【大雪海のカイナ ほしのけんじゃ感想】地球化の鍵は太陽光

大雪海のカイナほしのけんじゃ

今回は『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ(以下、劇場版大雪海のカイナ)』について語っていく。

『大雪海のカイナ』はポリゴン・ピクチュアズのアニメオリジナル作品で、2023年冬クールに放送された。そして、それから半年後の2023年10月に『劇場版大雪海のカイナ』がソニー・ピクチャーズの配給で公開される。

アニメ制作会社はポリゴン・ピクチュアズが担当した。

目次

『劇場版大雪海のカイナ』の評価

※ネタバレ注意!

作画82点
世界観・設定83点
ストーリー80点
演出80点
キャラ73点
音楽75点
※個人的な評価です

作画

今回は映画館で視聴したわけだけれど、作画のクオリティはまずまずだった。近年のハイクオリティな3DCGよりは劣るだろうが、十分に楽しめるぐらいのクオリティは担保されていた。戦闘シーンも迫力があったし、3DCGだから、細かい動きもしっかり映像化されている。改めて視聴すると、やっぱり雪海の表現がおもしろい。

世界観・設定

『大雪海のカイナ』の世界観が一気に解説された感じ。精霊の話とか天膜の話は、メッセージ性が強烈だった。世界観についてはあとでじっくり解説しようと思う。

ストーリー

約2時間の尺だったけれど、ストーリーは全く飽きなかった。別に過激なストーリーというわけでもないし、むしろかなりシンプルなストーリーなのだけれど、なぜか飽きない。これは僕の推測だが、プレスコで制作されているからだと思う。先に声を録って、そこから映像を作っているから、ストーリーを自然な感覚でインプットできているのかもしれない。

演出

カイナとリリハによって地球化が解除される際の演出は、とても美しかった。だからこそ、あの場面はもっとじっくり、具体的には4分ぐらいかけても良かったんじゃないかというのが正直なところだ。

キャラ

なんだかんだでキャラクターがいい。プレスコだから声と演技がノッてる。

音楽

主題歌はヨルシカの『月光浴』。まあ良くも悪くも無難な主題歌だった印象を受ける。というかヨルシカってこんなバンド寄りのサウンドだったっけ?笑 もっと電子音をガンガン使うイメージがあった。

『劇場版大雪海のカイナ』の感想

※ネタバレ注意!

世界観がより深掘りされる

『大雪海のカイナ』の魅力は、やはり世界観にある。世界観が独特で、美しくて、メッセージ性が強い。

TVアニメの『大雪海のカイナ』では”精霊”については謎のままだったが、今回の『劇場版大雪海のカイナ』で、それがほとんど明らかになった。精霊というのは地球の化身のようなもので、この精霊は「人の心を知る者」のみを受け入れるのだ。

そして『大雪海のカイナ』の世界は、古代の賢者が”地球の美しさ”を取り戻すために作り出した者で、具体的には、おそらくだが、天幕を作って太陽光をコントロールし、雪海で大地をコントロールすることで、地球環境の健全化を推し進めたのだと考えられる。

個人的には、虫の扱いがとても面白かった。ビョウザンは嫌悪感を示して虫を殺そうとするが、実際問題、虫は地球の健全化のために必要な存在だった。思えば、我々人間はなぜか虫に対して嫌悪感を示しているが、生態系や昆虫食の観点で見れば、虫は明らかに地球の健全化に必要な存在である。もちろん植物(軌道樹)も然りだ。そう考えると、やはりビョウザンのやり方は間違いだったと言わざるを得ないだろう。たしかに”代替案”としては十分に考えられるが、ベターな選択肢ではない。

鍵は太陽だった

ストーリーを見る限り『大雪海のカイナ』の世界では、自分たちが”地球”という星に住んでいることを理解していないようだった。そもそも宇宙や太陽の存在を認識していなかったようにも思える。その程度の科学理解度だったというわけだ。

たしかに『大雪海のカイナ』の世界では、空が一切なかった。天気は基本的に曇り。基本的には雪しか降らない。晴れと雨がない。そのため「植物を育てる」という考え方もなかった。なぜなら太陽光が入ってこないし、それに加えて水も不足しているから。リリハが”種”を知らなかった点からも、これは明らかだろう。

また、改めてみると、軌道樹の形は実に不思議だ。海の底にある大地に根を張っているのはわかるが、そういえば軌道樹は天幕にまで根を張り巡らせていた。これはおそらくだが、太陽の光を浴びるためではないだろうか。だから、あの形状だった。

カイナとリリハの地球化解除とは、端的に言えば、太陽光を取り込むことだった。ラストでは大雪海が大胆に変化していく様が描かれたが、実際は、太陽光の登場により、水の循環システムが再起動するというのが地球化解除の本質だと思う。太陽光があるから、海が蒸発して、雲ができて雨が降る。この当たり前の事実を再確認させられる世界観だった。

いったいなぜ古代の賢者たちが地球化を実施したのかは上手く推察できないが、おそらく僕たち現代人のように、地球環境を傷つけるようなエネルギー活動の末に、地球がボロボロになり、やむを得ず地球化プロジェクトを始動したのだろう。

さいごに

『劇場版大雪海のカイナ』にて、世界観の全貌が明らかになった。自然科学をベースにしたSF作品となっていて、現代社会に蔓延る環境問題に対するメッセージにもなっているのが興味深い。

そして『劇場版大雪海のカイナ』は、出資先を見ても、どう考えても海外顧客をメインターゲットにした作品で、多分、それ相応の評価がなされると思う。これぞ、隠れた名作だ。

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