているのではないかと僕は考えている。ということでこの順位だ。

第12位:らき☆すた

第12位は『らき☆すた』だ。多分、妥当なんじゃないかなと思う。

正直、個人的には『甘城ブリリアントパーク』の方が好きだった。しかし『らき☆すた』には、第22話『ここにある彼方』がある。これが大きかった。京アニの魅力の1つである”感動”が『らき☆すた』にはある。

また、当時の京アニは間違いなく最前線を走っていて『らき☆すた』でも画期的な取り組みが行われていた。聖地巡礼と声優ラジオ文化をガンガン推し進めた功績はとても大きい。

とはいえ、これから紹介していく『涼宮ハルヒ』や『けいおん!』に比べると、色褪せている感じが否めないのも事実だ。はたして現代のアニメ好きが『らき☆すた』を好きになれるかどうかが微妙なのである。ということで、この順位が妥当なんじゃないかなぁと思う。

第11位:ムントシリーズ

第11位は『ムントシリーズ』だ。おそらく、京アニ作品の中で最もマイナーな作品だと思う。

一応説明しておくと、『ムントシリーズ』は京アニが初めて制作したオリジナルアニメ作品で、2003年と2005年にOVAが発売。そのあと、OVAの編集版と新規カットがミックスされたTVアニメが2009年冬クールに放送され、2009年4月にTVアニメの劇場編集版が上映された。

この『ムントシリーズ』は、歴史的に見て京アニの原点なのは間違いないが、個人的には、作品の中で描かれるメッセージ性も、京アニの原点なのではないかと考えている。ネタバレを避ける形で言うと「目に見えないものを信じる」というのが『ムントシリーズ』のキーワードだ。

目に見えないものを信じ、目に見える形にする。これが京アニの原点。数あるメディアの中でも「目に見えないものを目に見える形にする」という点では、アニメーションが最も優れたメディアである。これは、目に見えないものを信じていた(と思われる)スティーブ・ジョブズが、目に見えないものを目に見える形にする魔法の使い手・PIXARを創業した歴史に通ずる部分がある。

僕は『ムントシリーズ』を見て、京アニが信じているものが、他のアニメ制作会社とは違うことを強く理解した。京アニの原点は間違いなく『ムントシリーズ』にある。

また、京アニの基盤を作り上げた天才アニメーターである木上益治の数少ない京アニ監督作品である点も見逃せない。

第10位:フルメタル・パニック!シリーズ

第10位は『フルメタル・パニック!』だ。「京アニ作品 ランキング」のGoogle検索でヒットした記事では、間違いなく最下位近く(どころかランク外)に位置する『フルメタ』だが、個人的に『フルメタ』ほど声を出して笑ったアニメはないと思っている。

『フルメタル・パニック!』は言わずと知れた大人気ライトノベルが原作だが、TVアニメ1期はGONZOが制作。そしてスピンオフである『フルメタル・パニック!ふもっふ』とTVアニメ2期を京アニが制作した。

TVアニメ2期も非常に面白かったが、その100倍ぐらい面白いのが『ふもっふ』だった。良い意味でイカれてる。京アニの技術力が惜しげもなく突っ込まれたギャグアニメが面白くないわけがない。

それに一応、『フルメタル・パニック!』は京アニ初の元請けTVアニメである点も見逃せない。『涼宮ハルヒ』ほどの刺激的な演出は施されなかったが、それでも積極的にアニメオリジナルエピソードを組み込んだり、それこそ『ふもっふ』でブラックすぎるギャグにチャレンジしたりなど、京アニの原作リメイク力はこの頃から評判になっていたと考えられる。

第9位:聲の形

第9位は『聲の形』だ。『聲の形』のような辛い作品は個人的に好きじゃないが、クオリティが高いことに加え、社会的意義を考えても、TOP10以内にはランクインさせる必要があると判断した。

まず『聲の形』が素晴らしいのは、そもそも、この『聲の形』のアニメ化を打診したのが京アニだったということだ。高品質アニメの制作に消極的(と僕が勝手に思っている)な週刊少年マガジンで燻っていた『聲の形』に目をつけた嗅覚が素晴らしい。

ほとんどの人は京アニの作画や技術に注目すると思うが、それと同じレベルで、京アニはプロデューサーが素晴らしいのである。『らき☆すた』といい『けいおん!』といい『響け!ユーフォニアム』といい、本当に嗅覚が素晴らしい。

しかも『聲の形』は、ちゃんと京アニが最も多く出資できている状況を作り出せている。興収は23億円を突破だが、仮に出資率が30%だと仮定して、配給や映画館収入で70%引かれたとしても、興収だけで約2億円の利益を手にしていることになる。まあ普通に黒字だろう。今後も配信収入が入ってくるだろうし。

作品として見ると、とても現代的な表現が満載で、山田尚子監督特有の演出が光る。間違いなく、京アニじゃないとできない表現だった。

……こんなに『聲の形』における京アニの凄さを語っているのに、それでも順位が第9位なのだから、今回のランキングの層の厚さが窺える。

第8位:AIR

第8位は『AIR』だ。いや、『AIR』が8位ってヤバいな。

なんというか、僕にとって『AIR』は特別な作品で、これほどまでに余韻に浸ったアニメは本当に数少ない。欲を言えばもっと順位を上にしたかったぐらいだ。

『AIR』は京アニのKet三部作の第一作目で、正直言って、かなり古臭い。だから現代アニメっ子は『AIR』をあまり見たがらないが、『AIR』を見たことある人であれば、この順位に納得してくれるだろうし、なんなら「低い!」って感じてくれると思う。

『AIR』は、やはり素晴らしいアニメだ。音楽もストーリーも作画もいい。キャラも可愛い。観鈴の「ぶいっ」や「がおっ」が思わずフラッシュバックする。『鳥の詩』と『夏影』というとんでもない名曲もある。ただし、これらのほとんどはKeyによってもたらされたものであって、京アニによるものではない。それが『AIR』がこの順位に落ち着いている最大の理由である。

とは言っても、京アニの功績は大きかった。2005年制作とは思えないほど美しい作画だった。それと演出力も際立っている。

ネタバレ注意!

個人的に印象に残っているのは第11話「うみ〜sea〜」の演出だ。観鈴と晴子が海辺で駆け寄るシーン。波の音の使い方がレベチ。ちなみにこのエピソードは木下益治が演出を担当している。

第7位:氷菓

第7位は『氷菓』だ。現代アニメっ子であれば「もっと順位高いだろ!」と非難されそうだし、なんなら「1位だろ!」って思う人もいるかもしれないが、それはあくまでも人気度の話であって、個人的にはこれぐらいの順位が妥当だと思ってる。

なんなら個人的には『AIR』を推したかったぐらいだが、『氷菓』が恐ろしいのは、その人気度である。なんだかんだで今となっては、最も多くの人が視聴している京アニ作品なのではないだろうか。それぐらい現代アニメっ子からの支持が強い。『けいおん!』や『涼宮ハルヒ』は見たことないけど、『氷菓』は見たことあるという人も多い。

実際、『氷菓』は非常に面白い。僕も、深夜アニメ初心者に初めてのアニメを1つ紹介するなら、まず『氷菓』をおすすめすると思う。それぐらい『氷菓』は大衆的な面白さがある。

第6位:たまこシリーズ

第6位は『たまこシリーズ』だ。このランキングにおいて最も私情が入ってる作品かもしれないが、『たまこラブストーリー』を見た人であれば、十分に納得してくれるだろう。

そもそも『たまこシリーズ』とは、TVアニメ『たまこまーけっと』と続編映画『たまこラブストーリー』のことを指す。そして『たまこシリーズ』は数少ない京アニのアニメオリジナル作品。監督は山田尚子が担当している。

ということで、まず山田尚子特有の演出が惜しげもなく投下されている。本人が音楽好きということもあり、楽曲がかなり渋い。藤原啓治が歌う『恋の歌』は痺れる。

そして何と言っても『たまこラブストーリー』である。

正直言って『たまこまーけっと』は、そりゃまあめちゃくちゃ面白いけど、特別な面白さがあるわけではなかった。でも『たまこラブストーリー』は違う。この作品は、もはや異常だ。アニメとは思えないほどシンプルなストーリーで、純粋な技量の高さとセンスだけで、勝負したのである。本当に、ストーリーだけ見れば、ただのそこら辺の高校生が思いつきそうなもの。でも、シナリオと演出がぶっちぎっている。

ネタバレ注意!

特に、終盤でたまこがもち蔵に連絡網を回さずに、朝の学校で2人きりになろうとするシーンは、もうやばかった。あのボーッとしてるたまこが、あんなアプローチに出るなんて……。エモすぎる!

第5位:ヴァイオレット・エヴァーガーデンシリーズ

第5位は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』だ。いよいよ本命の登場である。

『ヴァイオレット・エヴァガーデン』は京アニにとってもアニメファンにとっても特別な作品だ。本作はKAエスマ文庫で初めてで唯一の大賞作品。Netflixの独占配信ということで、リソースも贅沢に投下される形で満を持してアニメが放送され、ヒットを飛ばす。しかし、劇場版制作中に放火事件が発生。また、新型コロナの感染拡大もあり、何度も延期した。「もう京アニは終わったかもしれない……」と考えた人も一定数いたことだろう。

しかし、劇場版が公開され、その圧倒的なクオリティで、不安は一瞬で吹き飛んだ。あの放火事件の復活作で、京アニは最高傑作級のアニメを作ってきたのだ。ストーリーも相まって、こんなの、泣けないわけがない。僕は劇場版をレイトショーで鑑賞した時に「一生アニメを見続けよう」と思った。それぐらいの凄まじい感動だった。

また、興収は21億円を突破。それまで京アニは「他社のIPを使わなくなってから大ヒット作が出せなくなった」と言われていた。だが”興収21億円”という数字は紛れもなく大ヒットで、『涼宮ハルヒの消失』や『映画けいおん!』よりもヒットしているのである。

ということで『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は特別な作品なのである。そんな特別な作品がなぜ第5位に落ち着いているのか。それは、これから紹介していく作品に比べて”新しさ”や”挑戦”が欠けているからである。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は良くも悪くも”満を辞していた”のだ。成功が確約されていたから、当然、お金も集まる。京アニもリソースをどんどん注ぎ込める。そりゃあ大作が生まれて当然。でもその分、手堅くなる。何か新しいことにチャレンジする、ということはなかった。

強いて言うなら「大ヒット作を作る!」というチャレンジがあったのかもしれないが、それは『聲の形』で達成してしまっている(しかも『聲の形』の興収を越えられてない)。

2000年代の深夜アニメは、カウンターカルチャー的な要素があった。その最前線を走っていたのが京アニだった。だが2010年代後半から、深夜アニメは大衆的なものになる。この背景を考えると『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』に新しさがなかったのは、当然なのかもしれない。

第4位:涼宮ハルヒシリーズ

第4位は『涼宮ハルヒの憂鬱』だ。

まずそもそも、京アニという名を轟かせたのが本作だったことは見逃せない。そして影響力もとんでもない。現代のラノベ文化及びアニメ文化は、間違いなく『涼宮ハルヒの憂鬱』の影響を強く受けている。2000年代後半の深夜アニメ全盛期を作り出した張本人と言っても過言ではない。

実際、『涼宮ハルヒの憂鬱』は新しかった。『涼宮ハルヒの憂鬱』と言えばエンドレスエイトをネタにする人が多いが、あれは『涼宮ハルヒの消失』に備えた壮大な下準備という解釈ができる。というかエンドレスエイトよりも、TVアニメ1期の放送話シャッフルの方がヤバいだろう。第1話がみくるちゃんなのだ。リアルタイムで見た人は、さぞ驚いたことだろう。そして改めて放送話シャッフルの順番を振り返ると、実によくできていると感じる。

それ以外にも、ネット界隈でバズりまくった『ハレ晴レユカイ』や、文化祭の『Godknows』はもはや伝説の域に達している。それに本編の『涼宮ハルヒの憂鬱』もラノベ最高傑作なんじゃないかと思わされるぐらいによくできたエピソードだった。もちろん『涼宮ハルヒの消失』もめちゃくちゃ面白い。

今も昔も、ここまで多くのギミックを組み込んだアニメは他に存在しないだろう。他社IPをここまでいじくり回す勇気がヤバい。そう考えるとこの順位は十分納得できるはずだ。

第3位:CLANNADシリーズ

第3位は『CLANNAD』だ。

「CLANNADは人生」というネットスラングがあるが、これはあながち間違っていない。本当に素晴らしいアニメだと思う。『CLANNAD』が放送されたのが2007年から2008年だから、当時若者だった人は今頃子どもを持つ年齢になっている。赤ちゃんが産まれたとき、きっと『CLANNAD』を思い返したはずだ。京アニ作品の中で最も多くの人の人生を変えてきたのは間違いない。

また『CLANNAD』は、京アニ作品で唯一、TVアニメを4クールかけて放送した作品である。当時から見ても、4クールかけて放送するというのは極めてリスクが高い。だが『CLANNAD』を制作するなら4クールかける必要があるのも事実。そこでしっかりリスクを取れたのも当時の京アニらしい。

それに加えて、ほかのKey作品である『AIR』や『Kanon』に比べても、アニメオリジナルの要素が多いのもポイントだ。「原作ゲームの複雑なシナリオ分岐を1本にするため」という理由もあっただろうが、オリジナル要素をふんだんに盛り込んでいるのは共感が持てる。特に『だんご大家族』は、もう本当に素晴らしい!

今もう一回『CLANNAD』を見たら、多分10回は泣いちゃうかもしれない。視聴済みの人には、もはや説明不要。まだ見てない人は、とりあえず第9話までは見てみよう!

第2位:響け!ユーフォニアムシリーズ

第2位は『響け!ユーフォニアム』だ。

『ユーフォ』は『涼宮ハルヒ』や『けいおん!』よりも知名度は低いが、まあまず上位に入ってくる作品なのは間違いないだろう。

僕は当初、スポーツ系だと思っていて視聴していたが、違った。『ユーフォ』はれっきとしたヒューマンドラマ作品である。特に久美子とあすか先輩の関係性の描き方には衝撃を受けた。たまげた。この関係性をアニメーションで映像化してしまうのは、ちょっとヤバい。これは京アニにしかできない。

また、『ユーフォ』には『リズと青い鳥』という屈指の名作スピンオフ映画が存在する。僕が『ユーフォ』を第2位まで押し上げたのも『リズと青い鳥』によるところが大きい。『リズと青い鳥』は山田尚子が監督を務めている作品で、映像化不可能に思えてしまう希美とみぞれの関係性を、山田尚子の秀逸なセンスでアーティスティックに映像化されている。”完成度”という点では『リズと青い鳥』がNo.1だろう。

第1位:けいおん!シリーズ

第1位は『けいおん!』だ。

正直、第5位以上の作品は、全部第1位にしたいぐらいだった。だが『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も『涼宮ハルヒの憂鬱』も『CLANNAD』も『響け!ユーフォニアム』も、どの作品も原作の時点でぶっち切りで面白かったというのが正直なところだと思う。一方の『けいおん!』は、原作漫画がぶっち切りで面白いというわけではなかったはずだ。それに加えて、ストーリーのほとんどはアニメオリジナル。もちろんライブの演出も、ゼロから京アニが使っていると考えていい。

以上の点から『けいおん!』は京アニの力が大変大きいと考え、僕は『けいおん!』を第1位にしたのである。

『けいおん!』の魅力は、もうたくさんあるのだが、個人的にすごいと思うのはストーリー構成である。

『けいおん!』はTVアニメ1期を1クール、TVアニメ2期を2クールで放送しているのだが、TVアニメ1期は2年間を描いているのに対し、TVアニメ1期は3年生の1年間を描いている。つまりTVアニメ1期と2期では、作品内の時間速度が約4倍違うことになるのだ。事実、TVアニメ1期はサクサク進むのに対し、TVアニメ2期はのんびり進んでいった。

通常、高校3年間を3クールかけて放送するのであれば、1年ごとに1クールかければいいと思う。でも京アニはそうしなかった。京アニは、2年生までを1クール、3年生を2クールで表現することで、TVアニメ1期と2期で明確に違う作品に仕立て上げることを優先したのだ。TVアニメ1期では平沢唯の成長を描き、TVアニメ2期では”日常”を描いた。TVアニメ2期があれだけ冗長的に描かれたのも「終わらないと思ってた日常が少しずつ終わりに近づいていく演出」だと解釈できる。あれだけ冗長的に日常を描いたからこそ、最後の文化祭や卒業式の感動が際立ったと言ってもいい。

それに社会的な影響力も文句なし。『CLANNAD』と同様に『けいおん!』で人生が変わった人も多いだろう。『けいおん!』で音楽を始めた人も一定数いるはずだ。楽曲も素晴らしく、OP・ED・挿入歌でテーマ性が異なり、全く飽きない。個人的には挿入歌の雰囲気が好きで『U&I』と『ふわふわ時間』と『わたしの恋はホッチキス』はどれだけヘビロテしたことか……

さいごに

先ほども述べた通り、個人的には第5位以上は全部第1位にしたいぐらいだったし、なんなら『たまこシリーズ』と『AIR』も第1位にしたいぐらいだった。

『けいおん!』や『氷菓』は誰もが知る作品だと思うが、個人的に『甘城ブリリアントパーク』は大衆向けだと思うし、ラブコメが好きだったら『たまこラブストーリー』は絶対に見た方がいいと思う(もちろん『たまこまーけっと』視聴後)。

どんなに知名度が低かろうと、京アニが作っているんだから、面白くないわけがないのだ。そこは安心していい。もし本記事で紹介した作品で未視聴のアニメがあったら、ぜひ視聴してみてほしい!

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