今回は2018年に放送された『とある魔術の禁書目録Ⅲ』、通称『禁書3期』について語っていく。
『禁書3期』はネット上でもかなりの酷評だった。だが、僕としてはそんなに悪くないかなと感じた。『とある科学の超電磁砲(以下、超電磁砲)』を含めた『とあるシリーズ』が大好きなこともあるが、僕は普通に楽しめた。
詳しく語っていこう。
あらすじ
東京西部に位置する巨大な『学園都市』。 総人口230万人を数え、その約8割を学生が占めるこの都市では、超能力開発のための特殊なカリキュラムが実施され、学生たちの能力は『無能力』から『超能力』までの六段階で評価されていた。
とある高校生・上条当麻も、学園都市に住む学生のひとり。 彼は自分の右手に宿る力――異能の力なら神の加護すら打ち消す『幻想殺し』のため、落第寸前の『無能力』の評価を受け、不幸まっしぐらの人生を送っていた。
そんな上条の学生生活は、夏休みのはじめに空から降ってきた純白のシスターによって、大きく変わってしまう。 「魔術」の世界から逃げてきたという彼女――『禁書目録』との出会いに始まって、さまざまな事件に巻き込まれていく上条。学園都市を統べる「科学」サイド、インデックスに連なる「魔術」サイド双方の事件を綱渡りで解決していくうちに、少しずつ人の輪を広げていくことに。そして、ついには魔術サイド、十字教最大宗派のローマ正教が、上条の存在に目を向けることになってしまう……。
魔術サイドに呼応するように、科学サイドたる学園都市も動きだす。しかし、にわかに対立を見せ始めた世界の動きに抗うように、立ち上がる者たちがいた。 上条とかかわったことで、大きく運命を変えた『ヒーロー』たち。
彼らもまた、身を挺して世界と対峙する。上条当麻がそうしてきたように。
科学と魔術が三度交わるとき、物語は大きく動き出す!!
『禁書3期』の感想
ここから『禁書3期』を語っていくが、ネタバレしていくのでまだ視聴していない人は気をつけてほしい。
感想①:イッキ見だと楽しめる
『禁書3期』は内容を詰め込みすぎて酷評が続出となった。『禁書3期』は2クール全26話の中で14巻から22巻、SS2というスピンオフを含めると10巻を2クールに詰め込んだことになる。これはアニメもラノベも大好きな僕が見ても、やりすぎだと思う。
同時期に放送された『ソードアート・オンライン アリシゼーション』は原作10巻分の内容を4クールでアニメ化している。そしてこれでも尺が足りず説明不足になり、ストーリーについてはあまり良い評価をされなかった。
ということで『禁書3期』も説明不足すぎる内容になり、酷評続出になるわけだ。なぜ詰め込みになってしまったのかは後述する。
しかし、僕は『禁書3期』を楽しめた。理由はいくつかあって、まず『とあるシリーズ』の設定や世界観、登場人物が大好きなことが挙げられる。登場人物が好きだから、2期の続きがどうなったのかシンプルに気になっていた。それが見れたので満足だった。
そして、「イッキ見」していたのも大きかったと思う。イッキ見であれば、全体の流れで作品を楽しめるからだ。これがリアルタイムで週に1話ペースになると、細かいところを必然的に見るようになるので悪いイメージに繋がるのだろう。しかし、なんとなく雰囲気を掴む分にはイッキ見のほうが優れている。
僕にとっては『禁書3期』はダイジェストになっていて、スピード感があってあっさり見れた。もっと細かいところも『禁書』を楽しみたいのであれば原作を読めばいいだけだ。僕はそうしている。
もし、この記事を読んでいてまだ『禁書3期』を見ていない人がいるなら、見ておくことをオススメする。ネット上のアンチコメントの多くは「禁書3期を待ち望んでいたけど期待以下の内容で、しかもリアルタイムでゆっくり見ていた」人たちのものだ。イッキ見する分だったら普通に楽しめると思う。
感想②:一方通行と浜面仕上の主人公っぷりに痺れた
2期の終盤で上条当麻・一方通行・浜面仕上の3人が登場し、これがきっかけに『禁書』は主人公3人体制になる。あくまでもメインは上条当麻なわけだが、一方通行も浜面仕上もとても魅力的だ。
この二人は学園都市の中でも闇サイドの暗部の人間だ。『禁書3期』では暗部編とロシア編で活躍する。
一方通行のエピソードで印象的だったのは、一方通行と打ち止めを抹殺するために製造された番外個体(ミサカワースト)との戦いだ。一方通行は闇サイドの人間には容赦ないが、表側の人間、特に妹達(シスターズ)だけは絶対に守ると決めていた。そこで学園都市はあえて妹達である番外個体を送り込むことで、一方通行の精神を壊そうとしたのだ。
だが、それでも一方通行は壊れなかった。そしてたまたま上条当麻が登場し、一方通行をまた救うことになるのだが、この展開はめちゃくちゃ熱かった。内容が詰め込み過ぎな『禁書3期』だが、このエピソードだけは比較的力が入っていた。
浜面仕上のエピソードで印象的だったのは、学園都市の第四位・麦野沈利との戦いだろう。浜面は暗部編で既に2回も麦野沈利に勝利する奇跡を起こしていたのだが、ロシア編でまた対峙することになる。だが浜面は麦野沈利が肉体的にも精神的にもボロボロになっていることに気づき、不意打ちされることも頭にありながらも、抱擁して救うことを決断したのだ。このエピソードは『禁書3期』の中でも最も評価が高い。一方通行と同様に力が入っていたし、尺もある程度確保されていた。
『禁書3期』の評価
ここでは『禁書3期』のアニメとしてのクオリティを個人的な目線で評価していく。
作画 | 67点 |
世界観・設定 | 70点 |
ストーリー | 65点 |
演出 | 70点 |
キャラ | 95点 |
音楽 | 70点 |
『禁書』は2期のころからちょっと作画崩壊っぽいところがあったのだが、『禁書3期』はもっと酷くなっていた。一方で力が入っているシーンはレベルが高かったし、ロシア編の背景は壮大感があって素晴らしかった。ということで中間を取って67点ぐらいにした。
世界観・設定は相変わらず良かった。だが、尺が足りないこともあって説明不足すぎたので、『とあるシリーズ』が特別好きじゃない人からしたらイマイチだっただろう。
ストーリーは65点をつけたがかなり甘い評価だ。客観的な評価も含めたら30点ぐらいになる。2クールで制作すると決めた上層部であって、アニメーターの方々は必死に作っていたはずだ。むしろ僕は2クールでなんとかまとまっただけでも評価するべきだとして、甘めにつけてみた。
演出は正直普通。ロシア編の神々しさ、特に一方通行が空を飛ぶシーンは素晴らしかったが、時間をたっぷり使えない状況だったのが痛い。
尺不足だったとはいえ、キャラの魅力はいつもどおり発揮されていた。3期になってから登場人物もかなり増えたが、やはりどれも印象に残る。『とあるシリーズ』のキャラ作りに関しては本当に素晴らしいと思う。
音楽は全体的にクオリティは高いのだが、1期や2期のころのような「禁書らしさ」がOPに足りなかった。EDはインデックス役の井口裕香を起用したのは良かった。メロディーや歌詞も「禁書らしさ」があったし。
『禁書3期』がなぜ詰め込みになったのか考察してみた
ここでは『禁書3期』がなぜ詰め込みになってしまったのかを、アニメファンに過ぎない僕の立場からだが考察していきたいと思う。
理由①:とあるプロジェクトの「一環」だったから
まず考えなければいけないのは『禁書』だけ放送するんだったらどのような展開が望ましいか、ということだ。
最もベーシックなのはエイワスが登場するところまでを2クールで放送し、ロシア編を二部作で映画化することだろう。もちろんこれでも尺が完璧とはいえないが、スケジュール的にもこれがちょうど良い気がする。懸念があるとすれば、全盛期が5年以上前の作品で劇場版の動員が微妙になると予想されることだが、ビッグタイトルなのでさすがに黒字にはなると思う。
しかし、『とあるシリーズ』は大きくなりすぎた。『禁書』だけにこれだけのリソースを投入するわけにはいかなくなっている。
まず『超電磁砲』を放送しないわけにはいかない。どう考えてもヒットするに決まってるからだ。加えて『とあるシリーズ』はキャラが魅力的なので『超電磁砲』以外にも『とある科学の一方通行』というスピンオフが出来ている。ライトノベルの人気ランキングである『このライトノベルがすごい!(以下、このラノ)』の男性キャラクター部門で、上条当麻と同様に一方通行も確実にトップ10に君臨していたほどの人気だったからだ。
つまり『禁書』を放送するのであれば『超電磁砲』も放送しないといけないし、それだったらついでにプロモーション目的で『一方通行』も放送するという動きになる。それで『禁書』に割くべきリソースが縮小。詰め込みにせざるを得ない状況になったのだろう。
おそらくこれが最も大きな理由と考えられる。
理由②:原作のプロモーション目的
これもかなり可能性の高い理由なのだが、原作のプロモーション目的が考えられる。実際に僕は全巻購入したわけだし。
通常、ライトノベルや漫画原作のアニメは原作のプロモーション目的でアニメ制作される。これを逆手にとって「説明不足になるように構成することで、予算を抑えながらも、原作を手に取りたくなる」ように仕掛けることが可能になってしまう。これであれば一応アニメとして成立してしまうのだ。
もちろん「アニメのクオリティが低い」ということで一定数ファンは減少するが、逆に原作を購入する人も一定数でてくるだろう。出版社からすればメリットはそこそこあるわけだ。
しかもなんだかんだ円盤も4,000枚ぐらい出てるので、アニメ制作も黒字だったはずだ。クリエイター目線のお金事情で見れば、そこそこ成功しているのだ。
理由③:新約のアニメ化を考慮した
『とある魔術の禁書目録』は旧約、新約、創約と続いている。『禁書3期』では旧約を最後までアニメ化したわけだが、旧約と同じボリュームが新約に控えている。
実は2024年に『とあるシリーズ』はなんと20周年を迎える。このタイミングでほぼ間違いなくアニメ化が決まると僕は思っている。そこで新約をアニメ化できるようにするために、旧約を詰め込んだのではないかという可能性も十分考えられる。
少なくとも電撃文庫は新約の扱い方について色々と考えているはずだ。新約の刊行中『このラノ』では作品部門、キャラクター部門で確実にTOP10に食い込んでいた。
さいごに
『禁書3期』のクオリティは微妙だったけれど、普通に面白かったし、ビジネス的にも多分黒字になってると思う。
気になるのは、やはり『新約』のTVアニメ化だ。個人的に『新約』も好きなので映像化して欲しいところだけど、「あのシーンを映像化できるのか?」という不安もある。
まあとりあえず僕は原作も追いかけている勢なので、そちらでしっかり楽しもうと思う。