今回は『雨を告げる漂流団地』について語っていく。
『雨を告げる漂流団地』は、スタジオコロリド制作による長編アニメーション映画だ。アニメオリジナル作品となっている。
スタジオコロリドは『ペンギン・ハイウェイ』や『泣きたい私は猫をかぶる』などで話題になった新進気鋭のアニメスタジオだ。
『雨を告げる漂流団地』の感想
※ネタバレ注意!
解体工事には思い出が詰まっている
街中を歩いていると、解体工事が実施されているのをよく見かけるだろう。戦後のベビーブームと高度経済成長の影響で、1950年代から60年代にかけて団地がたくさん建設され、そして老朽化のための解体工事が今になって進められているのだ。
『雨を告げる漂流団地』の舞台となった団地も60年前に建設されたということで、時期が重なる。そしてその団地というのは、60年分の思い出が詰まっているのだ。
つまり、だ。僕たちがよく見かける解体工事でも、沢山の思い出が詰まっていたのだといえる。それを漂流系ファンタジー作品に昇華させたのが本作だ。だから僕は、解体工事を見るたびに、この映画のことを思い出すのだと思う。
しかし前を見なければならない
『雨を告げる漂流団地』は、いわゆる漂流系(サバイバル系ともいえる)の作品だといえる。漂流系は大体の場合、主人公またはヒロインの影響で漂流されてしまう。『雨を告げる漂流団地』でいえば、ヒロインの夏芽の影響が強かった。それと団地を擬人化させたのっぽくんかな。
そして夏芽は、いつまで経っても団地に囚われてしまっていた。過去に囚われてしまっていたのだ。だから団地は……のっぽくんは漂流してしまったのだと思う。
そして紆余曲折ありながらも、最終的に夏芽は前を向くことができた。それと同時に、主人公の航祐も夏芽と真摯に向き合えるようになり、前へと進むことができるようになる。
これは僕の憶測だけれど、小学生(本作の少年少女は小学6年生)というのは、大人が思っているよりも、思い出に執着してしまうのだと思う。なぜならまだ10歳ぐらいしか生きたことがないからだ。『雨を告げる漂流団地』のように、団地に何年も住んでいるのであれば、生涯のほとんどの思い出が団地に存在することになる。
そして親は、それをしっかり理解するべきだと思う。『雨を告げる漂流団地』のように子どもが漂流してしまうことはないだろうけど、精神的な負担になっている可能性がある。「その過程も大人になるために必要だ」と言ってしまえばそれまでだが、子どもが悩んでいるようであれば、それをしっかり聞いてみるのも親の役目なのだと思う。
『雨を告げる漂流団地』の評価
作画 | 93点 |
世界観・設定 | 85点 |
ストーリー | 85点 |
演出 | 85点 |
キャラ | 80点 |
音楽 | 80点 |
作画
『雨を告げる漂流団地』の最大の魅力は作画だ。とにかく作画のクオリティが高い。キャラの動きもそうだが、3DCGや美術背景が凄い。映画クオリティである。良い意味で、新海誠作品劣化版みたいな感じだ。
世界観・設定
僕は個人的に『雨を告げる漂流団地』の設定を高く評価している。多分、僕は解体工事を見る度に「雨を告げる漂流団地』を思い出すからだ。50年代の建設ラッシュのツケである現代の解体工事から、こんなファンタジー作品を生み出すクリエイティビティが羨ましい。
ストーリー
ストーリーは決してスマートなものではなかったと思う。というのも、課題に対して1つ1つ潰す形でストーリーが展開されたからだ。最後にスマートに解決……というわけではなかった。まあ、そういうストーリー展開でも悪くはないのだが、「だったらTVアニメの方がいいんじゃね?」と思ってしまう。実際、尺は120分ほどあったわけだから、『雨を告げる漂流団地』はストーリーだけでいえばTVアニメ向けだったのかもしれない。
演出
演出のクオリティも高かったと思う。鑑賞していて僕も思わず、「これ、バッドエンドになるんじゃないか?」と思わせるほど、絶望的な雰囲気を作り出せていた。また、ギャグシーンもクスッと笑えるぐらい面白かったので、飽きることがなかった。
キャラ
今回は小学生がメインキャラだったわけだけれども、小学生特有の心情を描写できていたと思う。また、頭の中に印象が残るぐらい、キャラの個性が強かった。これは人気声優を惜しげもなく使ったのが大きかったように思える。
音楽
主題歌及び挿入歌は”ずっと真夜中でいいのに。”が担当した。なんとなく夜型の雰囲気の曲が印象に残るアーティストだけれど、今回は比較的爽やかな楽曲だった。それと『雨を告げる漂流団地』は劇伴も良かった。回想シーンのBGMではノスタルジーを感じた。
さいごに
『雨を告げる漂流団地』をきっかけに、僕は多分、スタジオコロリド作品を全部視聴することになると思う。それぐらいクオリティの高い作品だった。現代的なアニメスタジオの代表格になると思われる。ストーリーもクリエイティビティを感じさせるもので、僕が好きなタイプの作品だ。
また、次作も制作中とのことなので、楽しみにしておきたい。