今回は『劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 裂空の訪問者 デオキシス(以下、裂空の訪問者デオキシス)』について語っていく。
ポケモン映画第7作目となる『裂空の訪問者デオキシス』は、2004年に上映された。アニメ制作はOLMが担当している。
『裂空の訪問者デオキシス』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 82点 |
世界観・設定 | 80点 |
ストーリー | 80点 |
演出 | 77点 |
キャラ | 75点 |
音楽 | 80点 |
作画
作画のクオリティはかなり高かったと思う。特にポケモンたちの日常の描き方が秀逸。『裂空の訪問者デオキシス』から当分の間、短編映画との同時上映がなくなっているので、その埋め合わせとして日常シーンが描かれたのだと考えられる。
また、これまで以上に3DCGを活用していた。『裂空の訪問者デオキシス』では”群れ”を描くシーンが多く、そこで3DCGが採用されていたのだ。3DCGのクオリティは微妙だったけれど、ヒキの構図で上手くごまかせているし、2004年上映であることを考えれば十分だろう。
そしてデオキシスやレックウザの動きが印象的だった。デオキシスはフォルムチェンジが可能なポケモンだけれど、その動きがとてもスムーズ。またレックウザは、まさにドラゴンのようなデザインのポケモンなのだけれど、ウネウネと動いていた。
世界観・設定
これまでのポケモン映画は自然豊かな場所が舞台になることが多かった。しかし今回の『裂空の訪問者デオキシス』はハイテクシティが舞台。これまでのポケモン映画とは全く異なる舞台設定だと言える。
また、『裂空の訪問者デオキシス』は全体的にポップな世界観だった。登場人物も非常に多い。
ストーリー
“友情”をテーマにしたストーリーだった。孤独だったデオキシスとトオイが上手くシンクロしている感じが秀逸。
また、ちょいちょい挟まれるゴンベも普通に面白かった。
演出
『七夜の願い星ジラーチ』と同様に、主題歌をモチーフにした楽曲を挿入する演出が多用された。主題歌が、印象的なメロディーの楽曲なので、この演出との相性が良い。
キャラ
『裂空の訪問者デオキシス』は、これまでのポケモン映画の中でも最多のゲストキャラを誇る作品で、とても賑やかだ。そしてこれが、物語の根幹を握る”友情”に深く関連しているのは言うまでもない。
音楽
あまり注目されないのだけれど主題歌の『L・O・V・E・L・Y 〜夢見るLOVELY BOY〜』が名曲。というか個人的に好き。
ユーロービートの電子音が、先進的なハイテクシティであるラルースシティと、宇宙の雰囲気に合っている。それに「友情」がテーマとなっている本作を反映させた歌詞になっているのも良い。
ラストのピカチュウVerも良いけれど、個人的には中盤で挿入されていた時の方が印象に残った。
『裂空の訪問者デオキシス』の感想
※ネタバレ注意!
電気への依存を警告しているストーリー
これまでのポケモン映画は、気候変動など、人間に対する危機を警告するストーリーが組み込まれていた。そして今回も例外ではないし、むしろ非常に印象的だ。
『裂空の訪問者デオキシス』では、最先端技術が集結したラルースシティが舞台となっている。これはバンクーバーが舞台になっているようだけれど、電気を主エネルギーにしているという点では、東京やニューヨークなども当てはまるだろう。
そして『裂空の訪問者デオキシス』では、実際に電気がストップし、最先端技術が暴走する様子が描かれた。これは、電気に依存している我々人類に対する警告だと考えていいだろう。
また、この事件を、宇宙から飛来してきたデオキシスが引き起こしたのも印象的だ。当時も今も、太陽フレアによる大規模な通信障害が懸念されている。自然災害は地球規模だけでなく、宇宙規模で考えなければいけない。もし世界的な通信障害が発生したら、とんでもないことになるだろう。
そして『裂空の訪問者デオキシス』では、これらのトラブルを人力(とポケモンたち)による発電で解決した。これがどこか、エネルギー問題にも触れているように思える。だが残念ながら2011年の3.11(なんと本記事投稿日が3月11日!)で原発問題が表沙汰になってしまった。
たしかにマクロレベルで見れば、原発は絶対に必要で、そのためにも研究開発を推し進めてより安全で小型な原発を作り出す必要があると僕は考える。だがミクロレベル、つまり個人の取り組みとしてはどうだろうか。可能な限り、エネルギーを自給自足してもいいのではないだろうか。
流石に『裂空の訪問者デオキシス』のように人力発電は無茶があるけれど、もう少しスマートな形で自家発電する方法はいくらでもあるはずだ。
個人的に一番想い入れのあるポケモン映画
現時点では、個人的に一番想い入れのあるポケモン映画は、間違いなく本作だ。
まず主題歌がとにかく好きなのである。ポップな雰囲気を醸し出しながらも、どこか懐かしさを感じるメロディーが、僕好みだ。
それに全体的に明るい雰囲気でストーリーが描かれているのも印象的だった。そもそも本作では、明確な敵が存在しない。これまでのポケモン映画は、何かしらの形で明確な敵キャラが存在していたと思う。『結晶塔の帝王エンテイ』が少々微妙な立ち位置だけれど、それ以外は全て明確な敵キャラ……というか人間の悪意が存在している。
しかし『裂空の訪問者デオキシス』では、人間の悪意がほとんど登場しない。だから個人的に、気分よくアニメを楽しむことができている。だからといってメッセージ性がないわけではなく、電気への依存の危険性を問題提起しているのもグッド。
あと『時を超えた遭遇セレビィ』『水の都の護神』『七夜の願い星ジラーチ』と続いた感動を煽る演出も、本作ではだいぶ低減されていたのが個人的に良かった。だからといって『裂空の訪問者デオキシス』で感動できないわけではなく、2体目のデオキシスが誕生するシーンや、EDで一人一人別れていくシーンなんかは、とても心に残った。
正直なところ『裂空の訪問者デオキシス』は、ポケモン映画の中であまり注目されていない作品だ。でも僕にとっては強烈に印象に残っているし、実際、作画のクオリティもかなりハイレベルだと感じている。
さいごに
『裂空の訪問者デオキシス』の次は『ミュウと波導の勇者ルカリオ』だ。しっかり視聴して、感想をブログにしたいと思う。