今回は『真夜中ぱんチ』について語っていく。
『真夜中ぱんチ』はP.A.WORKSのアニメオリジナル作品で、『パリピ孔明』のスタッフが再集結して制作されているのが特徴。2024年夏クールに放送された。アニメ制作はP.A.WORKSが担当している。
『真夜中ぱんチ』の評価
※ネタバレ注意!
作画 | 80点 |
世界観・設定・企画 | 80点 |
ストーリー | 80点 |
演出 | 80点 |
キャラ | 78点 |
音楽 | 85点 |
作画
個人的には『パリピ孔明』よりも作画の印象がいい。キャラクターはよく動くし、漫画的な表情描写にハマれた。事実上の戦闘シーンも、しっかり作り込まれている。毎話必ずクライマックスが用意されているけど、そのときの作画もよかった。
世界観・設定・企画
「YouTube」をテーマにした作品は、イマドキ珍しくもないけど、そこにヴァンパイアを組み合わせて、ファンタジー要素を強めている。企画そのものについては、個人的に『夜のクラゲは泳げない』よりも好き。
ストーリー
基本的に1話完結型で進む。コメディ全振りかと思ってたけど、想像以上に感動要素が多く、1話につき必ず1回はクライマックスを迎える。テンポ間も悪くないし、終盤の流れからの締めくくりも絶妙だった。
演出
P.A.WORKSと言えば繊細な表現が多めだけど、本作はコメディ感が強く、キャラクターの顔も崩れる。漫画的な表現が多い。でも全体的には優等生で、自然な流れを意識したカット割りになっている。
キャラ
声優の演技が中々にツボ。キャラクター同士の掛け合いもおもしろい。結構マジで、全キャラ好きになれる。
音楽
これほどまでに「夜」を表現した主題歌は中々ない。OP『ギミギミ』は完全に電波ソング寄りで、映像については『パリピ孔明』のOPが強く意識されている。クラブって感じがする。
一方のED『編集点』は、とにかく歌詞が素晴らしい(特に1番サビ)。んで、ベッドタイムミュージックというか、チルな雰囲気も感じられる。ちなみに歌は長谷川郁美(キタちゃん!)。
『真夜中ぱんチ』の感想
※ネタバレ注意!
全てがEDに詰まってる
YouTuberとしての活動にのめり込みすぎた主人公・真咲が、ヴァンパイアとの出会いをきっかけに、人間らしさとか日々の楽しさとかを取り戻していく物語。そして、その全てがED『編集点』に詰まっているように思う。
朝と夜の間をもっと、繋いだりカットしたいんだけど
面白いことなにもないよな 余白は邪魔だから
真夜中ぱんチがYouTuberとして活躍するきっかけになったのは、真咲が「余白」のおもしろさに可能性を見出したから。これは、時間に追われて余白を失っている現代人に対するメッセージだと見ていいだろう。
たしかに僕も、Googleカレンダーをギュウギュウに詰める生活を送っている。まるで余白を全部カットするYouTube動画のように。
でも、本当におもしろいことは「余白」に眠っているのだとしたら?
僕たちはもっと余白を、そしてありのままの日常を大事にすべきなのかもしれない。
『ヨルクラ』もそうだけど「夜」を描きたがる
『真夜中ぱんチ』は、ヴァンパイアが日中に活動できないので、基本的に「夜」が舞台になっている。本作のメインスタッフが制作した『パリピ公明』も「夜」が舞台だ。
また、『真夜中ぱんチ』と近いテーマを取り扱っていた『夜のクラゲは泳げない』も「夜」が舞台となっている。
一体なぜ、これらの作品は「夜」を描きたがるのか。それは、アニメという媒体そのものが「夜」の属性を持っているからだ。
僕が思うに、この事実は非常に重要である。今、世界を動かしているビッグテック企業の多くは、朝早く起きて、仕事に取り掛かっている。
一方でアニメ業界はどうだろうか?
推測に過ぎないが、おそらくアニメ制作側も、アニメファンも、夜の生活になっていると思うのだ。多分、プロデューサー界隈の食事会も、当たり前だけど夜。
そして実のところ、YouTubeも「夜」の属性を持っている。僕も、YouTubeを一番よく見てしまう時間帯は「夜」だ。
時間生物学的には、人間は「夜」にもっとも欲望のコントロールが効かなくなる。お金もお酒も女も、全部夜のもの。そんな夜だからこそ、YouTubeをつい見ちゃうわけだし、アニメに何かを期待するのかもしれない。
さいごに
続編を制作できそうな終わり方だったけど、これまでのP.A.WORKSの方針を考えれば、2期制作はないだろう。
ただ、想像以上におもしろい作品だったと思う。少なくとも個人的には『天穂のサクナヒメ』より好きだし、なんなら『ヨルクラ』よりも面白かった。