今回は『とんでもスキルで異世界放浪メシ(以下、とんでもスキル)』について語っていく。
『とんでもスキル』は『小説家になろう』で連載されていた小説が原作で、現在はオーバーラップノベルスで刊行されている。そして2023年冬クールにTVアニメが放送された。アニメ制作はMAPPAが担当した。
『とんでもスキル』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 80点 |
世界観・設定 | 78点 |
ストーリー | 80点 |
演出 | 78点 |
キャラ | 80点 |
音楽 | 75点 |
作画
『とんでもスキル』は料理の作画が非常によかった。実際、”料理作画”という項目を設けて、作画監督レベルのアニメーターが料理を描いているっぽい。とにかくリアルに、かつ美味しそうに描かれていたので、まさに飯テロ。僕自身、食事後やご飯を食べながら視聴するようにして、飯テロをごまかした。
世界観・設定
『異世界×ネットスーパー』というテーマ。異世界転生作品は、主人公最強やハーレムでただ気持ちよくなれるだけでなく一種のSF作品っぽいのも登場している。その典型例が『とんでもスキル』ということだろう。
実際、「異世界でネットスーパーが使えたらどうなるのか?」という部分がしっかり描かれていたと思う。たしかに、お金さえあれば食事に困らないというのは、中世レベルの文明では中々強力かも。
ストーリー
ストーリー自体は典型的な『異世界転生』。やっぱり異世界転生は見ていて気持ちが良く、今回の『とんでもスキル』に関してはハーレム要素が非常に少なかったのが良かった。
TVアニメ1期ということで、ストーリーもしっかり展開されている。もしTVアニメ2期の制作が決定した場合に、どのような展開になるのかは気になるところだけれど、少なくとも今回の全12話に関しては、飽きずに楽しむことができた。
演出
やはり料理シーンと食事シーンの演出が良い。実際、視聴していてめちゃくちゃお腹が空いてきたし。一方、それ以外の日常シーンや戦闘シーンの演出は、良くも悪くも普通だった。
キャラ
『とんでもスキル』のキャラは、多分、女性向けを前提に作られているとは思う。あと、やはりスライムのスイが強烈だった。
音楽
OPの『贅沢な匙』とEDの『Happy-go-Journey』という選曲から見ても、やはり女性向けに作ってると感じる。個人的にはOPの『贅沢な匙』が好きで、こんな感じの情報量の多いポップスが好みなのである。
『とんでもスキル』の感想
※ネタバレ注意!
久しぶりに”異世界転生系”で楽しめた
正直、ここ最近の異世界転生には飽き飽きしている。逃避的な仮想世界に自分の欲望を押し付けているだけになっているからだ。しかもそれが”作品として売れる”ということは、逃避的な世界に大きな需要があるということでもある。
別に逃避的な世界が完全悪だとは思っていない。少なくともクリエイティブの観点では良い側面もある。けれども、仮想世界は作業場にするべきであって、逃げ場所にすべきではないと僕は思う。ということで、ここ最近は異世界転生系作品をほとんど見なくなった。
だから『とんでもスキル』は「久々に面白そうな異世界転生作品だなぁ」という感想を抱いたのが第一印象だった。最近の異世界転生は、一種のSF作品としての要素が強くなっており、「もし異世界で〇〇ができたらどうなるだろうか?」というテーマ性を持った作品が続々と登場している。
そして『異世界メシ』のテーマは「もし異世界でネットスーパーが使えたら」というものだった。ここでAmazonではなくイオンネットスーパーを採用しているのがミソで、このおかげで”食事”にフォーカスすることができている。フェルという最強生物のせいで肉に偏っているのが唯一の欠点だけれども「異世界でネットスーパーが使えたらこんな感じになるのか」という知的な面白さを感じることができた。
たしかに、このネットスーパーの能力は強力だ。僕もネットスーパーとアイテムボックスの能力が欲しい。僕自身、アニメ聖地の旅に出かけることが多く、スーパーやコンビニが存在しないエリアに数時間滞在しなければならないこともしばしばある。そんな時に、ムコーダのスキルはめちゃくちゃ便利だ。ネットスーパーでいつでも食品を召喚でき、アイテムボックスの中にある調理器具で料理できる。まさに”とんでもスキル”。
また、「焼肉のタレ」などの調味料の進化には共感できる部分がある。僕も焼肉のタレをバッグにいれておいて、旅先のスーパーで適当に肉と野菜を買って、調味料で炒めて食べていた。実際、これが普通に美味しいし、安いのである。砂糖とか塩とか醤油とかをブレンドする必要もないので、手間がかからない。
ということで『とんでもスキル』は、僕の中で久しぶりに異世界転生系で楽しめた作品となった。主人公最強とかハーレムとかではなく、『とんでもスキル』のような作品をアニメ化して欲しいなぁと思う。
昔々の食と移動
『とんでもスキル』を視聴して感じたことだけれど、昔の人々は、都市間を移動する際の選択肢が”徒歩”か”馬車”だったのだと思う。当然、その間、料理することはできない。火を起こして焼くことはできたと思うけれど、調味料が非常に希少なものだったので、味付けができなかったはずだ。それに、荷物量の観点でも、合理的ではない。だから多くの旅人は、干し肉などの携帯食料で凌いでいたことが予想される。
そう考えると、今はとても便利だ。交通機関が充実しているので、数時間程度で都市間を移動できる。そこら辺にコンビニがあるし、携帯食料も充実している。
だから現代は、昔に比べても旅の安全度が飛躍的に向上しているのだ。空前絶後の旅の時代で、旅をしないのはもったいないと思う。『とんでもスキル』を視聴して、あらためて現代の旅の利便性を思い知らされた。
さいごに
それにしても飯テロ作品は強烈だ。しかもこのような作品はほぼ確実に話題になっていく。その代わり、想像以上に料理シーンの作画カロリーが高いということで、一定の制作コストが必要になる。だから『とんでもスキル』のように、ある程度の実績があるアニメ制作会社がアニメを作り、Prime Videoの独占配信なので予算を確保する必要がある。
なお『とんでもスキル』は、Prime Videoの中でも相当に人気だったので、TVアニメ2期が制作される可能性が十分に高い。続編が制作されたら、ぜひとも視聴しようと思う。