『真夜中ぱんチ』感想:本当におもしろいことは「余白」に眠っている

真夜中ぱんチ
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『真夜中ぱんチ』について語っていく。

『真夜中ぱんチ』はP.A.WORKSのアニメオリジナル作品で、『パリピ孔明』のスタッフが再集結して制作されているのが特徴。2024年夏クールに放送された。アニメ制作はP.A.WORKSが担当している。

目次

『真夜中ぱんチ』の評価

※ネタバレ注意!

作画80点
世界観・設定・企画80点
ストーリー80点
演出80点
キャラ78点
音楽85点
※個人的な評価です

作画

個人的には『パリピ孔明』よりも作画の印象がいい。キャラクターはよく動くし、漫画的な表情描写にハマれた。事実上の戦闘シーンも、しっかり作り込まれている。毎話必ずクライマックスが用意されているけど、そのときの作画もよかった。

世界観・設定・企画

「YouTube」をテーマにした作品は、イマドキ珍しくもないけど、そこにヴァンパイアを組み合わせて、ファンタジー要素を強めている。企画そのものについては、個人的に『夜のクラゲは泳げない』よりも好き。

ストーリー

基本的に1話完結型で進む。コメディ全振りかと思ってたけど、想像以上に感動要素が多く、1話につき必ず1回はクライマックスを迎える。テンポ間も悪くないし、終盤の流れからの締めくくりも絶妙だった。

演出

P.A.WORKSと言えば繊細な表現が多めだけど、本作はコメディ感が強く、キャラクターの顔も崩れる。漫画的な表現が多い。でも全体的には優等生で、自然な流れを意識したカット割りになっている。

キャラ

声優の演技が中々にツボ。キャラクター同士の掛け合いもおもしろい。結構マジで、全キャラ好きになれる。

音楽

これほどまでに「夜」を表現した主題歌は中々ない。OP『ギミギミ』は完全に電波ソング寄りで、映像については『パリピ孔明』のOPが強く意識されている。クラブって感じがする。

一方のED『編集点』は、とにかく歌詞が素晴らしい(特に1番サビ)。んで、ベッドタイムミュージックというか、チルな雰囲気も感じられる。ちなみに歌は長谷川郁美(キタちゃん!)。

『真夜中ぱんチ』の感想

※ネタバレ注意!

全てがEDに詰まってる

YouTuberとしての活動にのめり込みすぎた主人公・真咲が、ヴァンパイアとの出会いをきっかけに、人間らしさとか日々の楽しさとかを取り戻していく物語。そして、その全てがED『編集点』に詰まっているように思う。

朝と夜の間をもっと、繋いだりカットしたいんだけど

面白いことなにもないよな 余白は邪魔だから

真夜中ぱんチがYouTuberとして活躍するきっかけになったのは、真咲が「余白」のおもしろさに可能性を見出したから。これは、時間に追われて余白を失っている現代人に対するメッセージだと見ていいだろう。

たしかに僕も、Googleカレンダーをギュウギュウに詰める生活を送っている。まるで余白を全部カットするYouTube動画のように。

でも、本当におもしろいことは「余白」に眠っているのだとしたら?

僕たちはもっと余白を、そしてありのままの日常を大事にすべきなのかもしれない。

『ヨルクラ』もそうだけど「夜」を描きたがる

『真夜中ぱんチ』は、ヴァンパイアが日中に活動できないので、基本的に「夜」が舞台になっている。本作のメインスタッフが制作した『パリピ公明』も「夜」が舞台だ。

また、『真夜中ぱんチ』と近いテーマを取り扱っていた『夜のクラゲは泳げない』も「夜」が舞台となっている。

一体なぜ、これらの作品は「夜」を描きたがるのか。それは、アニメという媒体そのものが「夜」の属性を持っているからだ。

僕が思うに、この事実は非常に重要である。今、世界を動かしているビッグテック企業の多くは、朝早く起きて、仕事に取り掛かっている。

一方でアニメ業界はどうだろうか?

推測に過ぎないが、おそらくアニメ制作側も、アニメファンも、夜の生活になっていると思うのだ。多分、プロデューサー界隈の食事会も、当たり前だけど夜。

そして実のところ、YouTubeも「夜」の属性を持っている。僕も、YouTubeを一番よく見てしまう時間帯は「夜」だ。

時間生物学的には、人間は「夜」にもっとも欲望のコントロールが効かなくなる。お金もお酒も女も、全部夜のもの。そんな夜だからこそ、YouTubeをつい見ちゃうわけだし、アニメに何かを期待するのかもしれない。

さいごに

続編を制作できそうな終わり方だったけど、これまでのP.A.WORKSの方針を考えれば、2期制作はないだろう。

ただ、想像以上におもしろい作品だったと思う。少なくとも個人的には『天穂のサクナヒメ』より好きだし、なんなら『ヨルクラ』よりも面白かった。

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