科学の源泉が『ペンギン・ハイウェイ』にはある

ペンギン・ハイウェイ

今回は『ペンギン・ハイウェイ』について語っていく。

『ペンギン・ハイウェイ』は森見登美彦による小説が原作で、2010年に刊行。第31回日本SF大賞を受賞している。

そして2018年にアニメ映画が公開。アニメ制作はスタジオコロリドが担当した。

目次

『ペンギン・ハイウェイ』の評価

※ネタバレ注意!

作画92点
世界観・設定88点
ストーリー83点
演出85点
キャラ78点
音楽78点
※個人的な評価です

作画

作画のクオリティは非常に高い。流石、スタジオコロリドという感じである。

背景の作り込みが素晴らしい上、キャラクターもよく動くし、何よりもペンギンの動きが可愛らしい。それも、あれだけの数のペンギンを描いているわけだから、相当のリソースを割いたことだろう。

世界観・設定

森見登美彦っぽい世界観かと言われると、そういうわけではない。あの近代文学風な台詞回しも影を潜めているし。

ただSF作品として色々考えさせられるのは間違いない。死生観とか循環システムとか。そして科学に対する姿勢も学べてしまう。たしかにSF作品として非常に優れている。

ストーリー

120分越えということで、比較的長尺。でも普通に飽きずに楽しめた。僕は『ペンギン・ハイウェイ』を実家の自室で視聴したのだけれど、家族が不用意に話しかけてきて、それでイラッとするぐらいには『ペンギン・ハイウェイ』のストーリーに集中できた。

森見登美彦先生の作品がアニメ化される際は、一般的にたっぷり尺を使うのだけれど、それに比べると『ペンギン・ハイウェイ』は少々尺不足かもしれない。実際、SF要素の説明が少し薄かったと思う。

ただし映像表現が素晴らしいし、映像のための脚本だったと思うから、まあどっこいだ。

演出

以前『雨を告げる漂流団地』を鑑賞したのだけれど、今回の『ペンギン・ハイウェイ』と監督が同じということで、映像表現が似ていた。特にギャグシーンのあのテンポ感が良い。

ただできることなら、もう少し森見作品らしさがあると個人的に良かったなぁ。でも小学生が主人公だと難しいか……。

キャラ

キャラはかなり個性的。アオヤマ君は小学生だけど森見作品らしさのある主人公。お姉さんも例外ではない。また、小学生の癖にチェスが強いハマモトさんも、森見作品らしさがある。逆に、それ以外のキャラは割と普通だった。

音楽

特に印象的な劇伴があるわけではなかった。

『ペンギン・ハイウェイ』の感想

※ネタバレ注意!

森見登美彦の色は抑えめ

僕は森見登美彦原作のアニメ作品が大好きだ。そして今回の『ペンギン・ハイウェイ』をもって、森見登美彦原作のアニメ作品を全部視聴したことになる。

森見登美彦の個性が最大限に発揮されているのは、やはり『四畳半神話大系』などの湯浅政明作品だろう。少し陰湿でエッチな台詞回しが最高だった。

『有頂天家族』も悪くない。あの温かい世界観はP.A.WORKSだから作れるものだ。

では『ペンギン・ハイウェイ』はどうだろうか。個人的に、森見登美彦の色がかなり抑えられていると思う。これは原作小説が元々そうなっているのか、それともアニメ制作の段階で抑えたのかはわからない。ただ1つ考慮しなければならないのは『ペンギン・ハイウェイ』がプロモーション色の強い作品ということである。

製作委員会に名を連ねるのはフジテレビ、東宝、KADOKAWAなど。そして何よりも、電通が入ってきているのが厄介だ。個人的に、電通が製作委員会に参加している作品は、大衆向けになってしまいがちだと感じる。そのために、森見登美彦の色が薄まってしまったのではないかと僕は考える。

実際『ペンギン・ハイウェイ』のメインキャストには声優ではなく女優が起用された。女優を起用するのは別に悪いことではないが、森見登美彦作品は台詞回しが絶対に重要である。それに見合ったキャスティングなのかと言われると、何とも言えない。まあ多分、プロモーションだと思う。

科学の源泉が『ペンギン・ハイウェイ』にある

正直、僕は『ペンギン・ハイウェイ』の全てを理解できなかった。というか多分、そういう作品なのだと思う。これはぜひとも原作小説を読んで、もっと理解を深めたいところだが、とりあえず現段階での僕の感想を述べていく。

まず『ペンギン・ハイウェイ』の最大の魅力は、知的好奇心の素晴らしさを伝えようとしているところにあると感じる。『ペンギン・ハイウェイ』の主人公であるアオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録している。毎日のように実験を繰り返し、わからないことについてとことん研究する。

そしてアオヤマくんは”お姉さん”という問題に出会い、最終的に”お姉さん”という問題を解決することができなかった。だがしかしアオヤマくんが探究を辞めることはない。”お姉さん”にまた会うために、そして”世界の果て”を見つけ出すために、研究を追求していくのである。

実際、”世界の果て”というのは、僕たちの世界でもよくわかっていない。はたして本当に”世界の果て”なんてものがあるのか。仮にあるとして、それはどこにあるのか。宇宙の端っこなのか。それともアオヤマくんのお父さんが言うように、実は内側にあるのか。どちらにせよ科学者たちは、その壮大な問題に向き合うために、膨大な時間を費やす。

この問いに”おっぱいの謎”を絡めてくるのが森見作品らしいけど、しかしこの知的好奇心の探究は実に素晴らしいものだ。実際、僕たちが普段から使っているツールの大半は、人類の知的好奇心の探究によって誕生したものである。それを”小説”という作品に落とし込んだ森見登美彦も素晴らしいし、クリエイティビティ溢れる世界観を映像化したスタジオコロリドも素晴らしいと思う。

さいごに

ついに森見登美彦のアニメ作品を全部視聴した。個人的に森見登美彦の台詞回しが好きなので、原作小説も読んでいこうと思う。

また、スタジオコロリドは、やはり映像表現が素晴らしい。特に美術背景が強く、そのクオリティは新海誠作品にも引けを取らない。今後はスタジオコロリド作品をガンガン視聴していこうと思う。

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