『天穂のサクナヒメ』の感想:気づけば米を食べていた

天穂のサクナヒメ
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

『天穂のサクナヒメ』を鑑賞した。思えば2024年夏クールは当初、P.A.WORKSが3作品制作するということで話題になっていたけど、結局、最後まで話題になることはなかったと思う。

『天穂のサクナヒメ』は2020年に発売されたインディーズゲームが原作で、アニメ制作はP.A.WORKSが担当した。

目次

『天穂のサクナヒメ』の評価

※ネタバレ注意!

作画70点
世界観・設定・企画68点
ストーリー70点
演出70点
キャラ50点
音楽70点
※個人的な評価です

作画

アニメ政策がPAワークスということで、作画崩壊はほとんどなく、カメラワークや画面構成もスムーズだった。一方で、全盛期のPAバックスほどの凄みはない。多くの視聴者にとっては、味気ない作画に感じられたと思う。

世界観・設定・企画

もともとはインディーズゲームが原作で、それをアニメにする企画自体はおもしろい。本作は、稲作がテーマになっていて、日本古来の神道的な設定が多め。

ストーリー

ストーリー自体は起承転結がしっかりしていて、複数のエピソードが絡み合っていたので、テンポ感はいい。それにPAワークスらしく、煽りが一切感じられないのもいい。だが、やはり刺激は薄い。

演出

画面構成やカメラワークに関しては、基本的なものが多く、全体的にナチュラルだったと思う。特に1話の演出はおもしろかった。だが、やはり刺激は薄い。

キャラ

全体的に不思議なキャラクターの構成で、インディーズゲームって感じがする。一応、各キャラで深掘りはされている。

音楽

OPはいきものがかりの『晴々!』でEDはリトグリの『ORIGAMI』。大物アーティストのタイアップなのはちょっと意外かも。

『天穂のサクナヒメ』の感想

※ネタバレ注意!

インディーズゲームであれば感情移入してた?

正直、感情移入ができなかった。

原作のインディーズゲームの方は中々に評判がよく、アニメ自体も悪くはないのだが、感情移入ができなかったので、特に感動することもなく終わってしまったのが個人的な感想だ。

基本的にゲームは、自分がプレイヤー目線になれるから、感情移入できる側面がある。水田が台無しになってしまったショックも、自分で手間暇かけてプレイしたからこそ得られるものだ。でも本作のアニメは、テンポが良かっただけに、努力が水の泡になってしまうシーンも、そこまで気持ちが動かなかった。

最近のP.A.WORKSの印象

僕はまだ『菜なれ花なれ』や『真夜中パンチ』の視聴が終わってないのだけど、どうも最近のP.A.WORKSは難しいところにいると思う。

『true tears』から始まり、2010年代前半には『花咲くいろは』『凪のあすから』『SHIROBAKO』などの名作を届けたP.A.WORKSは、その輝きを失いつつある。いや、今もおもしろいアニメは作っている。例えば本作と同じ吉原正行監督のアニメ映画『駒田蒸留所へようこそ』は興味深い内容だったし、『スキップとローファー』も定評のある作品だ。

だがそれでも、やはり2010年代には到達していない感じがある。その最大の要因が、視聴者層だ。アニメのライバルは漫画やラノベやドラマだと言われることが多いが、現代ビジネスは時間の奪い合いで、電車の中でアニメを見ている人が多いことを考えると、アニメのライバルはSNSである。アニメ業界は、それなりに集中力のいる20分ほどのアニメで、ショート動画に強いInstagramやTiktokと戦っていかないといけない。そのためには、刺激的なストーリーや描写が必要なのである。

もちろん、この戦いの場から離れることもできる。本当に質の高いアニメを見たいファンに向けて届けるのだ。しかし実際のところは、「良質」と「刺激」のハイブリッド作品が市場で求められていて、京アニやufotableなどは、そのバランスポイントを見つけるのに成功している。

P.A.WORKSは『true tears』や『SHIROBAKO』のように、視聴者をあまり煽らない作品が得意だから、今のSNS全盛の時代だとちょっと難しい。

また、京アニのようにキャラクターデザインを統一しなかったのも、ちょっと痛い。P.A.WORKSは毎回、キャラクター原案を担当するイラストレーターを変えているから、統一されたノウハウが蓄積されなかった。

米を食べたくなった

僕はあまり炭水化物を取らないタイプの人で、仮に食べるとしても、パスタやラーメンを食べることが多かった。でも本作を見て、久しぶりに米が食べたくなってしまって、今となっては毎日のように米を食べてしまう。

よくよく考えてみれば、米を描くのって結構難しいと思うけど、さすがP.A.WORKS。とても美味しそうな米が描かれていた。

気づけば、僕は『天穂のサクナヒメ』を見ながら炊き立ての米を食べていて、おかげさまで食費もかなり安くなった。

米は、我が国日本にとって極めて重要な食べ物で、日本各地にある神社でも、豊穣の祭が多い。というか、日本の根底にある神道は、米のための宗教と言っても過言ではない。

でも、これが視聴者に届くかどうかは別問題。電車の中でバックグラウンド再生でアニメを見ている人に、文脈は届かないだろう。

さいごに

とりあえずP.A.WORKSは全作品見ると決めているので、今後もPA作品は視聴していきたい。もちろん、過去作でまだ見ていないアニメもあるから、それも見ていく。

『天穂のサクナヒメ』に関しては、僕はゲームをやる習慣がないけれど、一応Switchとかでもプレイできるらしい。気になる方はぜひプレイしてみては?

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