【WHITE ALBUM(TVアニメ)感想】とにかく全体的に暗い

WHITEALBUM

今回は『WHITE ALBUM』について語っていく。

『WHITE ALBUM』は、Leaf制作のギャルゲーが原作で、2009年冬クールと秋クールに分割2クールでTVアニメが放送された。アニメ制作はセブン・アークスが担当している。

目次

『WHITE ALBUM』の評価

※ネタバレ注意!

作画79点
世界観・設定70点
ストーリー70点
演出70点
キャラ78点
音楽80点
※個人的な評価です

作画

作画のクオリティは意外に高い。動画の枚数もかなり多いし、ダンスシーンも絵で動かしていた。キャラクターデザインが地味だから目立っていないだけで、アニメーションの動きにそれなりのお金をかけていることがわかる。

世界観・設定

あとあとWikipediaで調べてみると、アニメオリジナル要素が想像以上に多いことに驚く。松山めのうと神崎社長がアニメオリジナルキャラなのはヤバい。そう考えると、アニメオリジナル要素は割と自然だったということになる。

ただし、過去設定が弱い。あれだけドロドロの展開を見せられた割には、呆気ない過去設定だったと思う。

ストーリー

時系列を頻繁に入れ替えるシナリオ構成だった。個人的に、時系列を頻繁に見出してくるストーリーは好きだけれど、やはり万人受けはしない。また、説明描写が少なく、心情で読み取らせてくるストーリーだった。これも個人的に好きなのだけれど、やはり万人受けはしない。

あと、中盤までのネガティブな展開は面白く感じたけれど、終盤の展開はちょっと微妙だった。ラストのインパクトが小さい。

演出

登場人物の心情をテロップで表示する演出が用いられていた。これは中々良い味を出していたと思う。「心情描写がやりづらい」というアニメの構造的な弱点を上手い具合に補完していた。

また、全体的に雰囲気が暗く、それも演出の力が大きい。すれ違いのモヤモヤ感を表現できていたと思う。

キャラ

少し古臭いキャラデザ。舞台が昭和に設定されていたので、キャラデザもそれに合わせたのかもしれない。でも、普通にキャラは可愛かった。個人的には「ザ・ツンデレ」の観月マナが好みだけれど、森川由綺や緒方理奈も良き。なお、主人公はあまり好きになれなかった。

音楽

主題歌も挿入歌もどちらも良かった。当時、人気声優だった平野綾と水樹奈々をフル活用しているのが潔い。挿入歌に関しては『WHITE ALBUM』が本当に名曲だと思う。また、最終話に挿入された『POWDER SNOW』はちょっと感動してしまった。

『WHITE ALBUM』の感想

※ネタバレ注意!

愛に依存してはいけない

『WHITE ALBUM』はドロドロ系のラブロマンス作品だ。携帯電話が無かった時代特有の「すれ違い」がテーマになっているように思う。とにかく、主人公の藤井冬弥とヒロインの森川由綺がすれ違う。昭和の時代には携帯電話など無く、固定電話しかなかった。だから待ち合わせをするにも一苦労だったのだ。今となっては誰もが携帯電話を持っているので、待ち合わせですれ違うことなどほとんどない。

物語の流れとしては、まず前提として藤井冬弥と森川由綺が既に付き合っていた。ただし森川由綺がアイドルとして成功するようになるにつれて遠距離になってしまい、その間に藤井冬弥が他の女性の誘惑に負けていくというもの。正確に言えば、誘惑というよりは、冬弥が勝手に抱いてしまっていた「女神」の思想によるものが大きい。ちなみにこの「女神」は、森川由綺のプロデューサーを務めた緒方英二で言うところの絵画のようなものだった。

こういう作品を見ると、やはり愛に依存してはいけないと強く思う。確かに、人間的な生活を送るのに愛は必要不可欠な概念だが、依存してはいけないのだ。愛に依存しすぎると、冬弥や英二のように自分を見失ってしまい、本当に大切なものを失ってしまうことになる。

文学的なアニメは好きだけれど……

『WHITE ALBUM』は、かなり文学的だった。心情描写をテロップで表示する演出だったり、セリフで全てを説明しない言い回しだったり、ありとあらゆる部分で文学的だった。だから『WHITE ALBUM』は、アニメ作品の中でも視聴者の参与性が高い作品だったと思う。

しかし当然のことながら、このような文学的な作品は万人受けしない。作品の深い部分を読み取れる人でないと、作品の魅力を感じることができないからだ。

それにそもそも「アニメという映像メディアで文学的な作品を作るのはどうなのか」という問題がある。文学的な作品をやりたいのであれば小説でやればいいよね、という理屈だ。実際、僕は文学的なアニメ作品が個人的に好きだけれど、いざ自分でアニメを作るってなったら、文学的な作品を作りたいとは思わない。アニメを作る以上、アニメにしかできない表現で勝負したいと思う。

文学的なアニメ作品で僕が真っ先に思いつくのは、初期の新海誠監督の作品だ。『秒速5センチメートル』なんかは全体的な雰囲気が『WHITE ALBUM』によく似ている。

とにかく暗い

アニメ作品で文学的なものを作ろうとすると、どうやっても暗い雰囲気になってしまうのだろうか。そんなことを考えさせられるくらい『WHITE ALBUM』は暗かった。

『WHITE ALBUM』は意図的に暗い雰囲気を作り込んでいる。季節は冬がメインなので太陽の光も弱く、色彩が全体的に暗い。それでいて、とにかく「すれ違い」を強調させてくる。固定電話の応答率の低さも驚異的だ。「着信音ってこんなに暗いものだっけ?」と思わせるほど、『WHITE ALBUM』では電話がネガティブの象徴になっている。

僕は個人的にハッピーな作品の方が好きなので、そういう意味では、アンハッピーな雰囲気が強い『WHITE ALBUM』はちょっと苦手だ。しかしその一方で、この暗さがちょっと病みつきになってしまうから不思議である。

まあ、現実世界における恋愛は、これぐらいネガティブなものだ。恋愛が上手くいく保証は全くないし、それどころか上手くいかないことの方が多い。『WHITE ALBUM』はハーレム色が強いのであまり現実的なストーリーではないけれど、恋愛におけるネガティブな印象は、上手い具合に表現されていたとは思う。

さいごに

『WHITE ALBUM』から10年後を舞台にしたとされている『WHITE ALBUM2』が、2013年にTVアニメ化されている。ただしストーリーに繋がりがあるわけではなく、あくまでも『WHITE ALBUM』特有の設定が再利用されているということらしい。

そしてネット上の評価を見る限りでは『WHITE ALBUM』よりも『WHITE ALBUM2』の方が、ウケが良さそうである。『冴えカノ』の作者である丸戸史明がシナリオを担当したということで、個人的には割と期待している。

『WHITE ALBUM2』を視聴次第、その感想をブログにまとめようと思う。

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