【オネアミスの翼感想】強者理論か弱者救済理論か

王立宇宙軍オネアミスの翼

今回は『王立宇宙軍 オネアミスの翼(以下、オネアミスの翼』について語ってみる。

『オネアミスの翼』は1987年に公開されたアニメ映画だ。アニメ制作はガイナックスが担当している。

また、今回は2022年に公開された4Kリマスター版を鑑賞した。

目次

『オネアミスの翼』の感想

ネタバレ注意!

50代の経営者は宇宙を目指す

現在、この資本主義社会で大金持ちとなった長者番付上位の大半が、宇宙を目指している。僕が思うに、50代の方々は、アポロ有人飛行が成功したタイミングで生まれた人たちなので、宇宙に対する興味が強いのかもしれない。また、フロンティアを開拓するモチベーションが高い世代だといえる。

そんな50代の方々が学生時代の頃に公開されたアニメ映画が『オネアミスの翼』だ。現在、日本国内での格安ロケット開発に着手している堀江貴文も、『オネアミスの翼』を好きな映画の一つに挙げている。

実際、『オネアミスの翼』はロケット開発の熱さをリアルに表現しているのがポイントだ。ロケットが打ち上がるシーンの鳥肌はすごいものがあるし、エンジニアの方々の熱さもビンビンに伝わってくる。50代の経営者の方々が夢中になるのもわかってしまうぐらい、だ。

強者理論か弱者救済理論か

『オネアミスの翼』は、ロケット開発に対する貧困層の反対が取り上げられている。これは、ロケット開発側が強者で、貧困層側が弱者という見方ができると思う。

主人公のシロツグは些細なことで宇宙に強いモチベーションを抱くようになり、宇宙飛行士のための訓練にがむしゃらに取り組んできた。そしてそれが話題になる頃に、貧困層のデモを目の当たりにすることで、自分のやっていることが本当に正しいのかどうかを考えるようになる。そして最終的に、その答えが明確に出ることはなかった。

僕が思うに、アニメにおけるヒューマンドラマには強者理論と弱者救済理論の2種類があると思っている。例えば女子高生が南極を目指す『宇宙よりも遠い場所』は、紛れもなく強者理論側の作品。一方で、ドラゴンが人間の非合理的な行動を認める姿を描く『小林さんちのメイドラゴン』は、弱者救済理論側の作品だ。

そして、弱者救済理論のアニメは道徳を大事にする傾向にある。それは一見良いことのように見えるが、ニーチェが道徳を批判していることからもわかる通り、本当に有意義な人生を送りたいのであれば強者になる必要があると僕は考えている。

だから僕は、『オネアミスの翼』や『よりもい』のように、挑戦を促すような作品が大好きだ。だがそれでも『オネアミスの翼』は、強者の反対側にいる弱者にもスポットライトを当てている。

そして最終的に解決しなかったことを考えると、強者と弱者の対立は、人類社会における永遠のテーマかもしれないと、僕は思ってしまうのだった。

『オネアミスの翼』の評価

作画90点
世界観・設定90点
ストーリー80点
演出80点
キャラ80点
音楽80点

作画

1987年に公開されたということを考慮すると、クオリティは非常に高いと言える。特にロケットや製造現場の作り込みが半端じゃない。めちゃくちゃ取材したのだろうな。と思ってEDのクレジットの取材協力を見たら「NASA」ってしっかり書いてあった。

世界観・設定

やはり、挑戦をテーマにした作品が僕は好きだ。『オネアミスの翼』では有人宇宙飛行がテーマとなっていて、登場人物の挑戦がエモーショナルに描かれている。

ロケットって、最高にエモい。これから宇宙産業が発展することに伴って、ロケット開発のアニメ作品が増えていくんじゃないかと思う。

ストーリー

ストーリーは、かなり急な展開となっている。シロツグが宇宙に目覚めるきっかけも唐突だし、その他のメンバーがロケット開発にのめり込み始めた理由も語られていない。

しかし、何かを挑戦し始めるときというのは、そんなもんだと思う。「何か理由があるわけではなく、なんとなくのノリで始めたらいつの間にかのめり込んでました」みたいな。そう考えると、この急展開にも納得がいく。

ラストシーンを理解するにはちゃんとした考察が必要だと思うけど。笑

演出

軍の侵攻の関係でロケット発射を諦めかけたときに、シロツグが諦めない意志を見せたシーンがめちゃくちゃ好き。このシーンに『オネアミスの翼』の熱さの全てが詰まっている。

キャラ

なんというか、昭和のノリを感じさせるキャラクターだった。不真面目なんだけどやる時はやる、みたいな。現代の2022年は、どう考えても真面目すぎ。そして失敗を恐れる。

現代において古いアニメ作品を見る意義って、こういう部分にあると思うな。

音楽

坂本龍一の音楽が『オネアミスの翼』とマッチしている。やっぱり宇宙をテーマにした作品には、オーケストラと電子音楽が相性いいよね。特に『オネアミスの翼』に関しては、スーファミのゲームミュージックみたいな雰囲気が感じられた。

さいごに

『オネアミスの翼』は、やはり名作だった。ストーリーはめちゃくちゃかもしれないけど、メッセージ性や世界観が好きだ。

それにしても、やはりガイナックスはいい作品を作るアニメスタジオだ。あまりにもクオリティの高い作品を作ってしまうがために赤字経営になってしまっているのがネックだが、どちらにせよ作品が素晴らしいことに変わりはない。今後は『トップをねらえ!』とか『彼氏彼女の事情』とかも視聴していきたいと思う。

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