今回は『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲(以下、ミュウツーの逆襲)』について語っていく。
『ミュウツーの逆襲』は1998年に上映されたアニメ映画で、『ポケモンシリーズ』の劇場版第1作目でもある。
アニメ制作はOLMが担当した。
『ミュウツーの逆襲』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 80点 |
世界観・設定 | 80点 |
ストーリー | 78点 |
演出 | 70点 |
キャラ | 75点 |
音楽 | 80点 |
作画
僕としては久しぶりのセルアニメ。
そして『ミュウツーの逆襲』に限らず、『ポケモン』は様々な動物(ポケモン)が登場するわけで、それぞれで動き方が全く違う。例えばギャロップであれば、それは事実上、馬の作画をすることになる。もちろん、アニメーターの大半は人の動きを手掛けることは多いけれど、動物の動きを手掛けることは滅多にない。僕が『ポケモン』のアニメーションの動きを見る際には、まずそこに注目する。
そして『ミュウツーの逆襲』のポケモンの動き方は非常にリアルだった。特にコピーポケモンが機械から出てくる時の動きは、本当に素晴らしかった。
世界観・設定
劇場版第1作目ながら、ポケモンと人間の関係性にメスを入れた設定となっている。また、クローンなどの倫理的な問題にも触れられていた。子どもだけでなく、大人も考えさせられる世界観だったのは間違いない。
ストーリー
全部で85分という比較的短めな尺だったけれども、普通にまとまっていたと思う。それで初めて『ミュウツーの逆襲』を視聴した小学生の当時は、もっと壮大なストーリーだったイメージだったけれど、こうして改めてみると、思ったよりも規模の小さいストーリーだったのだなと思う。
また、終盤の展開はちょっと奇跡に頼りすぎかなぁという感じ。まあでもそれは、キッズアニメだから妥協せざるを得ないだろう。
演出
やはりポケモンの動かし方が良い。それにポケモンバトルのシーンも、ちゃんと動いているし、とても丁寧に描かれている。これはこれで、セルアニメだからこそやりやすいことなのかもしれない。
キャラ
やっぱりこうして改めてポケモンをみると、ポケモンのデザインを担当した人は天才だなぁと思う。僕はいま22歳だけれども、今でもポケモンの名前とか姿とか覚えてるし。
音楽
主題歌の『風といっしょに』は、中々の良曲。というか『ポケモン』というキッズアニメに対して、小林幸子の楽曲を起用するのがいい。多分子どもたちからしたら「?」だけれど、こうして大人になってから改めてみると、いろいろと心に沁みる。
『ミュウツーの逆襲』の感想
※ネタバレ注意!
クローンというより生命観
僕が初めて『ミュウツーの逆襲』を視聴したのは、多分、小学3年生ぐらいの頃(2008年ごろ)だ。当時は親がTSUTAYAからDVDをレンタルしてきてくれて、それを視聴する日々を送っていた。それで一時期、ポケモンのアニメ映画を視聴しまくっていたのだ。
それで当時はなんとなく『ミュウツーの逆襲』を視聴していたわけだけれど、ストーリーが衝撃的だったし、アルセウスが登場するまではミュウツーが最強ポケモンの位置付けにいた。だから作品の内容自体はよく覚えている。
そして高校生や大学生になる頃には「『ミュウツーの逆襲』はクローンを設定に描いたものだ」という考えを持つようになった。僕もやっと大人になったらしく、『ミュウツーの逆襲』が大人でもそれなりに楽しめる作品であることを実感できた。
それから僕がアニメに激ハマりして、そこで改めて『ミュウツーの逆襲』を視聴してみた。そしたら、クローンというよりは生命観を描いた作品であることに気づく。
たしかに『ミュウツーの逆襲』は、ポケモンを人間が作るというクローン技術が目立つ作品だ。しかしミュウツー自身が抱いていた疑問は、クローンというよりもさらに広い「生命の誕生」という部分だ。
例えば僕たち人間のほぼ全員は、生まれたいから生まれてきたわけではない。親が産みたいから僕たちは生まれてきたのだ。つまり、親のエゴによって僕たちは生まれたのである。
この場合、僕たちは何のために生きるべきなのだろうか。親のために生きるのだろうか。ミュウツーの立場から言ってみれば、ミュウツーを作り出した研究者のために生きるべきなのだろうか。
それは違うだろう。親が産みたいから僕たちは生まれてきたわけだけれど、自分の命は自分のものであり、人生も自分だけのものだ。だから自分がやりたいことをやればいい。そんなことを僕は『ミュウツーの逆襲』から感じ取った。
AIが普及する世界でのポケモンはどうなる?
現在、僕たちがプレイしている『ポケモン』では、”厳選”という概念が存在する。ポケモンには各個体に”個体値”という隠しステータスが存在しており、なるべく高い個体値を保有しているポケモンを取り揃えておくことが、ポケモンバトルにおいて重要になるのだ。
さて、そんな厳選だが、基本的には大量に卵を孵化させることで、個体値の高い個体を厳選していく。まあ、競馬の競走馬みたいなものだ。個体値の高い個体同士で孕ませて卵を産ませることで、優れたポケモンを作り出している。
もちろん、これは『ミュウツーの逆襲』の問題提起と丸かぶりな案件だ。だが所詮はゲームの中の世界だから、特に大きな問題になることもない。
しかしもしAIが普及したらどうなるのだろう。例えばポケモンが、まるで本物のペットのように振る舞うようになったらどうなるのだろうか。それがデジタル世界であればゲームと同じように乱雑に扱えるのだろうが、テクノロジーが発展し、現実世界でもポケモンを展開することができるようになったら、一体僕たちはどのような行動を起こすようになるのだろうか。
動物愛護団体のように、ポケモン愛護団体のようなものが誕生するのか。そもそもAIに対してどのように扱うべきかが真剣に議論されるようになるだろう。そしてこれは、そう遠くない未来に訪れる出来事なのではないかと僕は考えている。
もしこの未来が訪れたら、改めて『ミュウツーの逆襲』がクローズアップされるはずだ。『ミュウツーの逆襲』は原点とも呼べるポケモン映画だが、個人的に、『ポケモン』は原点に立ち返るべきだと思っている。
さいごに
2023年3月でサトシが主人公となるTVアニメ『ポケモン』が終了するということで、各動画配信サービスで『ポケモン』のアニメ映画がほぼ全作品公開されている。しかも全てフルHDに対応してるっぽいので、一度ポケモン映画を制覇した人も、あらためて視聴する意義が十分あると僕は思う。
ということで、僕はこれを機に、ポケモン映画全作品を視聴していこうと思う!