今回は『ユニコーンウォーズ』について語っていく。
『ユニコーンウォーズ』は、2022年にスペインとフランスで公開されたアニメーション映画で、日本では2024年に公開された。
監督は、スペインのアニメーション作家であるアルベルト・バスケスが担当した。
『ユニコーンウォーズ』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 93点 |
世界観・設定・企画 | 90点 |
ストーリー | 86点 |
演出 | 86点 |
キャラ | 83点 |
音楽 | 80点 |
作画
ちゃんと手描きアニメで、動物の動きはジブリ作品を彷彿とさせる。作画のクオリティも高く、お金をしっかりかけていることがわかる。
世界観・設定・企画
まるでInstagramのフィルターのようにカラフルな世界観だった。美しいのか毒々しいのかわからないぐらいに。聖書、宗教、戦争などの古来からある要素に、いわゆる「映え」やドラッグ、快楽などの現代的な要素をミックスさせている。
ストーリー
テンポよく物語が進んでいった印象があるが、終盤はちょっとだけ急だったかも。ダークファンタジーらしく、誰も幸せにならないストーリーとなっている。
演出
グロいシーンがちゃんとグロい。これが可愛らしいテディベアではなく人間だったら余裕で18禁だ。それと、テディベアたちがドラッグで気持ちよくなっているシーンは、最高にキマってた。
キャラ
やはり主人公のアスリンが反面教師ということになるだろう。一方で、見習うべきはゴルディと、名前は忘れたけどなんか強いやつということになりそうだ。こうして振り返ってみると、大切なものを奪い合う世界ではなく分け合える世界が求められているのだと思う。
音楽
劇伴は、まあ割とよくあるやつで無難だった。映像が強すぎるから、音楽はこれぐらい一般的なものでいいのかもしれない。
『ユニコーンウォーズ』の感想
※ネタバレ注意!
宗教がもたらす衝突
2024年現在、ロシアとウクライナ、イスラエルとガザで戦争が起こっている。この2つの戦争の根幹にあるのは宗教の衝突だ。ロシアとウクライナは、カトリックとプロテスタントを含んだ西方教会と、東方正教会の衝突だと解釈できる。そしてイスラエルとガザは、イスラム教とユダヤ教(キリスト教含む)の衝突だと言える。
宗教関連の問題は、実に難しい。なぜなら宗教は理屈ではないからだ。
『ユニコーンウォーズ』でも、それが如実に現れている。本作を見る限り、ユニコーンからテディベアを襲おうとするシーンは一度もなかった。すべてテディベア側から仕掛けて、ユニコーンはそれに反抗しただけに過ぎない。
しかもテディベアがユニコーンを襲おうとする動機は、聖書の「最後のユニコーンの血を飲む者は、美しく永遠の存在になる」を強く信じていることに由来する。しかし、これも真っ赤な嘘らしい。テディベアは、理屈で考えればありえないことを強く信じたがあまりに、自らを滅ぼすことになる。
これは、現代社会でも同じである。むしろ、テクノロジーが支配する現代社会だからこそ、「宗教」が持つパワーは凄まじいのかもしれない。
相対的な幸せを追求することの愚かさ
僕の『ユニコーンウォーズ』の第一印象は、Instagramだった。『ユニコーンウォーズ』の色彩は、恐ろしいぐらいにアンナチュラルである。現実世界における自然とは真逆の人工的な色彩だった。そしてそれが、まるでInstagramのフィルターのようだったのである。
もちろん、これは監督が意図的にやっている、色彩以外でも、テディベアの言動は度々Instagram的だった。とにかく彼らは、見かけ上の美しさばかりを気にする。そして、精神の豊かさや純粋な実力を軽視する。
SNSが提示してくる相対的な幸せは、極めて価値が薄く、それどころか人間を闇に陥れるわけだから、もはや害悪そのものな気もしてくる。見かけ上の美しさとか若々しさとか派手さとかを手に入れたところで、お金と同じように、上には上がいるわけで、とにかくキリがない。
一方で、愛がもたらす精神の豊かさや、努力と知的好奇心によって育まれる純粋な力は、どちらも絶対的なものであり、他人と比べるようなことにはならない。実際、ゴルディは愛を知る熊だったし、最終的には森の中で生き抜いていけるサバイバル能力を身につけることもできていた。
アスリンのように、相対的な幸せを追求した結果が破滅なのであれば、SNSからは適度に距離を置いた方がいいのかもしれない。それにあわせて宗教も。
さいごに
『ユニコーン・ウォーズ』に、現代社会の闇が全て詰まっていると思う。そして、見かけ上の幸せではなく、絶対的な幸せを追求しようと思った。飽くなく向上心と奉仕の姿勢が、人をもっと強くするのだと思う。