『ショッキングピンク』がピーク

境界の彼方
星島てる
アニメ好きの20代。ライターで生活費を稼ぎながら、アニメ聖地の旅に出ている者です。アニメ作品の視聴数は600作品以上。

今回は『境界の彼方』のTVアニメについて語っていく。

『境界の彼方』は2012年からKAエスマ文庫で刊行されている小説が原作だ。これを京都アニメーションがアニメ化。2013年秋クールにTVアニメが放送される。

目次

『境界の彼方』の評価

※ネタバレ注意!

作画88点
世界観・設定78点
ストーリー79点
演出80点
キャラ80点
音楽75点
※個人的な評価です

作画

京アニ作品の中では珍しく戦闘シーンが非常に多い作品だった。ということで『境界の彼方』は、京アニの戦闘シーンを思う存分楽しめる数少ない作品である。

実際、戦闘シーンの見応えは十分すぎるほどだった。ただし、他の制作会社に比べて戦闘シーンの経験値が少ないからか、カメラワークが単調だったように思える。……ufotableのせいで目が肥えてるのかも。

なお、キャラクターの柔らかい動きは相変わらずの仕上がりだった。個人的には、戦闘シーンよりも日常シーンの方をずっと見ていたかった。

世界観・設定

『中二病でも恋がしたい!』よりも中二病な世界観・設定だったと思う。2010年前後で多く見受けられる「学園×ファンタジー」の設定だった。この世界観というか雰囲気は、普通に好きになれる。

ストーリー

ストーリーは、京アニの割にはちょっと微妙だったかもしれない。やはり少々難しい設定なのと、メッセージが弱かった。

それと個人的には、序盤と終盤よりも中盤の方が面白く感じた。ということは、ピーク時の盛り上げ方がちょっと残念だったということなのだろうか。

実際、終盤の展開の速さは何とも言えない感じである。壮大な世界観のSF作品であればついていけそうだけれど……。なぜ栗山未来は生き返ることができたのだろうか。

演出

個人的にギャグの演出はめちゃくちゃ面白かった。京アニ作品の中でも、日常パートのテンポ感が良い。逆に戦闘シーンの方が、テンポ感が悪かったかもしれない。

キャラ

男性ファンはもちろんのこと、女性ファンでも推しが作れそうなキャラだった。

まずヒロインが最高に良い。栗山未来を始め、名瀬美月、新堂愛などなど、全体的にヒロインが良い。それと男性キャラも強力で、変態キャラなのが良い感じ。男性ファンは普通にギャグとして楽しめるし、女性ファン(腐女子)もそれはそれで楽しめる。

音楽

OP『境界の彼方』は、まるでKey作品のような幻想的なメロディーが印象的だった。茅原美里の声質にマッチしている。EDの『Daisy』も中々爽快。そして第6話挿入曲『約束の絆』も十分に楽しませてもらった。

『境界の彼方』の感想

※ネタバレ注意!

ちょっとKey作品っぽいかも?

『境界の彼方』は、これまでの京アニ作品の中でも異色の作品だと言える。日常パートが少なめで基本的にシリアスパートだし、ファンタジー要素が強すぎる。

このようにシリアスパート多めのファンタジー要素が強めで、かつ京アニ作品ということになってくると『境界の彼方』以外ではKey作品が挙がってくる。実際『境界の彼方』は、Key作品っぽい雰囲気が漂っている気がする。

まず『境界の彼方』はボーイミーツガールの作品だった。実際に『境界の彼方』の始まりと終わりは、神原秋人と栗山未来の出会いが描かれている。

また、終盤の超絶ファンタジー展開もKey作品に似ている節がある。あの視聴者を置き去りにしていく感覚は、Key作品に近い。

それにギャグセンスも『境界の彼方』とKey作品で結構似ている感じがする。特に第6話『ショッキングピンク』のノリは『Angel Beats!』の空飛ぶ椅子や『CLANNAD』の便座カバーのノリに近い感じがした。

以上のことからも『境界の彼方』とKey作品では、雰囲気というか世界観が近しいことがわかる。しかし『境界の彼方』はKey作品とは異なり、感動に特化しているわけではない。そう、盛り上がりに欠けてしまうのだ。

『境界の彼方』が「雰囲気だけ」と言われてしまうのも、この点にあるのではないかと思う。あれだけの雰囲気が作り込まれているのに、肝心のストーリーが、それに追いついていない感じなのだ。

『境界の彼方』のピークは第6話

では『境界の彼方』のピークはどこにあるのだろうか。それはほぼ間違いなく第6話『ショッキングピンク』だと思う。

『境界の彼方』の日常パートは全体的にキレが良いのだけれど、その中でも『ショッキングピンク』は特筆すべきものだった。まず視聴始めの段階で”妖夢”はシリアスな設定だと思っていたのだけれど、それを容易にぶち壊す変態気質の風船系妖夢が登場。そこから登場人物が幾度となく風船系妖夢に挑むも返り討ちに、しかもその風船系妖夢の攻撃は殺傷能力がほぼゼロで、その代わりに強烈な臭いを相手に付与する。最後の最後で渾身のライブパフォーマンスで風船系妖夢の気をそらすことに成功するも、結局討伐に失敗し、ここで物語が終了する。

『ショッキングピンク』は、これまでの京アニ作品の中でも屈指の遊び回だった。とにかく全力でふざけている感じがたまらなく良い。それにヒロインのシャワーシーンが挿入されていることからもファンサービス回であることが窺える。

そして『境界の彼方』は、シリアスパートで『ショッキングピンク』の盛り上がりを超えなければならなかった。たしかにこの点で言えば、Key作品はすごい。『Angel Beats!』も空飛ぶ椅子を上回るほどの感動を見せてくれたし、『CLANNAD』は説明不要だろう。

もしかしたら『境界の彼方』は理屈の部分が強すぎたのかもしれない。ストーリーの整合性を確保しようとしすぎたがあまりに感動が薄くなってしまったのかもしれない。これならいっそのこと、Key作品のように整合性を一旦置いといて、感動に特化してみても良かったかもしれない。

これがアニメにおける脚本制作の難しいところである。それなりの人数がシナリオ構築に参加するため、どうしても理屈っぽくなりやすい。『境界の彼方』は、それの悪いところが出てしまったのかもしれない。

さいごに

『境界の彼方』は、劇場版が前後編で公開されている。前評判によると前編がTVアニメの総集編で、後編が完全新作らしい。もしかしたら、なぜあのラストになったのか、その理由が詳しく語られるかもしれない。

視聴次第、ブログにしたいと思う。

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