今回は『大室家 dear friends』について語っていく。
『大室家』は、なもりによる漫画『ゆるゆり』のスピンオフ漫画『大室家』が原作だ。この『大室家』も、なもりが原作を担当している。
『ゆるゆり』は2011年夏クールにTVアニメ1期、2012年夏クールにTVアニメ2期、2015年秋クールにTVアニメ3期が放送された。
そして2024年2月に前編となる『大室家 dear sisters』が公開。それに引き続き、後編となる本作が2024年6月に公開される。アニメ制作はパッショーネとスタジオリングスが担当している。
『大室家 dear friends』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 70点 |
世界観・設定・企画 | 75点 |
ストーリー | 78点 |
演出 | 75点 |
キャラ | 80点 |
音楽 | 78点 |
作画
当たり前だが、前作から作画のクオリティに大きな違いはない。あくまでもOVAとしての制作なので、映画館仕様になっているわけでもないし、ホームドラマが中心なので、広角の画面構成も少ない。その中でできる範囲での工夫がなされていた、という感じだ。個人的には、三姉妹が夜にお互いを驚かし合うシーンのカメラワークが印象的だった。
世界観・設定・企画
『Dear friends』というタイトルだけど、前作より三姉妹のシーンの割合が多い気がする。笑
まあ僕としては、三姉妹のやり取りを見たかったのでOKだけど。
ストーリー
今回はストーリー構築のセンスが素晴らしい。というのも、撫子に多くの尺が投下された一方で、花子?にはほとんど尺を投下していなかったのである。撫子が彼女と喧嘩していた一方で、花子も実は喧嘩していて、しかもその理由は最小限でしか説明されていない。結果として、撫子の考察にリソースを割きながら、花子に関しても余韻を残しながら絶妙な感じで描くことに成功している。これは原作通りなのか、それともアニメ制作側の判断だろうか。
演出
予算の範囲内で上手く演出を組み込んだ感じ。もちろん、動画工房時代の見せ場はないけど、それでも大室三姉妹の可愛さは充分に伝わってきた。
キャラ
やっぱり大室三姉妹は可愛い。『ゆるゆり』のキャラの中では、キャラデザが王道の3人だから、シンプルに可愛いうえ、3人とも、ちゃんと個性がある。それと撫子周辺の友人3人も、大人っぽい感じで可愛らしい。
音楽
OPは前作と変化なし。ED『パッチワーク・エトセトラ!』は斎藤千和、上坂すみれ、東山奈央、悠木碧というこれまたすごいメンツで、まあEDにふさわしいメロディーにはなっていた。
『大室家 dear friends』の感想
※ネタバレ注意!
撫子の彼女は誰だ
さて、今回も撫子の彼女を推測していこうと思う。
前回の記事で、僕はめぐみが彼女だと予想(という名の願望)していて、その最大の理由が電話をかける時間帯だった。撫子は彼女と夜の10時以降に電話するのだが、それを考慮すると、唯一バイトをしているめぐみの可能性が高まる。また、花子が顔を見たそうに「いい人そう」と発言したことから、赤座あかねにもっとも近いキャラ=めぐみという推測をした。
だが本作を視聴していると、めぐみ説がやや弱まり、映画好きが濃厚である藍の線が強くなったと思う。というか本作だけの視聴だったら、藍が彼女のようにしか見えない。一方で、撫子が彼女と喧嘩した際に、めぐみとだけ会話していないことから、めぐみの可能性も残されている。個人的には、この2作品を見る限り、美穂の線は薄い。まあ、カチューシャのシーンとかは超絶印象的なのだけど。
どちらにせよ、この考察が極めて不毛なことは言うまでなく、完全に読者の想像に任せているのが本当のところだろう。そうすることで、考察が捗るし、二次創作の制作意欲も強くなる。その点で言えば、キャラデザが強すぎる藍が1番人気だと思う。
花子とみさきちの喧嘩の原因は?
本作は、大室三姉妹のやり取りと撫子が深掘りされた一方で、花子関連のシーンの尺はかなり短めだった。おかげさまで撫子の考察は捗るが、それにしても花子関連のパートが少ない。そのうえ、いつの間にか花子とみさきちが喧嘩をしていて、いつの間にか解決もしている。ここが直接的に描かれなかったのが、本作のストーリーの特徴だと思う。
おそらく、今回の喧嘩の原因は、シール交換の際にみさきちを呼ばなかったことにあると思う。多分、花子たちは悪気がなく、ワンチャンでみさきちが強がった可能性があるけど、どちらにせよみさきちはシール交換で花子と一緒に遊びたかったのだ。その事実として、花子とみさきちが仲直りしたときに、みさきちがノートらしきものを持っていた。花子がみさきちとシールを交換したことで、仲直りしたのだと思う。
んで、そのくだりが本作では全く描かれなかった。上手い具合にカットして、演出したのである。
その最大の理由は「尺」だと思うが、僕はふと『プリキュア』を始めとする魔法少女系アニメのことを思い出した。
魔法少女系アニメでは、大人の世界と子供の世界に分かれていて、大人(親)は子どもたちがどのようにして頑張っているかを全て見ることができない。実際、親御さんは学校生活や部活動の全てを見られるわけではない。そういう意味で大人(親)は、子どものことを信じることしかできない。でも、思っていたよりも子どもは成長していて、学校生活を垣間見れる数少ないチャンスである運動会や卒業式で、親御さんは感動してしまうのである。
それと同じ現象が『大室家』にも起きていた。花子が友だちと喧嘩していても、それを解決できるのは花子しかいない。櫻子や撫子が出る幕ではない。これを表現するために、花子とうさきち関連のエピソードを省いたのかもしれない。
これが原作からそうなっているかどうかは、僕が原作未読勢なので判断不可能ではあるが、映画単体で見たら「上手く演出したなぁ」という感じである。
さいごに
ということで、一刻も早く『ゆるゆり』の続編を見たい。『大室家』をアニメ化するってことは『ゆるゆり』も続編をやる気があるってことだよね?
それで、動画工房とまでは言わないけど、動画工房版のブラックな感じを引き継いだ続編を制作してほしいと思う。10周年記念のOVAぐらいの感じでいいから。ということで『ゆるゆり』の続編を楽しみにしたいと思う。