『推しの子2期』感想:動画工房が作り出す圧巻の映像美

推しの子
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『推しの子2期』について分析してみる。

『推しの子』は、『かぐや様は告らせたい』の赤坂アカ先生が原作を務める漫画が原作で、TVアニメ1期が2023年春クールに放送される。そしてTVアニメ2期が2024年夏クールに放送された。

アニメ制作は動画工房が担当している。

目次

『推しの子2期』の評価

※ネタバレ注意!

作画91点
世界観・設定・企画84点
ストーリー84点
演出88点
キャラ85点
音楽85点
※個人的な評価です

作画

TVアニメ1期よりも圧倒的に作画がいい。2.5次元舞台がテーマになっているのだが、その舞台の戦闘シーンでめちゃくちゃいい作画を見せつけてきた。エフェクトもめちゃくちゃ効かせているし、純粋な作画やカメラワークも、劇場版クオリティだったと思う。

戦闘シーンは、動画工房が得意としている分野ではないが、流石の技術力である。映像表現だけで十分に楽しめた。

世界観・設定・企画

今回は2.5次元舞台がテーマ。僕は2.5次元舞台にあまり興味が無かったのだけど、今回の『推しの子2期』で2.5次元舞台についてそれなりに知れた気がする。そして『推しの子2期』が放送されたあとのタイミングで、実写ドラマや2.5次元版の『推しの子』をプロモーションしているのも「策士だなぁ」と思った。

ストーリー

SNS上でも指摘されていることではあるが、かなり冗長的なストーリーだったと思う。2.5次元舞台の中で、登場人物の心情を深掘りするストーリー構成になっている。テンポ感は悪かった。だが、その穴埋めとして、実に様々な映像表現が用いられていたので、結果オーライだと個人的には思っている。

演出

映像表現が素晴らしかった。手書きアニメにしかできない演出だらけで、特に2.5次元舞台編では、立川穣の『BLUE GIANT』や『モブサイコ100』を彷彿とさせる”エフェクトを駆使した演出”が印象に残った。この映像表現および色彩表現は、スマートフォンで見るのが勿体無いレベルであった。

キャラ

ラブコメ展開が激アツ化した結果、有馬かなと黒川あかねの魅力が激増しした感じがする。やっぱりどんなジャンルの作品でも、ラブコメ展開がヒロインを魅力的にするのだと思う。

また、想像以上にアクアの葛藤が描かれるのが印象的。『コードギアス』のルルーシュみたいに振り切っているわけではなく、あくまでも人間としてのアクアが描かれているから、割と共感しやすい。

音楽

OPの『ファタール』もEDの『Burning』も悪くはないし、めちゃくちゃいいのだが、やっぱりTVアニメ1期の『アイドル』と『サインはB』が強烈すぎた。結局、歴史に残るアニソンというのは、J-POPアーティストだろうがアニソンアーティストだろうが、アニメ作品との親和性が高い楽曲なのだと思う。

『推しの子2期』の感想

※ネタバレ注意!

動画工房がめちゃくちゃいい仕事をしている

これまで萌えアニメで定評のあった動画工房は、『推しの子』以前でメガタイトルを手がけたことがなかった。だが、KADOKAWAの完全子会社となり、ちゃんとした予算で『推しの子』を制作することになった結果、萌えアニメやアイドル的なダンスパートだけでなく、戦闘シーンでも凄まじい映像表現を発揮できるようになった。

『推しの子2期』における2.5次元舞台の映像表現は、事実上の戦闘シーンである。また、TVアニメで2.5次元舞台を描いていることから、実写ドラマでは不可能な大胆なカメラワークも可能になっている。

僕の理解では、元請け会社としての動画工房が注目されるようになったきっかけは『ゆるゆり』にあると思っているのだけど、思えば『ゆるゆり』の第1話も大胆なカメラワークが印象的だった。「アニメにしかできないこと」を理解している動画工房だからこそ、『推しの子』は大ヒットしたのだと改めて感じさせられた。

今回の『推しの子2期』ですごかったのは、近年のアニメで見受けられる「エフェクト頼りの映像」ではなく、ちゃんと作画でも勝負していたことにある。やはり、カメラワークをガンガン動かす状況での作画は、相当の技術力が求められる。改めて動画工房が『推しの子』を作ってくれて良かったなぁと思う。

『推しの子』が2.5次元舞台を急速に広める?

『推しの子』が素晴らしいのは、なんだかんだで芸能界やコンテンツについて学べるところにある。これは、あくまでも「芸能界の闇を暴く」ということではなく、実際に『推しの子』をきっかけに「実写ドラマや2.5次元舞台を見よう!」と思えるところが素晴らしい。実際に『推しの子』自らが実写ドラマや2.5次元舞台を展開することで、メディアミックスの可能性を多くの視聴者に届けることに成功している。

実際に僕も『推しの子』がきっかけで、2.5次元舞台に強い興味を持つようになった。360度回転型劇場なんて知らなかったし、ぜひとも行ってみたいと思った。

2.5次元舞台は、宝塚歌劇団の影響からか、どうしても女性の方が割合としては大きくなると思うけど、今回の『推しの子』をきっかけに、舞台に興味を持つようになった男性も多いのではないだろうか?

少しファンタジー要素が入ってきた……

『推しの子2期』のミュージックビデオ撮影編で、事件の真実を知ると思われる謎の人物が登場。ルビーにしか見えない存在として描かれたことから、ファンタジー要素が入ってきた感じである。

僕の理解では、『推しの子』が大ヒットになった理由の1つに、サスペンス要素があると思っている。「一体誰が犯人なのか?」というちょっとした謎解きっぽい雰囲気が、続きが気になる仕掛けになっているように思う。

この場合、重要なのはリアリティであることは言うまでもない。もしもファンタジー的なトリックで犯人が描かれてしまうと、途端に緊張感が無くなり、味気ないストーリーになってしまう。だから、このタイミングでファンタジー要素が入ってしまうのは、ちょっと怖い。

だがよくよく考えてみれば、そもそも転生している時点で、リアルもクソもない。それに『推しの子』が本当にやりたいことは、まさに『アイドル』の歌詞にもある通り「嘘と愛」だと思う。嘘で塗り固められた星野アイが子供達を心の底から愛していたように、当初は黒川あかねを利用していたアクアも、偽物の関係から本当の関係になろうとしている。

ここが本筋なので、まあちょっとぐらいファンタジー要素が入ってきても問題ない。今のところ、シェイクスピアの『マクベス』ぐらいのちょうどいいバランスになっていると思う。

さいごに

『推しの子』の原作漫画が完結したらしい。そして賛否両論のエンディングを迎えたらしい。

普通だったら、動画工房が作り出すアニメのクオリティが素晴らしいので、そのままアニメ勢として『推しの子』を楽しむところだが、やはり『推しの子』はファンの数が多い。いつどこでネタバレを喰らうかわからない。ということで、アニメが再開する前に原作マンガを読もうと思う……。

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