今回は『犬王』について語っていく。
『犬王』は、湯浅政明監督による長編アニメ映画だ。原作は、古川日出男の『平家物語 犬王の巻』となっている。そのため、TVアニメで放送された『平家物語』の続編的な立ち位置で制作されているようだ。
アニメ制作は、サイエンスSARUが担当している。
『犬王』の感想
湯浅監督のアニメは、アニメーション表現の可能性を感じさせる作品が多い。『犬王』も例外ではなく、アニメーション表現の限界を追求している作品だった。
特に、主人公の犬王(CV.アヴちゃん)のダンスシーンがすごい作り込みだ。当然のことながら、手描きで制作されている。そして、現実的だけれども非現実的な振り付けとなっている。アニメにしかできない表現だった。
また、『犬王』は室町時代の京が舞台となっている。そのため、当時の技術を参照しながら、ミュージカルが演出された。
どういうことかというと、プロジェクションマッピングみたいなことを、室町時代に存在する技術だけで表現しているのだ。布をスクリーンに見立てて、炎を使って光を生み出し、影絵で鯨を表現する。そして水を上から流すことで潮の流れを作り、リアリティを持たせる。といった感じに、当時の技術力でも可能な範囲で演出されているのだ。
これを作るためにどれほどインプットしたのだろうか…。まさに、豪華クリエイターが集まったことによって初めて成立するコンテンツだろう。
『犬王』の評価
作画 | 93点 |
世界観・設定 | 88点 |
ストーリー | 85点 |
演出 | 88点 |
キャラ | 80点 |
音楽 | 85点 |
作画
作画のレベルは非常に高い。インスピレーション湧きまくりだった。
世界観・設定
歴史的な文献がほとんどない『犬王』を、大胆に解釈した世界観となっていた。実際に、室町時代でロック調の音楽が普及するわけがないけど、昔の能は、『犬王』みたいに盛り上がるものだったかもしれないよね。
ストーリー
ストーリーの流れは、アニメーションらしいファンタジーの要素が盛り込まれている。そのため、歴史好きではない人でも、十分楽しめたと思う。
演出
ミュージカルシーンの演出は、超ハイセンス。一般人には思い付かないような演出ばかいだったけれど、元ネタがあったのだろうか。
キャラ
声優のメンツがいい。ほとんどミュージカルシーンだったので、俳優や歌手が採用されていた。
音楽
能とロックを融合させた新感覚の音楽。日本人にしか生み出せない音楽なのでは?
さいごに
湯浅作品はやっぱり面白い。現代の日本アニメの最先端を走っている。おそらく、ジャパニメーションが生き残るための一つの指針になる作品群だ。湯浅作品は、強烈な個性が故に、メガヒット作品を生み出すことはほとんんどない。だが、堅実にブランドを構築していて、「アニメ好きの人であればとりあえず見る」ぐらいのレベルまで到達している。多分、それだけで制作資金がそれなりに集まるだろう。
これからも湯浅作品はウォッチしていくし、過去作も振り返ってブログにしていきたい。