【サマーウォーズ感想】テクノロジーと家族愛の対比を描く

サマーウォーズ

今回は『サマーウォーズ』について語っていく。

『サマーウォーズ』はマッドハウス制作によるアニメオリジナル作品で、2009年に公開された。監督は細田守が担当している。

目次

『サマーウォーズ』の評価

※ネタバレ注意!

作画92点
世界観・設定90点
ストーリー90点
演出90点
キャラ88点
音楽85点
※個人的な評価です

作画

『サマーウォーズ』はOZと現実世界で作画が異なる。OZでは3DCGを活用しつつも、ポップで電子的な雰囲気を作り込むために、非常にカラフル。一方、現実世界は細田守って感じの作画で、相変わらず影を描かない。個人的にはOZの世界観の作り方が好きで、同じマッドハウス制作の『ノゲノラ』も、多分OZを参考にしたのではないかと感じる。

世界観・設定

テクノロジーの進化と大家族をミックスさせた世界観。一見すると全く異なるものに見えるが、実は相反関係にあるのではないかと考えさせられるから面白い。

SNSが登場して間もない頃に『サマーウォーズ』が公開されているので、タイミングはドンピシャ。2023年現在で見ても学べることは多い。個人的にはeスポーツのことを考えてしまった。

ストーリー

僕は『サマーウォーズ』を金曜ロードショーで何度も見たことがあるわけだけれど、上映時間115分があっという間に感じるほど、ストーリーに釘付けになった。子供と大人では、やはり視点が異なってくるものだ。

実際、ストーリーはよく作り込まれている。王道の起承転結で、特に転(陣内栄の死亡)が強かった。

演出

演出は最高に良い。大人になってからわかる演出も多い。

まずOZで印象的なのは、冒頭の説明描写。通常、SF系作品における世界観の説明は退屈になるのだが『サマーウォーズ』はゲーム風の説明だったので、ドキドキワクワクしながら作品に入っていける。世界観の説明はゲーム風に。これは事例になるかも。

また、現実世界でいくと、やっぱり陣内栄と侘助のシーンがよかった。あと、陣内栄と小磯健二のやり取りが心に響く。

キャラ

『サマーウォーズ』は大家族をテーマにしているだけあって、実に多くの登場人物が登場するけれど、程よく個性が強いので、普通に識別できた。なんなら、主人公とメインヒロインより個性が強い。

主人公の小磯健二は、ガッツリ深掘りされているわけでもないのに、なぜか魅力が伝わってくるからすごい。

個人的には自分と侘助を重ねてしまった。多分、僕はこのまま生きていると侘助みたいに後悔しそうな気がする。そういう人は、結構いると思う。失う前に家族を大事にしていきたい。

音楽

主題歌の『僕らの夏の夢』も良いけれど、やっぱり劇伴が良かった。クライマックスに挿入される

『サマーウォーズ』の感想

※ネタバレ注意!

現実世界とネット世界は同じようで全く異なる

『サマーウォーズ』を語る上で、やはりOZに対する感想は外せないだろう。

OZは『サマーウォーズ』におけるデジタル空間で、娯楽・仕事・行政など、様々なことができる。2023年現在、僕たちはインターネットが当たり前に利用できる社会にいて、実際に様々なものがデジタル化されている。実際、僕は仕事も娯楽もお金周りも、そのほとんどをデジタル化している。それなりに楽しい。

一方で『サマーウォーズ』の中では、OZをあまり理解していない登場人物が数多く登場した。特に陣内家の主婦の方々は、OZをゲームの一種としか考えておらず、世界が危機になっていることに最も遅く気づいた。ましてや陣内家当主である栄は、OZを知りすらしないだろう。

でも結局のところ、インターネットは現実社会を完全に代替できない。『サマーウォーズ』の陣内家の動力源は、陣内栄がコツコツと積み上げてきた人間関係だった。こればかりはデジタルに完全代替できなさそうである。

OZのUIデザイン

パソコンのUIデザインは、文字ベースのCUIからグラフィックベースのGUIへと変化。そして近年のAIの発達から、自然言語ベースのUI(ChayGPT)が登場する可能性が出てきている。

どちらにせよUIの進化に伴い、コンピュータを活用できる人が多くなり、また、活用レベルも上昇する。自然言語ベースのUIがより発展すれば、全ての人がAIを活用できるようになるだろう。

では、それでいくとOZのUIとは一体何なのだろうか。僕はOZのUIをWUI(ワールドユーザーインターフェース)と名付けたいと思う。そもそもUIとは人間とコンピュータの接点のことを指すが、それが”世界”になったのがOZである。

OZの世界で印象的だったのが、アバターを食べることで乗っ取りできること。GUIであれば、アバターのパスワードを解析する必要があるが、OZの世界ではアバターを行動不能にして食べることで、乗っ取ることができる。これぞWUIである。

話がかなり飛ぶが、おそらくWUIは、OZのようなメタバースで実現しないのではないかと思う。現在、世界のトップエンジニアが目論んでいるのは、現実社会のデジタル化だ。これを日本ではIoTと呼ぶが、Thing(モノ)なんていう甘いものではなく、世界がインターネット化する。電気自動車も宇宙開発もドローンも、そしてゲノム医療もウェアラブルも、全ては”世界のインターネット化”の一部に過ぎない。

『サマーウォーズ』の先進性

『サマーウォーズ』は、他のアニメ作品に比べれば先進性のある作品だと言っていいだろう。OZはまさに、現代のインターネット社会を想起させるもので、考えさせられることも多い。

『サマーウォーズ』で考えさせられるのが、デジタル社会の一元管理である。『サマーウォーズ』のように、何者かにデジタル社会全体が乗っ取られる可能性はゼロではないだろう。もし、サーバーがダウンしてGoogleが使えなくなってしまったら、それこそ世界中が大パニックに陥るはずだ。

また、テクノロジーの進化に対する恐怖も、多少は描かれた。『サマーウォーズ』では、栄のために侘助が開発したAIが、世界中を大混乱に陥れた。ただし物語の終盤で「AIを開発した侘助ではなく、使い方を誤った政府が悪い」と説明されている。これは本当にその通りで、テクノロジーは人間の使い方次第なのである。これは、原始人の火の時代から何ら変わっていない。

そして僕が個人的に印象に残っているのがキングカズマ(池沢佳主馬)だ。キングカズマは、eスポーツを想起させてくれる。もはやゲームは真剣勝負の競技スポーツ。現代でもまだ当たり前になっていないeスポーツを、2009年の段階で示している『サマーウォーズ』は、やっぱりそれなりに先進的だ。

さいごに

子どもの頃に『サマーウォーズ』を視聴していたときは、OZの世界観に惹かれっぱなしだったけれど、こうして大人になってから視聴してみると、陣内家の家族っぷりに惹かれる。特に侘助には強く共感してしまった。なんだか僕も侘助みたいになりそうで、ちょっと気をつけないといけないと思わされた。

細田守作品は金曜ロードショーでよく放送されていたけれど、大人になってじっくり見たことはない。ということで、今後は細田守作品もじっくり鑑賞していこうと思う。

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