【ゆるゆり1期感想】「動画工房=萌えアニメ」の原点的作品

星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『ゆるゆり(以下、ゆるゆり1期)』について語っていく。

『ゆるゆり』はなもりによる漫画(百合姫コミックス)が原作で、2011年夏クールにTVアニメ1期が放送された。

アニメ制作は動画工房が担当している。

目次

『ゆるゆり1期』の評価

※ネタバレ注意!

作画85点
世界観・設定80点
ストーリー87点
演出85点
キャラ88点
音楽89点
※個人的な評価です

作画

作画のクオリティは非常に高いと思う。2011年夏クールの時点だと、日常系アニメでこれほどまでのクオリティに到達しているのは、京アニ作品以外だと『ゆるゆり』だけなのではないだろうか。

実際、日常系アニメに関わらず、キャラの動きが非常に良く、カメラワークを用いるなど、高カロリーの作画が連発だった。正直、文句のつけどころは一切ない。

世界観・設定

タイトルの『ゆるゆり』の通り、超絶ゆるい百合アニメという感じで、ほとんど日常コメディ作品である。百合と言っても、全然キツくないので、”萌え”を愛する全ての萌え豚が楽しめる世界観になっている。

また『けいおん!』などを参考にしたのか、徹底的に男性キャラが省かれているのも特徴だ。

ストーリー

基本的に1話完結型で、複数のエピソードが1話の中で展開されている。そして『ゆるゆり』は、1話あたりの満足度が非常に高く、下手すると「全話神回」のレベルだった。原作時からのエピソードが魅力的なことに加え、ストーリー構成が非常によくできているのだと思う。

演出

『ゆるゆり』は日常系アニメとは思えないぐらい演出にこだわっていたと思う。本当に細かい部分まで気を使っているのがわかるし、ときには大胆な画面構成を仕掛けてくることもある。京アニが『らき☆すた』や『けいおん!』で萌えアニメの動きのパターンを確率し、それをベースに動画工房が『ゆるゆり』でもっと大衆的にした感じだ。

キャラ

『ゆるゆり』の最大の魅力と言ってもいいのがキャラだ。主人公の赤座あかりが「主人公なのに影がめちゃくちゃ薄い」という設定になっていて、この設定をあからさまに使ってギャグを仕掛けることもあれば、”影薄い設定”を超さりげなく仕掛けてくることもある。それにもかかわらず、赤座あかりが一番人気で、実際、僕もアッカリーンが一番好きだ。

音楽

OPの『ゆりゆららららゆるゆり大事件』は説明不要。もう少し作画で気合を入れても良かったんじゃないかなと思ったけれど、あの穏やかな感じの映像も普通に好きなので、まあ良し。

EDの『マイペースでいきましょう』もめちゃくちゃ良くて、なんだかんだでOPよりも電波ソングって感じがする。ライブでめちゃくちゃ盛り上がりそうだ。

『ゆるゆり1期』の感想

※ネタバレ注意!

「動画工房=萌えアニメ」の原点

ずっと前から「動画工房の作品は全部見よう!」と決めていて、たまたま2024年から『ゆるゆり』のスピンオフ作品である『大室家』が劇場公開されるということで、『ゆるゆり』を一気に視聴することを決めた。

それで動画工房の作品履歴をWikipediaで参照していくと、どうやら『ゆるゆり』から「動画工房=萌えアニメ」の原点らしきことに気づく。これまで動画工房は『ゆるゆり』を始め『未確認で進行形』『NEW GAME!』『干物妹!うまるちゃん』などの日常系アニメ(萌えアニメ)を手がけてきたけれど、意外にも、その始まりは2011年制作の『ゆるゆり1期』だった。それまでの動画工房はTVアニメを元請けであまり制作していなくて、仮に制作していても、基本的にはギャルゲ原作だったのだ。

ということで『ゆるゆり1期』が「動画工房=萌えアニメ」のブランディングの原点とも言えるのだけれど、実際、クオリティは非常に高かった。2011年制作なのだけれど、現代でも十分に通用する動きだった。

特に興味深かったのがカメラワークだ。一般的に、アニメ作品のほとんどはカメラを動かすことがなく、仮に動かしてもパンやティルト程度である。しかし『ゆるゆり1期』ではたまに、カメラを大胆に動かす画面構成が用いられるのである。実は、柔軟なカメラワークは、実写よりもアニメの方が、本来であればやりやすい。ただし、高い技術力とリソースが求められることから、採用されることはほとんどない。でも『ゆるゆり1期』で、それをやってしまっているのである。

このようなカメラワークは、本来であればアクションシーンで用いられるべきであって、日常系アニメで実施する必要性はほとんどない。でも動画工房は、それを平気でやってしまうのである。日常系アニメは、本来であれば制作費が安く済むはずなのに、それ関係なしに膨大なリソースを注ぎ込む。これが動画工房の最大の強みだ。

京アニに近い部分を感じる

2000年代後半、京アニは『らき☆すた』や『けいおん!』などの作品で「萌えアニメでも高クオリティ」というとんでもないことをやってのけ、視聴者がそれを当たり前に思うようになったことから、他者の作品でも、2010年代に入ってからクオリティを追求するようになった。そしてその先駆けが、2011年夏クール公開の『ゆるゆり1期』だと僕は考えている。

実際『ゆるゆり1期』は、京アニ作品に近い部分を感じる。作画はもちろんのこと、男性キャラの徹底的排除や、AパートとBパートの間のBGMは、どう考えても『けいおん!』を意識しているようにしか思えない。

それでいて、動画工房は漫画原作のアニメ化が基本で、原作のキャラデザを忠実に再現するのが、京アニ作品と大きく異なる点になっている。たしかに『ゆるゆり1期』は、原作漫画のキャラデザを忠実に再現している。

京アニが萌えアニメの基本パターンを作り、それを動画工房が、より漫画に歩み寄れる形にパターンを改革。その原点的作品が『ゆるゆり1期』ということになる。

赤座あかりがいいよね

『ゆるゆり1期』はキャラクターが非常に強いのだけれど、その中でもひときわ異彩を放っているのが主人公の赤座あかりだ。

赤座あかりは、主人公のくせに、とにかく影が薄いのである。このキャラ設定が、もはや『ゆるゆり1期』の最大の特徴になっているぐらいだ。

しかも、この「影が薄い」という設定は、本当にガチで影が薄い。キャラを立たせるために作られた付加設定ではなく、マジで影が薄いのだ。普通に赤座あかりをガン無視でストーリーが進むことがある。

別に赤座あかりに「影が薄い」設定をつけなくてもよかったのではないかと思うけれど、この設定が加わることで『ゆるゆり』は絶大な人気を獲得することになる。ちょっとブラックなギャグが許される世界観を構築することに繋がったので、より強烈なギャグを盛り込むことが可能になったのだ。

その結果、ちょっとだけキツい百合要素も加わり、絶妙なバランスの(ちょっとブラックな)日常系百合アニメを構築することに成功したのである。

さいごに

『ゆるゆり1期』が2011年夏クールに放送されたあと、2012年夏クールに『ゆるゆり2期』が放送されている。こちらも動画工房制作なので、非常に楽しみ。早速視聴したいと思う。

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