【キノの旅何かをするために感想】旅に必要な「人を殺す冷酷さ」

今回は『キノの旅 何かをするために -life goes on.-(以下、キノの旅何かをするために)』について語っていく。

『キノの旅』は時雨沢恵一によるライトノベル(電撃文庫)が原作で、2003年春クールにTVアニメ第1作が放送される。

そして2005年に『キノの旅 何かをするために』がユナイテッドシネマとしまえんで単館上映で公開される。アニメ制作はA.C.G.T.が担当した。

目次

『キノの旅 何かをするために』の評価

※ネタバレ注意!

作画75点
世界観・設定・企画80点
ストーリー80点
演出78点
キャラ78点
音楽76点
※個人的な評価です

作画

TVアニメに比べてリソースに余裕があったからか、手抜きのための演出がほとんど見受けられず、丁寧に描かれていた印象がある。個人的に印象的だったのは、キノが初めて旅に出たときの、老婆と会話するシーンにおける、ぐるぐる回るカメラワークだ。あれは全部3DCGなのだろうか……。元々の手描きアニメがローテク気味だから、ローテクな3DCGと高いレベルで融合していて、あれは多分、計算でやったと思う。

世界観・設定・企画

タイトルにもある「何かをするために」が、本作のメッセージ性だ。また、ユナイテッド・シネマとしまえんの単館上映というのも熱い。日本中の『キノの旅』ファンが、映画を見るために1つの映画館に集まるのだから、不思議な雰囲気を醸し出していたことだろう。

ストーリー

キノが旅に出る前のエピソードである『何かをするために -life goes on.-』がメインエピソード。それに加えて『塔の国 -Free Lance-』も収録されている。結局のところは、どちらも「何かをするために」をテーマにしたストーリーだったように思う。

演出

やはりグルグル回るカメラワークがとても印象的だった。TVアニメで描かれるキノは感情がやや乏しいのだけれど、今回の『キノの旅 何かをするために』で描かれるキノは、まだ感情が豊かだったので、それにあわせた演出が採用されていたように思う。

特に、狂気に満ちた老婆と対峙するシーンの演出は圧巻だった。めちゃくちゃ怖かった。

キャラ

キノに大きな変化が見られるエピソードだっただけに、キノの内面がよく見えた。なぜキノの感情が薄くなってしまったかがよくわかった。

音楽

あらためて主題歌の『all the way』とか『the Beautiful World』とか聞くと、やっぱりいい曲だなぁと思う。それと本作の新主題歌『はじまりの日』もなかなかに良かった。

『キノの旅 何かをするために』の感想

※ネタバレ注意!

旅をするために必要なもの

タイトルにある「何かをするために」の「何か」とは、今回のエピソードに関しては、間違いなく「旅」だと思う。では「旅をするために」は、一体何が必要なのだろうか。簡単に言えば、それは「自分を守るための力」である。

現在、ノマドワーカーが一般的な働き方になりつつある。僕も一時期、日本国内を回りながら生活していたことがあった。

当然のことながら、旅しながら生きていくためには、一定のお金が必要になる。では、どのようにしてお金を稼ぐのか。その方法はいくつか考えられるが、そのほぼ全てで、コンピュータの活用が必要不可欠となる。僕の場合は「執筆」がお金を稼ぐ手段だったから、執筆するためのPC及びスマートフォンの活用が必須だった。これは、いわゆる「稼ぐ力」であり、サラリーマンの給与とは異なり「自分で稼ぐ」ということである。

一方で『キノの旅』における世界観の場合、我々が住む現代社会に比べて、全体として文明が発展していないことから、自分の身を守るための力が、旅には必要だったと考えられる。そのための力として、キノは師匠から銃の取り扱いを学んだ。キノは銃の使い方に長けているため、自己防衛はもちろんのこと、食糧確保のための狩猟ができる。これに加えて、モドラドという移動手段の取り扱いをマスターしたキノは、旅をするために必要な力を全て手に入れることができた。

と思っていたのだが、キノに足りないものが1つだけあった。それは「人を殺す冷酷さ」である。自分の身を守るためとは言え、やはり「人を殺す」という行為には抵抗がある。そこで師匠は、キノを上手く誘導し、人を殺すためのレッスンを施したのだ。それがあの狂った老婆関連のエピソードである。

ここでキノは老婆を殺すことで、自分を守るために必要な「人を殺す冷酷さ」を身につけ、同時に、少しばかり感情を失った。

さいごに

次回作となる『キノの旅 病気の国』は、なんとシャフトが制作を担当しているらしい。どう考えたって『キノの旅』とシャフトは、相性抜群である。ということで、早速視聴次第、ブログにしようと思う。

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