【駒田蒸留所へようこそ感想】ジャパニーズウイスキーがテーマ

駒田蒸留所へようこそ

今回は『駒田蒸留所へようこそ』について語っていく。

『駒田蒸留所へようこそ』はP.A.WORKSによるアニメオリジナル作品で、2023年11月に上映された。

アニメ制作はP.A.WORKSが担当している。

目次

『駒田蒸留所へようこそ』の評価

※ネタバレ注意!

作画83点
世界観・設定84点
ストーリー83点
演出80点
キャラ70点
音楽78点
※個人的な評価です

作画

メインスタッフのほとんどが『有頂天家族』と同じということで、作画が『有頂天家族』のまんまになっている。鼻の描き方とか美術背景が本当にそっくり。そしてこれが『駒田蒸留所へようこそ』にマッチしている。

ぶっち切りの作画はなかったけれど、全体的にハイクオリティだった。

世界観・設定

ジャパニーズウイスキーをテーマにしたお仕事系アニメだ。もう本当に「これぞP.A.WORK!」という感じの世界観で、知的好奇心旺盛のアニメファンからするとたまらないだろう。仕事に対する考え方も学べるところは多い。そしてこのテーマは、どう考えてもグローバルに刺さる。

ストーリー

91分の尺の中で、綺麗にストーリーがまとまっていた。群像劇を描いたわけでもないのでごちゃごちゃしていないし、下手に恋愛要素も入っていないので「仕事」という1つの要素に集中することができた。TVアニメ1クールの長さだったら、絶対ラブコメ展開発生してたと思うけど。笑

演出

作画と同様に派手な演出はない。3DCGの利用も一般的な範囲に止まっている。画面構成も普通。……なのだが、画面構成のバランスが恐ろしく良い。P.A.WORKSの力というか吉原正行の力というか。

それと、感動ポルノ的な涙を誘う感動ではなかったのもP.A.WORKSらしいなぁと思う。

キャラ

P.A.WORKSのお仕事シリーズは、毎回、相当のキャラが登場するのだけれど『駒田蒸留所へようこそ』は比較的少なかったと思う。主要人物は10人もいなかったはずだ。これが、スッキリとした印象を与えているのかもしれない。

また、それぞれの登場人物に様々なキャリアがあったことがよくわかる。かなり感情移入できる。

音楽

主題歌の『Dear my future』は主人公の駒田流生が歌っているということで、つまるところキャラソンなのだが、歌唱力がとんでもないことになっている。早見沙織、歌うますぎ。

劇伴は全体的に印象に残るものが多かった。

『駒田蒸留所へようこそ』の感想

※ネタバレ注意!

仕事にはピボットが必要不可欠

『駒田蒸留所へようこそ』は端的に言えば「高橋光太郎の成長物語」だった。光太郎はニュースサイトの記者なのだが、自分のやりたい仕事に出会えずに(たしか)25歳の時点で(たしか)5回ほど転職している経歴を持っていた。そして案の定、今回の記者の仕事も「合わない……」と辞めようと思っていた。

しかし、駒田流生のウイスキーに対する情熱やそれまでのキャリアを知った光太郎は、様々な人に「仕事の向き合い方」を教えてもらいながら次第に自分の仕事にやりがいを抱くようになる。そして気づいた頃には、記者の仕事にすっかりのめり込んでいた。

ビジネスの世界では「ピボット」が重要だと言われている。ピボットは「方向転換」のことで、事業が上手くいかないときや、新しいチャンスを掴めるかもしれないタイミングで、事業方針を大きく変更するのだ。ここで勘違いしてはいけないのは「ピボット=辞める」ではないということである。あくまでも方向性を変更するだけで、辞めているわけではなく、むしろ続いている。

作中のニュースサイトの編集長を務める安元広志は「放送作家を目指していたけど記事を書くのが楽しくなっちゃって気がついたら編集長になっていた」みたいなことを話すシーンがあった。実際の社会において、最初に想定した成功が実現することはほとんどない。大抵の場合、途中で上手にピボットすることで、当初は思ってもみなかった成功を手に入れることができるのである。そして、このようなキャリアを歩むためには「辞める」ではなく「続ける」を重視する必要がある。それでようやく、仕事の面白さがわかるようになっていくのだ。

光太郎や安元だけではない。流生も元々は漫画家?になろうとした中で途中でウイスキー作りになったわけだし、流生の兄・圭も「駒田蒸留所を守る」という最終目的達成のために桜盛酒造に転職した。どちらも、本人にとっては大きな決断だったはずだが、このような思い切った方向転換が、キャリアプランニングで必要なのである。

ウイスキーが呑みたくなる!

『駒田蒸留所へようこそ』はジャパニーズウイスキーがテーマになっている作品だ。この着眼点は非常に面白い。P.A.WORKSらしく地方創生に繋がるし、グローバルにも刺さる。そして個人的には”比較的お金に余裕のある知識層”にも刺さりそうなのが面白いと感じる。『駒田蒸留所へようこそ』ではコラボ商品でウイスキーも販売されていて、これが1本あたり約2万円という中々の値段で販売されている。元々高価だったジャパニーズウイスキーのラベルを『駒田蒸留所へようこそ』仕様にしているだけなので、ぼったくりなわけじゃない。それどころか、このコラボのために瓶詰されているものなので、ウイスキーファンにはたまらない商品となっている。

さて、『駒田蒸留所へようこそ』を見てしまったのめ、ウイスキーが呑みたくなってしまった。以前より「ウイスキーを趣味にしようかなぁ」と思っていて、2024年1月にビリー・ジョエルのライブを控えているので、それまでに「ビリー・ジョエルの曲をウイスキー呑みながら聴ければなぁ」とか思ってたところなのである。元来、ウイスキーはストレートで呑むことが多かったので、特別に必要なのはストレート用のグラスだけ。そう考えると”ウイスキー”という趣味は、初期投資数千円ほどで取り組める趣味ということになる。

『けいおん!』きっかけで音楽を始めたり『ゆるキャン△』きっかけでキャンプを始めたりするのと同じ。僕は『駒田蒸留所へようこそ』きっかけでウイスキーを始めようと思う。

DMMとP.A.WORKS

なぜかわからないけど僕はP.A.WORKS作品の『スキップとローファー』を見れていなくて、早急に見ないといけないと思ってる。さて、そんな『スキップとローファー』はDMMのアニメ制作部門であるDMM Picturesが製作に参加していたらしい。ほかにも『白い砂のアクアトープ』もDMMが製作に参加していて、2024年放送予定の『菜なれ花なれ』という作品もDMMが製作に参加するようだ。

まあ、IT企業が製作や企画に参加することは何も珍しくない。問題は『駒田蒸留所へようこそ』がDMM.comの単独出資による製作だったということである。EDのクレジットの”製作”がDMM.comだけだったので、多分間違いない。本作は製作委員会を組まないどころか、IT企業の単独出資で製作しているのだ。しかもP.A.WORKSという実力派のアニメ制作会社を起用しながら、だ。

この現象は、少なくともDMM.comからするとビジネス的なメリットが大きい。アニメ製作というビジネスをする上でP.A.WORKSは最高のパートナーだと言えるからだ。その上で権利のほとんどをDMMが握れるのである。たしかに単独出資はリスクが大きいが、DMM.comほどの企業であれば数億円ほどの投資は痛くない。それを踏まえた上で、アニプレックス、バンダイ、KADOKAWAなどと正面衝突しないニッチな作品を制作するために、P.A.WORKSとの関係を強くした可能性が高い。

一方、P.A.WORKSについては、よくわからない。一体どこを目指しているのか。純粋に資金が足りないからDMMと組んだのか。それともまた別の目的があるのか。しかし僕が見るに、P.A.WORKSもDMMの相性は良さそうだ。少なくとも『駒田蒸留所へようこそ』や『白い砂のアクアトープ』は良い作品だったし、『スキップとローファー』もほぼ間違いなく良作のはずだ。一方でいずれの作品は、昨今の大衆向け作品のような刺激はなく、しかもかなりニッチなジャンルなので、視聴回数は少なくなりがち。そこでDMMがマネタイズ戦略を実施する。

例えば『白い砂のアクアトープ』は、言ってしまえばDMMかりゆし水族館の集客装置のようなもの。『駒田蒸留所へようこそ』もDMMが企画していることから、ジャパニーズウイスキーに着眼点を置いたのもおそらくDMMで、実際、これはビジネス的に面白い。今後、DMMは『駒田蒸留所へようこそ』を起点にジャパニーズウイスキーにも手を出すかもしれない。

『菜なれ花なれ』は何なんだろうな……。”応援”がテーマになっているから、これがクラファンやオンラインサロンに結びつくかもしれない。ちなみにP.A.WORKSが主催するオンラインサロンP.A.SALONは当たり前だがDMMオンラインサロンによって運営されている。

ということでP.A.WORKSとDMMの動きには要注目だ!

さいごに

とりあえずウイスキーを趣味にしようと思います。あと、いつか舞台の長野に行きます。

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