【ガーリッシュナンバー感想】声優版『SHIROBAKO』でした

ガーリッシュナンバー

今回は『ガーリッシュ ナンバー(以下、ガーリッシュナンバー)』について語っていく。

『ガーリッシュナンバー』は、『俺ガイル』で有名な渡航とQP:flapperによるメディアミックス作品だ。2016年7月に小説が刊行された後、2016年秋クールにTVアニメが放送された。アニメ制作はディオメディアが担当している。

目次

『ガーリッシュナンバー』の評価

※ネタバレ注意!

作画65点
世界観・設定70点
ストーリー70点
演出70点
キャラ75点
音楽70点
※個人的な評価です

作画

ザ・量産型アニメの典型的な作画。別に非難しているわけではなく、むしろ「コストの抑え方」は上手なように思える。とにかくキャラデザを安定させることに重きを置いていて、動きが少ない。けれども見栄えは良いので、多くの萌えアニメファンからすれば、普通に楽しめるものになっている。

最終回のライブシーンも相当節約している。しっかり割り切っているからこそ、キャラデザも非常に安定したものになっている。

世界観・設定

声優版『SHIROBAKO』みたいな舞台設定。そして脚本を担当している渡航の個性が惜しげもなく発揮されている世界観だ。この世界観の作り方には賛否両論があると思うけれど、作家の個性が強く反映しているという点において、僕は面白いと感じる。

ストーリー

先ほども述べた通り、渡航の世界観が強く反映されている。渡航は『俺ガイル』でもそうだった通り、キャラの性格の悪い部分を描くのが得意だ。そしてそれはなんだかんだで、現代の若者の心情に非常によく似ている。現代人の性格は単純なものではなく非常に複雑だ。そしてその複雑性をストーリーに落とし込むのが、渡航は抜群に優れていると感じる。

なお『ガーリッシュナンバー』の場合、1つ1つのエピソードのシナリオは個人的に非常に面白かったけれど、全体を通しての構成は微妙だった。しかしそれは「原作小説を読んでくれ」ということなのかもしれない。

演出

会話のテンポ感が良く、ギャグの切れ味もいい。リアルな会話を演出するために、音響部分で様々な工夫を実施したのだと思う。ちなみにアニメーションにおける演出は普通。

キャラ

典型的な萌えキャラという感じ。そして性格の悪い感じが非常に強調されていて、逆に新鮮だ。個人的には主人公の烏丸千歳や苑生百花の性格の悪い部分が現代的で好き。

また、各キャラが非常に個性的で、流石に印象付けられてしまう。やっぱりこれぐらい強調してしまうのが現代アニメの特徴だ。

音楽

OPの『BLOOM』とEDの『今は短し歩けよ乙女』は中々の良曲。というか現代アニメの音楽は、大半が良曲になってきている。

『ガーリッシュナンバー』の感想

※ネタバレ注意!

やはり、声優業界の在り方には考えさせられる

『ガーリッシュナンバー』は非常に挑戦的な作品だったと思う。

『ガーリッシュナンバー』は、言ってしまえば声優版『SHIROBAKO』のようなもので、声優業界の裏側を、声優業界と癒着しているアニメで描くというものだ。しかも声優業界のダークサイドを積極的に描こうとしていて、そのうえキャラの性格も非常に悪いのだから、これはもう挑戦的……というか煽り要素満載な作品だった。

実際に声優業界が『ガーリッシュナンバー』で描かれているようなものなのかはわからないが、やはり声優業界については考えさせられる。

そもそも声優は声の俳優なわけだけれども、現代の声優はアイドル化してしまっている現状がある。ビジネス的にはこれが正しいのかもしれないけれど、文化的に正しいのかどうかは微妙なところだ。

結局『ガーリッシュナンバー』の作品としては着地点が曖昧だったので、「声優業界はこうあるべきだ!」みたいなメッセージはほとんどない。ただ個人的には、現在の声優業界の在り方が完全に正しいとは思えないのも事実だ。もっと何か大きなムーブメントが、声優業界には必要だと日々感じている。

作家の個性をアニメに反映させることの難しさ

『ガーリッシュナンバー』は渡航の個性が非常に強く反映した作品だと思う。そういう意味では、作家の個性をアニメに反映させることに成功した作品だ。

実際問題、作家の個性をアニメに反映させることは非常に難しい。なぜならアニメの場合、作家だけではなくプロデューサーやアニメーターの意見を取り入れる必要があるからだ。そして結果的に作家の個性が薄れていく。

とはいえ『ガーリッシュナンバー』も完全に成功したとは言い難い。ネット上の評判を見る限り、ビジネス的におそらく赤字になっているからだ。これはある意味当然で、作家の個性が強く反映されている結果、見る人を選ぶ作品になっているからだ。それはつまり、マス展開しづらいということである。

これがもし小説であれば、マス展開させる必要がない。なぜなら小説の原価はほとんど紙だけで、大量のコストを回収する必要がないからだ。大半の場合は、作家の時間だけがコストとなる。

しかしアニメは、諸々で億単位のコストが発生する。そして大量のコストを回収するために、多くの人に作品を届けなければならない。だから内容がどうしても希薄になり、個性が出なくなる。しかし個性が出なければ作品としての面白みが薄れて結果的に売れない。

これが作家の個性をアニメに反映させることの難しさだ。渡航はたしかに、現代的な人間関係を描くのが非常に優れていると思うし、プロデュース次第では凄まじい作品に化ける。その典型的な例が『俺ガイル』だ。
もちろん『ガーリッシュナンバー』も作品としては個人的に非常に面白かったと思う。けれど残念ながら『俺ガイル』ほどの人気度からは、ほど遠い結果となった。その理由はおそらく、プロデュース面にあると思う。『ガーリッシュナンバー』で描いたプロデューサーの無能さが、皮肉ながらもまさに反映されているのかもしれない。

まあ正直なところ「アニメ作品は10発打って1発大当たりすれば十分元が取れる」みたいな感じの世界だ。そう考えると、やはり『ガーリッシュナンバー』のような挑戦的で個性強烈な作品がもっと増えていっていいと思う。

さいごに

それにしても、やはり渡航が描く現代的な心情描写は面白い。好き嫌いあるのかもしれないけれど、少なくとも僕は好きだ。ところどころで『俺ガイル』を彷彿とさせるセリフも見受けられた。

さすがに『ガーリッシュナンバー』を視聴している人で『俺ガイル』を視聴していない人というのはほとんどいないと思うけれど、『俺ガイル』の原作小説もぜひ読んでみていただければと思う。

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