竜とそばかすの姫(映画)評価:感想→音楽のセンスがもう少し良ければ…

今回は『竜とそばかすの姫(以下、竜そば)』について語っていく。『時をかける少女』や『サマーウォーズ』で有名な細田守監督の長編オリジナル作品で、カンヌ国際映画祭でも上映された。IMAX版も公開されており、僕はIMAXを視聴させてもらった。

目次

『竜そば』の感想

感想①:テーマがブレてる?

『竜とそばかすの姫』を視聴して「テーマがブレてるなぁ」と感じてしまった。細田守作品はファミリー層向けの作品となっているのだが、よくよく考えてみたらファミリー層向けの作品って老若男女楽しませなければいけないわけで、それってとてもハードルが高い気がする。最近だと『鬼滅の刃』が大ヒットしてたわけだけど、終始テーマがブレることはなかった。まあ、漫画原作だからだと思うが。

竜とそばかすの姫』のように劇場オリジナルアニメで、しかもファミリー層向けの作品で、テーマを1つに絞り込むのってとても難しいのだろう。

序盤は、主人公の鈴がBELLとなって歌姫になるエピソードだったが、これを見て僕は『映画大好きポンポさん』を思い出した。「クリエイターは自分の世界に浸っているからこそ最高の作品を作り出すことができる」というのを『ポンポさん』は教えてくれたのだが、それが垣間見えたのが本作の序盤のエピソードだった。だから僕は「『竜とそばかすの姫』もクリエイター系の作品なのではないか?」と期待していたのだが、そこから急にテーマがブレる。今度はSNSにおける匿名性がテーマになったのだ。そしてラストは王道のボーイミーツガールをやり始める始末。

記号性とか何にも考えない子ども達であれば『竜とそばかすの姫』の世界観に浸りきって楽しめるのだろうが、僕みたいな大人が『竜とそばかすの姫』の世界観に入り込むには、それなりのエネルギーが必要だった。メッセージ性は感じることができるし、名作なのは間違いないけれども、少し見辛い作品だなと感じた。

感想②:細田作品は見ていてやっぱり飽きない

とはいえ流石、細田守作品。見ていて飽きることは一切なかった。細田守作品といえば、登場人物に影を一切つけない表現方法が用いられていることで有名だが、本作の場合、デジタルワールドの中では影を付けまくっていた。そのメリハリがとてもセンス良く、ここまでメリハリのある作画で表現していた作品って中々ないと思う。

強いていうなら『サマーウォーズ』並にワクワクさせてくれるデジタルワールドだったらもっと良かった。なんかちょっと違うんだよな、あのデジタルワールド。

感想③:音楽・演出のセンスがあとワンランク上をいけば…

本作は主人公が歌姫になるということもあり、音楽がテーマになっている作品だ。音楽がテーマになっている以上、楽曲そのもののクオリティが高くなくてはならない。実際、『竜とそばかすの姫』の楽曲は中々のクオリティではあった。しかし、特別センスが良いわけではなかった。

ここでもまた『鬼滅の刃』にはなるが、『鬼滅の刃』の中でも『竈門炭治郎の歌』は凄まじいものがあった。僕の大好きな作品の『けいおん!』も、あまりにもセンスが良すぎて鳥肌が立ってしまうぐらいだ。

一方で『竜とそばかすの姫』はどうだろうか。僕はIMAXで鑑賞していたから音楽にはのめり込むことができていたものの、どこか感情移入できない。一つ言っておくが、挿入歌において重要なのは歌詞ではなくメロディーだ。しかし、本作の挿入歌はどうも歌詞で感情移入を誘おうとしている。映像を見ながら歌詞で涙を誘うのはとてつもなくレベルの高いことだと僕は思っている。僕がメロディー派だからというのもあるのかもしれないが、歌詞に集中してたら映像に気が向かなくなる。どちらもしっかりインプットするのって、脳の作り的に難しいはずだ。

『竜そば』の評価

作画88点
世界観・設定75点
ストーリー75点
演出70点
キャラ80点
音楽79点

作画

作画はとても良かった。流石、細田守作品。ただ、夏らしさはなぜかあまり感じなかったなぁ。

世界観・設定

世界観は面白い。ただ、デジタル世界の作り込みがちょっと微妙。

ストーリー

どこがクライマックスなのか…。これが少し曖昧だったが、飽きずに見ることはできた。

演出

演出はとても良かったと思う。ただ、涙を誘えるような素材だったはずなのに、ちょっと押しが弱かった気がする。

キャラ

キャラはよくできていたし、関係図も面白い作品だと思う。

音楽

音楽は良かったけれども、「音楽をテーマにしてる割には…」と感じてしまった。僕がハードルを上げすぎただけかもしれない。

さいごに

今までの細田守作品とは少し違う雰囲気だったが、日本の伝統的なアニメの面白さを感じることができた。次回作がどれくらい後になるか分からないが気長に待とうと思うし、過去作も振り返ってみようと思う。

この記事をシェア
目次