【風の谷のナウシカ感想】自然の雄大さと女性の強さを描く

風の谷のナウシカ
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『風の谷のナウシカ』について語っていく。

『風の谷のナウシカ』は宮崎駿による漫画(アニメージュ)が原作で、これが1984年に長編アニメーション映画として上映された。

アニメ制作はトップクラフトが担当している。なお、宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫、久石譲など、のちのスタジオジブリに繋がるクリエイターが参加していることに加え『新世紀エヴァンゲリオン』でのちに有名になる庵野秀明も原画マンとして参加している。

目次

『風の谷のナウシカ』の評価

※ネタバレ注意!

作画93点
世界観・設定93点
ストーリー90点
演出90点
キャラ87点
音楽90点
※個人的な評価です

作画

1984年当時のアニメーションのレベル感がわからないけれど、とりあえず作画が素晴らしいのは間違いない。ただし『カリオストロの城』ほどの衝撃ではなかった、というのが正直なところではないだろうか。

世界観・設定

『風の谷のナウシカ』の最大の魅力と言っていいのが、この独特の世界観だ。自然の雄大さや人類の愚かさが凝縮されているように思える。そして多くの人が言うように、この世界観というかメッセージ性は『もののけ姫』に強く反映されるし、宮崎駿作品全体に繋がっていくことになる。

ストーリー

116分の尺があっという間に感じられるぐらいにストーリーはおもしろい。一方で、宮崎駿がインタビューでも述べているらしいけれど、ラストが予定調和のハッピーエンドになってしまった感じは否めない。せっかくあれだけの問題提起をしたのだから、それに対する答えを見たかったというのはあるけれど、でもここで答えが出ていたら、戦争や自然破壊が繰り返されることなんてないんだよなぁ。

演出

序盤における王蟲のあの動きはハーモニー処理というのが実施されているらしい。このハーモニー処理は、セル画にベタ塗りするのではなくあえて絵画的に表現することで重厚感を出す技法のことだ。たしかに迫力があった。今だったら3DCGを組み合わせることでもっと面白い表現ができそう。

また、あの体節の動きは、パーツをゴムで繋いで撮影しているそうだ。今だったらコンピュータで簡単に表現できるけど、当時の撮影は大変だっただろうな……。

キャラ

キャラはかなり魅力的。ナウシカがかなりいいキャラだし、敵キャラのクシャナも悪役っぷりがたまらないし、その参謀のクロトワも憎めないキャラだ。

音楽

主題歌には松本隆と細野晴臣が参加しており、劇伴は久石譲が担当しているという超絶豪華なメンバー。あの特徴的な挿入歌は、久石譲の娘が担当していたらしい。

また、今後発表されるスタジオジブリ作品にも通ずる部分があるけれど『風の谷のナウシカ』の劇伴とSEは、ありとあらゆる工夫を凝らして、なんだかんだで安く作られているのが印象的だ。

『風の谷のナウシカ』の感想

※ネタバレ注意!

自然の雄大さと女性の強さ

僕が初めて大人になってから『もののけ姫』を視聴したとき、「宮崎駿監督は自然の雄大さと女性の強さを社会に訴えたいんだなぁ」と勝手に理解したのだけれど、それと同じ感想を『風の谷のナウシカ』にも抱いた。

まず自然の雄大さについては、『風の谷のナウシカ』特有の設定である腐海と蟲が鍵を握っている。一見すると腐海と蟲は、まるで人間の敵のように振る舞っているように思えるが、実際は地球をクリーンにするために存在しているようであった。しかし、人間はそれを理解しようとせず、腐海と蟲を滅ぼそうとして、結果的に自らを滅ぼしている。この”人間の愚かさ”を描いている点も『もののけ姫』と非常によく似ている。

たしかに僕たち人間は、ゴキブリを始め、虫を敬遠する傾向があるけれど、しかし虫は地球の生態系維持において欠かせない存在なのだから、滅ぼすべきではない。もちろん、これは木々や森でも同じことが言える。大前提として、僕たち人類は、自然と共生する道をもっと推し進めるべきなのだろう。

そして女性の強さに関して言えば、そもそもアニメ業界というのは、半分以上が女性である点が見逃せない。たしかに監督やプロデューサーなどの上位の職種は男性の方が多いかもしれないけれど、実際に現場で働いている人に関しては、むしろ女性の方が多い。だから宮崎駿監督を始め、アニメ制作に携わる人の多くは、女性の強さを理解している印象がある。

んでもって『風の谷のナウシカ』は、おもしろいぐらいに女性が強い。主人公のナウシカは説明不要だし、なんだかんだで敵役のクシャナも、軍を率いているわけだ。

そして個人的に印象に残っているのが、ペジテ市の女性たち。ペジタ市はトルメキア軍を滅ぼすために風の谷に王蟲を送り込もうとして、ナウシカを怒らせたわけだけれど、それに対してペジタ市の女性たちが「戦ったってしょうがない」ということで、ナウシカを風の谷に送り出す手伝いをするのである。ペジタ市の男たちがとにかくトルメキア軍を滅ぼすことに躍起になっていたのに対して、ペジタ市の女性たちの方が、冷静に物事を見極めて、正しい判断をしていたように見えてしまう。

以上のように、”自然の雄大さ”と”女性の強さ”は、宮崎駿作品のキーワードにもなっていて、その原点が『風の谷のナウシカ』にあるのかもしれないと感じた。

さいごに

『風の谷のナウシカ』は正確に言えばスタジオジブリ作品ではないけれど、スタジオジブリの前身となるトップクラフト制作であり、かつスタジオジブリ作品の制作に携わることになるクリエイターが集結していることから、スタジオジブリの原点的な作品と言える気がする。

そして個人的に『風の谷のナウシカ』はかなり好きな作品だ。なんというか、宮崎駿監督が社会に伝えたいことが凝縮されているような気がする。

ということで今後もスタジオジブリ作品を視聴しまくろうと思う。

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