【THE FIRST SLAM DUNKの感想】やっぱり映像化は無理だった?

THE FIRST SLAM DUNK

今回は『THE FIRST SLAM DUNK』について語っていく。

『スラムダンク』は1990年から1996年まで連載された漫画で、TVアニメは1993年から1996年までの間で放送された。当時は東映動画がアニメ制作を担当していたようだ。

そしてTVアニメ放送から25年以上経った2022年12月に『THE FIRST SLAM DUNK』が上映された。アニメ制作は東映アニメーションが担当し、原作者の井上雄彦が監督・脚本を担当した。

目次

『THE FIRST SLAM DUNK』の感想

ネタバレ注意!

やはり映像化は不可能だった?

僕が初めて『スラムダンク』の原作漫画を読んだのは、たしか高校生の頃だったと思う。

『スラムダンク』といえば「諦めたら、そこで試合終了だよ」のイメージが強かったけど、読み進めると印象的なシーンが沢山あることに気づいた。

そしてなんといっても、山王戦である。これがとにかくすごい。「これ以上の試合が描けないから」という理由で連載終了したことや、インターハイ編がアニメ化されないのも納得だ。

山王戦における演出は、極めて高い確率で映像化不可能だと、僕は考えていた。少なくとも、僕には映像化のビジョンが全く浮かばない。多分、『スラムダンク』が好きな人であれば、同じ考えを抱いていると思う。『スラムダンク』の山王戦は、漫画でしかできない演出のオンパレードだった。

だが今回、原作者の井上雄彦が監督を務める形で、この山王戦が映像化されることになった。

「もしかしたらあの演出が期待できるかも……」と思っていた僕だったが、残念ながらその通りになることはなかった。

たしかに、作画のクオリティは極めて高いし、個人的にはシナリオにも満足している。けれども、あの漫画の演出を再現できたとは到底思えない。

というより制作サイドとしても、原作漫画を忠実に再現するというよりは、新しいストーリーとして山王戦を再利用していた印象が見受けられた。

まあどちらにせよ、「あの原作漫画の山王戦の演出は、やはり映像化不可能だった」ということだけが証明された。

『THE FIRST SLAM DUNK』は誰向けだったのか?

『THE FIRST SLAM DUNK』は一体誰向けに作られたのだろうか?

まあもちろん、誰向けに作られたとかそういうのではなく、純粋に作りたいものを作ったのだと思う。しかし、商業アニメであり、しかも絶大な人気を誇る超有名コンテンツであることを考えると、「誰向けに作られたのか?」というターゲティングの要素は見逃せない部分だ。

結論から言うと、『THE FIRST SLAM DUNK』の主なターゲティング層は、TVアニメを見ていないけど原作漫画を読んでいる人だと思う。まあつまりこれは、僕そのものなのだけど。

というのも、アニメはこの30年間で劇的な進化を遂げた。それこそ1990年代のアニメで、現代でも通用するようなクオリティの作品は、本当に数えるほどしかない。少なくとも『スラムダンク』のTVアニメ版は、現代に全く通用しないだろう。

だから今の若者は、昔のアニメを見ない。というより、見れない。90年代どころか、00年代前半のアニメすら見れなくなっているだろう。

だが漫画は、この30年で劇的な進化を遂げたと僕は思わない。確かにスマートフォンの普及で、Webの縦読み漫画が普及したのは革命的だ。しかし一般的な横読み漫画というカテゴリーの中で、何か劇的な進化があったわけではない。

だから90年代の漫画でも、ある程度は現代でも通用するのだ。少なくとも『スラムダンク』は、間違いなく現代でも通用するクオリティだろう。

だから今の若者は、昔のアニメは見れないけれど、昔の漫画は読めるのだ。

おそらく『THE FIRST SLAM DUNK』を快く思っていない人の大半はTVアニメを知っている人で、特に声優変更に対して反感を抱いている印象がある。でも原作漫画しか知らない人は、昔の声優なんて知らないわけだから、ある程度受け入れることができる。

まあ実際のところ、10代〜20代の人でTVアニメの『スラムダンク』を視聴しているのは、かなり少数派だと思う。少なくとも僕は視聴していない。

ちなみに『THE FIRST SLAM DUNK』は、『スラムダンク』初心者を明らかに排除したシナリオだった。

これは商業アニメとしては正解とはいえない気がするけど、まあとにかく原作漫画ぐらいは読んでおけということなのだと思う。

『THE FIRST SLAM DUNK』の評価

作画95点
世界観・設定80点
ストーリー80点
演出80点
キャラ80点
音楽75点

作画

セルルック3DCGのクオリティが非常に高かった。まあそれは『ドラゴンボール超』を視聴したときからなんとなく予想できたことではある。

ただし、原作漫画のあの演出が完全に再現できたわけではなかった。まあでもそれは正直しょうがない。原作漫画の画が凄すぎた。

世界観・設定

湘北対山王をベースに宮城リョータがかなり深掘りされるという世界観。そしてそれは井上雄彦の読み切り漫画である『ピアス』の設定が再利用されているらしい。だから井上雄彦ファンの人はかなり嬉しい内容だったのかも。

ストーリー

湘北対山王の試合に『ピアス』が組み込まれたストーリー。個人的には可もなく不可もなくという感じだ。新しい作品として提供できてはいたけど、原作漫画のシナリオに比べると何ともいえない……。そして色々な名シーンが尺の都合でカットされていたのが痛い。

演出

宮城リョータの回想シーンの演出は全体的に良かったと思う。とても感情移入できた。

山王戦に関しては、背中を痛めた桜木花道がダイビングでボールを獲りに行くシーンと、試合ラストまでのあの息を呑むような演出には圧倒された。ただしそれ以外の名シーンは、原作シーンに比べると微妙。

キャラ

声優にクレームをつける人が多かった印象だけど、僕は原作しか読んでなかった勢なので特に悪印象は抱かなかった。でもまあ確かに、花道の声はちょっと違うな。

それと全体的にキャラデザは良かった。やはり井上雄彦が監督を務めていることもあって、原作漫画に限りなく近いデザインだったのは間違いない。そしてそれを3DCGでアグレッシブに動かしているのがヤバい。この点は絶対に評価されるべきだと思う。

音楽

音楽はちょっと面白かったかも。少なくとも大衆ウケは間違いなく狙っていない。

さいごに

原作漫画だと最終章であるはずの山王戦だが、映画タイトルには『THE FIRST』とある。そのため、続編が制作される可能性が示唆されている。

『THE FIRST』では宮城リョータが主人公だったけど、今後は三井や流川などにも焦点を当てたストーリーが展開されるかもしれない。そうなると個人的に割と楽しみだ。

また、宮城リョータの回想シーンの舞台は竹富島だと考えられる。僕も先日訪れたのだけど、その時は情報が公開されていなかったので巡礼できなかった。また竹富島に訪れる機会があれば、『THE FIRST SLAM DUNK』の聖地巡礼を実施したいと思う。

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