劇場アニメ『映画大好きポンポさん』(ポンポさん)評価:感想→名作です

星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『映画大好きポンポさん(以下、ポンポさん)』について語っていく。pixivに投稿されたWeb漫画が原作となっていて、それをアニメ制作会社のCLAPが劇場化している。原作があるとはいえ、劇場オリジナルアニメと言っても過言ではない作品だ。「映画作り」がテーマになっていて、アニメ好きの人には結構オススメの内容に仕上がっていた。

目次

『ポンポさん』の感想

感想①:「これぞアニメ!」って感じ

ここ最近、「原作をアニメにしてみました〜」って感じの作品が増えている。とりあえず低予算で映像化して原作のプロモーションにするみたいな感じにだ。
それでアニメが面白そうなストーリーであれば、原作も購入してみる。多くのアニメファンはこんな感じに購買行動をしていると思う。

しかしそれはアニメ界としてはすごくもったいないことだ。素晴らしいクオリティでアニメを作ることができるのに、お金や権力の問題でそれが中々出来ていない。
普通に考えて、白黒の文字と絵しかない漫画・ラノベという媒体と、映像・色・音楽を活用できるアニメという媒体だったら、アニメの方が面白くなければならないはずだ。だがここ最近はあまりにも、”原作の方が面白い作品”が多すぎる。

『ポンポさん』の原作を僕は読んでいないが、劇場アニメの方が絶対面白いと思う。漫画にはできないような演出をアニメでやり遂げている。作中では「映画における編集の重要性」が強調されていたように思えるが、それはアニメでも同じだ。原作通りにアニメ化することはもちろん大切だが、さらに面白くなるような演出にも挑戦するべきなのだ。そういう意味でも『ポンポさん』は、現代のアニメ好きの心に刺さるものだった。

感想②:一種のクリエイター論

『ポンポさん』は一種のクリエイター論について語っていた。

主人公のジーンは根暗だけど映画がめちゃくちゃ大好きな人間。というか映画が好きすぎて現実逃避してしまった人間だ。
一方、ジーンの対比のキャラとしてアランが登場していた。アランは学生時代までは陽キャでなんでもそつなくやれてしまう人間だった。しかし、社会人になって銀行マンになると、仕事が上手く行かなくて苦労しているようだった。

『ポンポさん』のキャッチコピーにも「幸福は創造の敵」とあるように、クリエイターに向いている人間は、根暗で現実逃避して自分の中で世界を作り上げてしまうような人間だとポンポさんは定義していた。となると陰キャはクリエイター向きということになる。

確かに『エヴァシリーズ』の庵野秀明監督とかまさにそんな感じな気がする。とにかく自分の世界に浸って、それを『エヴァンゲリオン』に落とし込んでいた。それぐらいのレベルまで突き抜けてしまえば、素晴らしい作品を作り上げてしまうのかもしれない。

感想③:キャラの作り込みがいい

『ポンポさん』はキャラがかなり良かった。推しとかそういう意味ではなく、作品を引き立てるためのキャラの作り込みがされていた。だからグッズが飛ぶように売れるわけではないけど、作品のクオリティとしては必要不可欠なものだった。

まずポンポさんがめちゃくちゃ可愛い。実はなんだかんだでポンポさんの葛藤というのは、そこまでしっかりと描かれてはいなかった。あえてマスコット的な立ち位置になっていたのだ。「ポ〜ンポさんがきーたぞー!」というフレーズは今でも頭に残っているし、頭に残るように何回もセリフにしていたのだと思う。

それとヒロインの新人女優のナタリーの作り込みがヤバい。新人女優感を引き出すために、現実の若手モデルをナタリーの声優に起用しているのだ。声優未経験感がとても強いのだけれども、それが逆に良い。
ちなみに主人公のジーンの声優も、若手俳優が担当しているのだが、結構演技が上手かったので新人監督感はあまり出てなかった。笑

『ポンポさん』の評価

作画90点
世界観・設定70点
ストーリー70点
演出89点
キャラ80点
音楽70点

作画

作画は現代アニメの中でも「妥協してないな〜」と感じるぐらいのクオリティ。

世界観・設定

映画クリエイターの裏事情を少しわかりやすく表現した設定。キャラの関係図とか良かったよね。

ストーリー

90分という短い時間の中でうまくまとめていた。まあ作中で「90分以内じゃないダメ!」って言うぐらいだからね。

演出

飽きさせない演出だった。一つのアニメとして演出が完成されている。

キャラ

どのキャラも個性があっていい。ポンポちゃんもなんだかんだで可愛かった。

音楽

BGMは良かった。BGMを交えたかっこいい演出もあったし。歌詞付きの曲はちょっと微妙…。

さいごに

『ポンポ』の作品のクオリティは非常に高かった。これぐらい妥協しないでアニメ制作できれば、どんな原作でも名作に仕上がると常々思う。

そして『ポンポ』は間違いなく名作なのだが、残念ながら一部のアニメ好きにしか視聴してもらうことができていない。ちゃんとしたアニメが制作されないのは、我々視聴者が原因なのかもしれないな…。既得権益なんかに負けず、素晴らしい作品が受け入れられる時代になってほしいものだ。

この記事をシェア
目次